一話 ここ、何処なの
はじめまして。
この作品は処女作となりますが、よろしければ楽しんで見ていって下さいませ。
翠緑の森の色、細流の川の音、心地の良い春のような暖かさ……まるで童話に出てきそうなほど綺麗な田舎。心が洗われるかのような汚れ無き空間だ。こんなにも美しきこの場所でただ一人俺は思う。ここ、何処なの。
俺はついさっきまで、家でゆっくりとお茶を飲もうとしていたはずなのに……それを裏付けるかの如く、俺がさっき飲もうと手にした緑茶がある。まだ淹れたてで温かく緑茶のいい香りがする。緑茶が温かく、いい香りがするというこの事実は、これが夢ではないということを俺に認識させるには十分だった。
何故なんだ。ふと寝てしまってこれが夢と仮定するなら何かとおかしい。何でついさっきまで持っていたお茶が夢でもあるのか、百歩譲って夢の中でお茶を持っていることはいいとして、どうしてこんなにもお茶を鮮明に感じられるのか……やっぱり夢ではないのか、これ。
そうなると俺は連れ去られたのか? それともドッキリなのか ……いやどっちも不可能だ、あり得ない。何処をどうすればお茶を持たせたまま、一瞬でこんな田舎に人を移動させられるんだ。俺は何故かここにいる。ただ、それだけは分かった。辛いなぁ……今の混乱している頭ではたったこれだけしか感じられなかった。辛いだけではすまないだということは分かっているのに。
少し時間が過ぎると、俺もさすがに落ち着いてきた。まずは、今分かることを整理してみることにした。俺は何故だか全く分からないが、突然この田舎にいた。ここが何処なのかは分からない。俺が持っているものは、緑茶と緑茶の入っている湯飲み、この間買った懐中時計、そして今来ている服だけだ。特に緑茶は唯一の貴重な水分である。たった少しの最高の緑茶。虎の子だ、大切にしよう。
……これで現状が壊滅的にまずいことが分かった。とりあえずここにいても何も始まらない。まずはあたりを探索してみるか。そう思い、俺はあたりの探索を開始した。
歩き出してもう三時間はたっただろうか、舗装されていない道を歩くのがどれだけ辛いのかが良く分かった。それ以前に舗装されていない道を靴下だけで歩くのが無茶だ。石とかを踏むと足が痛いし、足への負担が大きすぎる。昔の人は何て立派なんだろうと俺は心の底から感心した。
そして急斜面が上がれない。お茶をこぼさないようにクライミングとか常識的に考えて不可能である。
俺はどうしようもなくなり喉が渇いてきたのでとっておきのお茶を飲むことに決めた。お茶は最高である。人類と茶ノ木が作り出した至高の逸品である。少なくとも俺はそう考えている。この緑茶はすっかり冷めてしまっていたが、それでも旨い。これだけでも希望が湧き出てくる。さぁ、頑張って進もう。そして俺は急斜面を登り始めた。




