十八話 始めての魔道具
十八話です。
「試作型……レビテート……ブーツ……」
でいいのかな、読み方は。まだ、読み書きは苦手だ。でも、唐突に外来語らしい物が出てきたな。でも、まぁいいか。
そこにあったのは、分厚く頑丈そうな、安全靴のような魔道具であった。でも、どんな道具なんだろう。レビテートと言う名前なのだから翔べたりするのだろうか。
「この魔道具が気になるんですか」
いきなり話しかけられて、その方向をみると、さっきの店員さんがいた。梨沙さんとの話は終わったのかな。でも、確かにこれをどう使うのかが聞きたかったのでちょうどいいのか……この服装でさえ無ければ。
「え、あ、はい」
高い声を無理矢理作って、彼女との対話を試みることにした。少し危険を侵しながらでも、聞いてみる価値は有りそうだと思うから。
「はい。この試作型レビテートブーツは、空を飛ぶ事が出来る道具なんです。と言いたいんですけれどもね、これで飛ぶことはほぼ不可能に近いんですよ」
読みはレビテートブーツで合ってたな。良かった、良かった。でも何だって、レビテートって浮くとか飛ぶとかそういう意味だぞ。名前負けどころか飛べないなんて詐欺も良いところだ。
「何、で、飛べない、のに、レビテート、なの」
店員さんは少し苦笑しながら答えてくれた。
「ああ、それはですね。設計図上ではきちんと飛べるはずだったんです。でも、その設計図が他の国の物でして、代用品と改造を繰り返していると……はい。名前にレビテートなんて普通使わない言葉が使われているのも、それが原因ですね。でも、それはともかく本当は飛べるんですよ、これ。でも、改造に改造を重ねた結果、これを使って飛ぶ為には、非常に高い操縦技術が必要な上に、あまりにも極端すぎる性能をしていて大変危険なんです。私も一度使って見ましたが、頭を打ってしまいまして、あはは……」
……やっぱりこれも謎魔道具の一種か。というかただの欠陥性品じゃないか。まともな魔道具だと思ったのになぁ。そんな俺の表情を見て、いや、皆そんな感じになるのだろうな。店員さんは直ぐに取り繕い、話し始めた。
「でも、これは飛べないですが、きちんと使い道はありますよ。浮遊移動、地面から少しだけ浮いて低空飛行は出来ます。その状態ならかなり加速して飛び回れるんですよ」
……それなら、名前はレビテートブーツではなくてホバーブーツでいいんじゃないかな。でもまぁ、そんなヤボったい突っ込みは置いておこう。
「でも取り扱い上の注意をしっかりしていれば大丈夫ですし、楽しいですよ。折角ですから一回使ってみると良いと思いますよ。所謂試着ですよ、試着」
……そのままそのノリで試着することになってしまった。流石に今の俺の語彙力とこの服装のせいで作った声では、断りきることなど出来るはずもなかった。
「それでは、この中で使ったら危ないですし、一回外に出て使ってみましょうか」
この店のセキリュティーかなりガバガバだなぁ。試着して外に出す何てそれはもうただ盗んで下さいって言っているのと同義だ。何だかんだでこの店員さんいい人だし、少し忠告しておいて上げよう。
「あの、これ、盗られる、から、危ない、よ」
「大丈夫ですよ。あまりこういった事は行っておりませんので。お客様はそういうような人には見えませんから。何故でしょうか、なんだかそういう雰囲気の方なんです。でも、ご忠告ありがとうございますね。」
「いえ、こちらこそ、ありがとう、ございます」
さて、それではいよいよ離陸といきましょう。緊張と期待感が混ざりあったこの感情。昔行った夢の……おっと。遊園地でアトラクション待ちをしている時の気分にそっくりだ。後、使い方は教えてくれるみたいなのでそこについては一安心だ。
「それでは、まず足の裏に力を入れて、飛び立つ様子を想像してください。すると……」
ここで説明が止まってしまった。何故ならば……
「副店長さん、一葉さん、泥棒です。泥棒がそっちに逃げていきましたよ。追早く捕まえてください」
と大声で梨沙さんが俺達に叫んできたからである。
俺は凄く驚かされてしまった。あんな大声で叫ぶ梨沙さんなんて始めてみた。
ん、ちょっと待てよ。えぇ、この店員さんだと思っていたこの人、副店長だったの。悪いけど、その年で副店長だったとは想像出来なかった。
そして数秒後、俺は我に返り、梨沙さんが指差した方を見ると一人の人が凄い勢いで走っているのが見えた。俺は副店長さんと共にそいつを追いかけて走り出した。
……一分程、街の街道を走り追いかけ続け、今もなお追い続けている。少しずつ追い付いてきた。そう思うと、すぐに方向転換されて、距離を離される。道が分からない餓えにいつ曲がるのかも分からない。流石に条件が不利過ぎる。俺も副店長さんもバテてきた。それでも根性で走り続けるが、少しづつ引き離されて行く。そして、次の曲がり角を曲がると、副店長さんが俺に話してきた。
「もうここしかありません。お願いします。それを使って奴を捕まえてください。起動方法はさっき言った通りです。その後については説明している暇がありません。申し訳ありませんがぶっちゃけ本番です。そこらあたりは根性でなんとかよろしくお願いします」
と言って俺の足、じゃなく靴を見てきた。
最後の大博打に精神論。面白い、やってやろうじゃないか。
俺は、足に思い切り力を入れ、レビテートブーツを起動した。




