十三話 町へ下る
2017年、最終投稿です。十三話です。
巫女装束から着替えて、出発の準備を終えた梨沙さんが神社の鳥居前にやってきた。上に白い長袖のフリース、下に赤いスカートを穿いている。いつものと同じ紅白で決めており、そこはかとなくいつもと同じ巫女装束を思い出させる様な服装だ。それに服等が入っているのであろう鞄を持っている。
俺は梨沙さんの用意が終わるよりもとっくに着替えて、出発の準備も終えて何時でも出発出来る状態で梨沙さんを鳥居前で待っていた。
俺の準備があっという間に終わっていた。理由は簡単だ。俺の準備は巫女装束から私服に着替えただけで終わってしまうからだ。他に持って行くもの等何もない。強いて言えばいつも持ち歩いている懐中時計位だ。それ以外に持ち歩く様な物なんて持っていない。
他の荷物に関しては梨沙さんが任せて、と言ってくれたので、お言葉に甘える事にした。梨沙さんが多少の準備をしてくれたと言えどもここまでほぼすっぴんに近い状況で一日がかりで山を下る人なんていないだろう。梨沙さんに荷物を持とうかとも言ってみたのだが、魔力も使っているので大丈夫だと言われた。
たかだか鞄にまで魔法を使っているとなるとこの世界の魔法普及率は高そうだと思い返していた。まぁ魔法について多少は歩きながら梨沙さんに聞けるだろう。
神社に見送られながら、朝日が照らしている町への道を通り、俺達は歩き始めた。
神社から町へ歩きながら、早速俺は梨沙さんに魔法の事について詳しく聞いてみた。梨沙さんは快く質問に答えてくれた。色々教えてくれて頭がこんがらがってきたので今から頭の中でその説明を簡単にまとめてみようと思う。
まず、この世界における魔法とは、魔力を生成してそれを変換し、生み出されるエネルギーの形状を変えて使用する物である。魔力とは、基本誰でも持っている物で、動物や植物も持っているらしい。ただし、動物等は魔力はあるが魔法は使えないみたいだ。魔法を使う知能が無いと言った方が正しいか。人間の場合、基本練習さえしっかりと行えば誰でも使える様になる。……つまり今の俺は人間未満と言う訳か。悲しい。
ただ、そんなことを悔やんでいるよりも余程ありがたい事が分かった。それは練習さえすれば俺でも魔法が使えるという事だ。魔法を使える可能性があるというのは元の世界に戻れる可能性の内の一つだからだ。これで魔法特訓しても魔法が使えず、何も起こらないと言う線は消えた。
しかし魔法を普通に使っても大したエネルギーにはならない。例えば一般人は、火の魔法だとマッチ棒やライターの火レベルの火しか作り出す事が出来ない。この世界のトップクラスの人間でさえ、ガスバーナーレベルの火しか作り出せないのだ。
しかしこの魔法をまともに扱える様にするための方法がある。それが魔導具だ。魔導具には高性能な物から低性能な物まで色々ある。ついさっき俺がワープした時に使った様な道具の事だ。余談だが、あの魔導具はかなり高性能で貴重な物だったらしい。
この世界における道具の殆どが魔導具だ。武器や特殊な道具はともかく、鞄や服、靴も魔導具になっている物が多数だ。ちなみに、俺や梨沙さんが着ていた巫女装束はごく普通の服だった。
同じ靴の魔導具でも、靴が軽く感じる様にするものから運動アシスト付きの物等多種多様あるらしい。そこら辺は実際に町で見る事を楽しみにしておこう。
山下りは上りと比べるとスタミナの消耗は大分少なかった。その上最初に登った時と違い、歩きやすい道を使ったのは大きいが。そういう訳なので楽に町に着いた。……という訳にはいかなかった。確かに疲れは少なかった。だが下りるために踏む石が足に少しずつ負荷を架けていく。これが確実に足の裏や太ももを痛めていったのだ。スカートという山登りに全く適していない服装の中、平然と山を下りていく梨沙さんを見ると手慣れてるなぁと思う。小さい頃から下り続けて来たのだろう。それでも俺だって負けてはいられない。根性で歩き続けてふと気付く。日ももう沈みかけている時、何事も無く、俺達は念願の町へ着いた。
今年、この小説をお読みいただきありがとうございます。2018年もよろしくお願いいたします。




