十五話 朝起きて寝ぼけて
十五話です。
珍しく突然パチッと、目が覚めた。旅館の窓が広いからなのか明るい光がいつもより、部屋に射し込んで来ている。……もう朝が来ていたのか。あの後、疲れからなのだろう、結局すぐに眠ってしまっていた。その代わりと言ってはなんだが、よく眠っていたので、今日は元気だ。早速、梨沙さんと街を巡りながら、この世界について色々見てみよう。
……でも、まずはこの巫女装束をどうにかしないといけないな。隣で寝ている梨沙さんも巫女装束を着ながら寝ている。昨日そんなに疲れたという雰囲気を出して無かった彼女だが、実際はかなり疲れていたのだろう。普段は俺よりも早く起きる彼女がまだ寝ているなんて事は今まで無かった。
というか、彼女が寝顔を始めて見た気がする。いつも俺が起きるよりも先に起きているからなぁ。……寝顔かわいいな。おっと、失言を。
まあ、それはについてはとりあえず置いておいて、彼女を起こさなければならないか。神社の掃除も無いし、ゆっくり寝かせておいてあげたいと思うが起こさないと。懐中時計を見てみると、もう八時だ。そろそろ起こした方が良いだろう。
「朝、起きて」
そう言いながら、彼女の肩をポンポンと叩いてみた。
「朝ですかぁ、おはようございます、お姉ちゃん」
滅茶苦茶眠たそうな声で目をうっすらと開けながら、そう答えた梨沙さん。って言うかこれ、完全に寝ぼけているな。
一体どんな夢を見ていたんだろう。お姉ちゃんって流石におかしいよね。そもそもどうしてお姉ちゃんなんて言ったんだろ、普通に考えると何処をどう考えてもお兄ちゃんって呼ぶはずだろう。そんな事を思った直後、今着ている自分の服装を見てなんともいたたまれない気持ちになってきた。
それでも、まさか、お兄ちゃんよりも先にお姉ちゃんと言われる日が来ようとは一寸も思わなかった。それにしても、いつも朝早起きしてから神社の掃除とか祈祷、それに朝食作りまで、色々な事をしている梨沙さんも目覚めてからすぐは調子が乗らないのかな。そんなこと始めて知ったよ。
少しすると彼女も目が冴えてきて、調子が戻ったのかな。それでさっき言った言葉を思い出したのであろう。物凄くテンパった様子で顔を赤くし、凄い勢いで謝ってきた。
「ごめんなさい、ごめんなさい。私ちょっと寝惚けてて、あんなとんでもない失言を、えっと、気分を悪くさせてしまいましたよね、本当にごめんなさい」
少しばかり目が潤んでいる様に見える。何もそこまで謝らなくてもとも思うが、俺が逆の立場でも死ぬほど恥ずかしいな。先生をお母さんと呼んでしまうあれと似たような物だろう。とてもじゃないが正気でいられる事は不可能だ。
「大丈夫、気にしてない、よ。だから、気にしない、で」
俺がそう言う、と彼女はまだ少し恥ずかしそうにしながら声を震わせてでこう答えた。
「ごめんなさい、ありがとうございます」
「本当に、気にしなくて、いいよ」
今さっき言った通り、本当に嫌な気持ちなんて全くしない。むしろ梨沙さんみたいな妹もしくは姉がいればどれ程幸せな事か。ただ、この気持ちを彼女に直接伝えようとは思わないが。流石に言えないよ。こんなことを恥ずかしげもなく言える奴がいたらそれは奇人か変人かイタリア人だろう。それにもし仮に言ったとしてもドン引きされるのが関の山だろう。
最悪の場合は、ヤバい奴と見なされて神社から出て行かされるという可能性まで存在しているかもしれない。だから、こんな気持ちは俺の心の中に幽閉しておくのが一番の最適解だ。




