十九話 追跡劇の果て
十九話です。
気がつくと、俺は布団で寝かされていた。
「良かったです、目が覚めたのですね。一葉さんはここ三日間程寝続けていたのですよ」
眼が覚めると隣には梨沙さんがいてくれた。
あれ、何で俺は寝ている。俺は何をしていた。そうだ、窃盗犯を追いかけていた。そこで体力が尽きそうになって、借りていたレビテートブーツを使ったんだよな。
「詳しい事は今から説明しますし、私もその時の状況をもっと詳しく知りたいので、ちょっとこちらに来て頂けますか」
「勿論、です」
梨沙さんにそう言われ、やって来たのは、九畳程の和室だった。そこには、さっきの副店長さんと副店長さんに良く似た女の人がいた。
「この度は、私の妹がご迷惑をおかけして申し訳ございません。あ、私はこの白妙魔法店の店長を務めている白妙 真弥です」
「先ほどは無茶なお願いをしてすいません。副店長で店長の妹の白妙 真優です」
「いえ、こちら、こそ。夢咲 一葉です。よろしく、お願い、します」
なんだか、いい人そうだな。性格とかは違うだろうが、梨沙さんと似たオーラ的な何かを感じる。もしかすると、これがさっき真優さんが言っていた雰囲気って物なのかな。
「あの、ごめんなさい。私は何があったのか詳しくまでは知らないので教えてくれませんか」
梨沙さんがそう言って、尋ねてきたので、俺はあの時の事を思いだし始める事にした。まず、泥棒を追いかけ、暫く走り続けたという所までは良いだろう。そこまでは知っているはずだ。そして……
俺は真優さんの提案に乗り、思い切り足に力を入れて、レビテートブーツを起動した。
……思い切り力を入れたのが悪かったのだろう。ブーツからロケットよろしく、物凄い勢いで青い炎が吹き出し、俺は空高々に飛び立った。
「うわあああ、俺、今空へとぶっ飛んでるうぅ」
俺は、日本語で大きく叫んだ。いや、叫ぶしかなかった。
すぐに上昇が止まったのは良いが、もう20m位は飛んでいる。始めて使ったのだ。当然、ここからちょうど良い力でブーツのジェットスラスターを吹かして飛ぶ事も出来ず、空中でバランスをとるのも危なっかしくなってきた。
そして、そのままもがいていると、足が上に回って、急降下を始めてしまった。このままじゃ死ぬと思い、必死に身体をよじり、体を斜めにすることは出来た。しかし、降下は続く。だが、俺はその最中に気付く事出来た。
奴だ、俺の降下ルートに泥棒がいる。もうこうなってしまったら死なばもろとも。俺だけが無駄死にするなんて絶対に嫌だ。俺と心中しろとは言わんが、せめてお前も罪を償え。俺はそう心に決め、奴に突撃することを決めた。
「このまま、止まらずに突っ込めえぇ」
最後にそう叫んで、俺は奴に加速しながら突貫した。
そこからの意識と記憶は俺にはない。
そうだ、俺の決死の特攻の結果はどうなったんだ。俺は今生きていたが、それでも捕まえられていないんじゃ何の意味もないただの自滅だ。
「泥棒、泥棒、は、どう、なったの」
「残念ながら……」
と梨沙さんがそう言った。
「そんなぁ、捕まえ、られ、なかった、の」
あの命がけの特攻をしてこれかよぉ。流石に悲しくなってきた。
「いえ、泥棒は捕まりました。勿論、商品も無事に戻ってきました。一葉さんの努力はきちんと結ばれています」
良かった、ちゃんと捕まったのか。
「ですが、その泥棒さんはあまりの勢いのついた一葉さんに突っ込まれて、様々な箇所を骨折したみたいです。」
まさか、それで罪に問われてしまうのか。俺はただ泥棒を捕まえただけなのに。そもそも事の発端を考えると泥棒が悪いじゃないか。
「俺、罪に、問われる、の」
「大丈夫です。それについては正当防衛で片付くので問題無いです。ですけれども、その際に街道を破壊してしまったみたいでして……」
あっ、これのパターンは不味い……
「その補修費を払え、と街の方から請求書が来てしまって……」
あぁ、これで楽しかった梨沙さんとの神社生活も終わりか。一文なしの俺に多額の借金の返済なんて出来るわけがない。しかも戸籍の無い俺なんて強制労働所送りだろうなぁ。
何だろう、悲しいね。それしか言葉が出てこないよ。




