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兵器と巫女と  作者: 沙希
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十六話 私服問題

十六話です。

 朝の小さな騒動も終わり、俺達は街へ行く準備を終えた。

 いや、実を言うと終わっていない。本当にこの服装どうするんだよ。マジで嫌だよ。巫女装束姿で街を歩くなんて。そんなことただの公開処刑だ。本当に惨めになってしまうぞ、俺。

 こういう困った状況を対処してくれそうな梨沙さんもこれについては全く頼れない。頼ればまた新しい巫女装束をくれるだろう。もう読めるよ、そのオチ。

 いや、巫女装束がある事で随分助かっているけれど。流石に真っ裸よりは数億倍良い。悔しいけれどこの服って何だか妙な位に着心地は良いし。

 それでも他の手段が何も思い浮かばない。……まるで手の打ちようがない。嫌な予感しかしないが、梨沙さんに相談するか。

「あの、服、無い、助けて」

「服ですか、わかりました。新しい綺麗な巫女装束が欲しいんですね」

 違う、そうじゃない。まるでそれが常識であるかのように、俺の想像通りの反応をしてくれた梨沙さん。だが、今回ばかりはここで引き下がる訳にはいかない。


「違う、違う。私服、欲しい、の」

「私服ですか。街で巫女装束は目立ちますもんね。私の私服で良いならありますよ。良ければどうぞ」

 ……これまた一枚斜め上を越えていった解答だ。流石に想定外過ぎる。何でこの流れで自分の私服を渡そうと思うんだろう。おかしいよね。絶対おかしいよね。梨沙さんの私服着るなんて、いくら何でも梨沙さんに悪いよ。そもそも似合うはずが無い。

「梨沙さん、悪い、よ。それに」

「あっ、こんなのも有りましたよ」

 遂に俺の台詞を途中で遮られた。そして梨沙さんの手にあったのは……何だこれ。

「これ、何」

「垂髪ですよ」

 垂髪。何で、何でこんなものまで有るんだよ。冗談抜きで全く訳が分からない。


 俺、さっきからずっと変なテンションで空回りしてしまっているな。でも、それもそのはずだ。何故ならば、本当に俺の想像の先へいとも容易く行ってしまうからだ。悪く言ってしまうと相当な電波ちゃんだと思う、彼女は。

 俺が言葉足らずなのも悪いとは思う。それでも、もう一度、いや何度だって断言する。俺に女装趣味は無い。

 いや、梨沙さんもそれは分かってくれていると思う。その根拠は、彼女から俺に嫌がらせして笑ってやろうという気を全然感じないからだ。恐らく心の底から俺のために尽くしてくれているのだろう。だけれども根本的におかしいよね。


「あの、どうかしましたか」

 あまりにも思考時間が長すぎたために梨沙さんが心配して声を掛けてきた。

「大丈夫。でも、それ、何で、持っている、の」

 話を戻してその垂髪について聞いてみることにした。普通そんな変わった物を持っている人なんて数えられる程しかいないと思う。

「これは私からのプレゼントです。本当は巫女装束と一緒に使う為の物ですが、他の服でもおかしいという訳では無いですよ。ですから、どうぞ気にせず使ってみてください。」

 一目みただけで喜んでくれるかなと言う期待が、凄く良く見える。それだけではなく何て言うかオーラらしき物まで見える。

 これは不味い。もうこれによって引くに引けなくなってしまった。これで二つに一つだ。彼女の喜ぶ顔を見て、巫女装束以外の女装をするか、彼女の期待を裏切り、汚れて汗臭い服を着るかだ。


 ……うん、もう知ってたよ。これよりも前に同じような条件で巫女装束を選んだ時点でもう知ってたよ。それどころか、もうお約束と化して来ている気がする。これは決定してから思ったんだが、他の人から男に見えなければ大丈夫かもしれない。女装なんて二日に一回はやっているんだ。もう恥ずかしくない。


 ……嘘だ。巫女装束に関してはもうただ単純に女装と思わなくなっているだけだの話だ。流石に巫女装束以外の服は着ること自体にも恥ずかしさがある。そう思わないとやってられないだけの話だ。

 着替えの方法が分からなかったので梨沙さんが手伝ってくれた。この年になってまで誰かに着替えを手伝って貰う。本当に顔から火が出そうだ。俺の髪の毛を無理矢理後ろに括り、そこに垂髪を着ける。おお、一気に髪が長くなった。頭を振ったらムチみたいに使えそうだなぁ。アホだろ、俺。駄目だ、恥ずかしさから現実逃避を始めている。


 いくら現実逃避をしようとも着替えは着々と進む。げ、化粧まで。もうどうでもいいや、好きにしてくれ。その流れのまま、あっという間に終わってしまった。そして梨沙さんが自信満々に鏡の前に連れていく。

 そこに写っていたのは……誰だ、お前。いや、本当にあんた誰だよ。

 写っていた姿は、何処からどう見てもただの少女だった。お、俺の原形が、原形が全く無い。恐れ入った。まさかここまで別人に仕立て上げるとは。どんな技術をしているんだ、全く。

 今着ている服は純白の綺麗なレースワンピースだった。どっかのお嬢様みたいでまた高そうな服だ。それに彼女の腕はかなり良く、美人にだって見えない事は無い位に上手く仕上げられている。今の俺ならば、梨沙さんと姉妹みたいに見えない事も無いかもしれない。髪の毛の長さって意外と重要なんだな。ここまで印象が変わるとは。いや、化粧のせいかな。どっちもか、どっちでもいいか。

 それでも、ここまでクオリティーの高い女装だったら俺がボロを出さない限り街で変に目立つ事もない可能性がマイクロ単位である。……問題は俺が堂々としていられるかだが。それに懸かっている。

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