第1話「長い一日」
竹刀を持った妹に叩き起こされ、梁間雪彦の一日は幕を開けた。
せっかく早起きしたので、妹たちの朝食を準備してやり、学校へ向かう。
これは、梁間雪彦の何気ない高校生活のうちの1日を描いた物語である。
追記:「会話の謎」を解く際の説明文章を、一部追加いたしました。(2016年12月14日)
1
自室のベッドの上で目を覚ますと、枕元の時計は朝の6時を示していた。
朝のHRは8時35分から。通学にかかる時間の6分と支度のための3分を引いて逆算すれば、まあ8時20分くらいまでは寝ていられるだろう。なんなら1時間目の授業開始時刻の45分に間に合えばセーフである。そう思ってもう一度布団を被り直した瞬間、俺の意思とは関係なく自室のドアが勢いよく開いた。
ドアが壁に叩きつけられる音に驚き部屋の入口を見ると、中学指定のジャージを着た霞が目を光らせながら入ってきた。右手には竹刀。
次の瞬間には、頭の中で導くより早く生存本能に従った反射神経が働いていた。
今起きなければ竹刀でぶったたかれ、考え得る中で最悪の目覚めを迎えることになる。痛いのはイヤだ。
布団を蹴ってベッドから跳ね上がり、そのまま床に着地。気づけば、妹の前に背筋を伸ばして正座していた。
「おはよう。流石に二日連続で遅刻はいけないもんね」
右手に持った竹刀の刀身を左手にパシパシと軽く打ちつけながら、こちらをギロリと見ている。爽やかな朝に似つかわしい微笑をその顔に浮かべているが、残念ながら目が笑っていない。と言うより怖い。
「......おはようございます」
おかげさまで今日は遅刻せずに学校に行けそうだ。ありがたいことだ。
チュンチュン、とカーテンが閉まったままの窓の外から鳥のさえずりが聞こえた。
寝不足のために、眠気が内から無限に湧いてくる。この眠気が原油であったなら、働かずに一生寝て暮らしていけるのだろうか。石油王バンザイ!俺はこれから油で食っていくよ!
そんなくだらない妄想を欠伸に変換しながら、火にかけたフライパンの上で卵を割っては落とす。
黄身を中心に抱えた透明な白身が徐々に色づいていく。勝手に起きて勝手に朝食をとれ、というのが我が家のスタイルではあるのだが、せっかく早起きしているので妹たちの分も準備してやることにした。
梁間家の朝は早い。
いや訂正、梁間霞の朝は早い。
県大会の予選が控えているのもあるだろうが、剣道部の朝練に毎日参加するだけでは飽き足らず、朝練の前に庭で一人稽古に励むのが霞の日課となっている。夜に帰宅してもなお、竹刀の素振りを欠かさない。現にリビングの窓ガラス越しに黙々《もくもく》と竹刀を繰り返し振るう妹の姿が見て取れる。竹刀が振り下ろされる度に、長い黒髪が後頭部で激しく荒ぶる。
そんな霞とは対照的に、高校生の俺と小学生のみぞれは朝にトコトン弱い。
そのみぞれはまだ寝ているようだ。寝坊助同盟のよしみで、朝食の準備ができるまでは寝かせておいてやろう。昨晩の味噌汁が入った鍋をフライパンの横で火にかける。気づけば、窓の外に竹刀を振るう霞の姿がそこになかった。どうやらみぞれの快眠はここまでのようだ。南無。
食パンを切らしていたので、昨晩、寝る前に米が朝に炊き上がるように炊飯器を設定しておいた。残り物で作った野菜炒めに目玉焼きをのせ、焼いたベーコンを横に寝かせる。これを3皿分。
白米が盛られた茶碗と目玉焼きの皿の横に湯気が立つ味噌汁が入った椀を置いていく。
3人分の温かい朝食セットが揃ったところで、竹刀を片手にした霞に追われるようにして、パジャマ姿のみぞれが両目をこすりながら食卓に向かってきた。まるで囚人の後ろに付き添う看守である。
癖っ毛のミディアムヘアーが爆発し、寝癖で髪の毛があちこち跳ね上がっている。
「霞姉ぇに無理矢理起こされたあ......」と、みぞれは不機嫌さと欠伸を隠そうともしない。
「奇遇だな、俺もなんだ。もう少し寝られると思ってた」
「私が起こさないとあなたたち二人とも遅刻するでしょ」
俺たちの不満を霞が一刀両断する。
そして各々が席に着き、手を合わせる。
「いただきます」
2
あれやこれやと身支度をしていると8時を過ぎていた。霞は朝練のために7時前に出て行き、みぞれは迎えにきた同級生の女の子たちと共に小学校へ向かった。ぽつんと一人残された俺もまた登校の時刻を迎え、家の戸締りを一通り確認し、右のポケットから取り出した鍵で玄関を施錠する。
中学の頃から愛用しているマイ自転車を駆って、通学路を進んでいく。入学して2ヶ月が経ったこともあり、この景色もだんだんと目新しいものではなくなっていた。
俺が通う台泉高校までの所要時間は、家から自転車で10分とかからない。この近さこそ、俺がこの高校に入学した最大の理由でもある。高校が家に近ければ近いほど家を出る時間が遅くなる、それすなわち起床時間を遅めることと同義であり、睡眠時間の確保へと終結する。
要するに、早起きしたくなかったのだ。
車両一方通行の路地を抜け、コンビニが見えてきたところで右折する。傾斜は緩やかだが長い坂道をダラダラとした立ち漕ぎで越え、道路を横断して台泉高校の北門にたどり着いた。校舎の西側にある3階建ての駐輪場まで進み、1階の適当なスペースを見つけて愛車を停める。高校周辺の勾配の関係で、2階は西の正門、3階は北西の通用門を通って入ってくる生徒が利用しているのだ。
愛車にしばしの別れを告げ、籠から出したカバンを肩にかけ直して校舎の中に入る。
この高校は一足制を採用しているため、中と外の靴の履き替えという概念が存在しない。もちろん下駄箱もないので、校舎のどこからでも自由に出入りが可能であると同時に、自分の下駄箱を開けたら手紙が入っていた......という甘酸っぱい青春恋愛模様を展開することが不可能である。俺の下駄箱に手紙を忍ばせておきたい女子生徒がいたのなら、残念、この高校ではその色恋は果たせない。......いや、ラブレターなるものが下駄箱に入っていたとしても、多分俺は何かの冗談だと思うだろう。
いつも駐輪している場所が混んでいたために駐輪位置がだいぶ奥になったので、今日はそこから近い南校舎から入ってみる。重そうであるが今は開け放たれた扉を苦もなく通過し、南校舎の階段、通称"南階段"を上がっていく。
2階中央の広場を突っ切って、我がクラス1年8組の教室を目指す。端に追いやられたかのように2階の北東にある1年8組の教室であるが、なぜか他の普通教室よりも広い作りになっている。2年8組や3年8組の教室も同様に広いらしい。この話を聞いた時は8組って勝ち組だ、と思ったものだが、いざこうして登校してみると駐輪場から一番遠い教室であることを実感させられる。足腰が悲鳴をを上げるほどまだ老いてはいないが、毎日こうだと地味に辛い。
開け放たれた教室のドアをくぐり、自分の席にまっすぐ向かう。既にクラスの半分ほどの級友たちが登校しているようで、教室のあちらこちらで談笑の輪が生まれている。未だ席替えを行っていないので席順は入学当初のまま苗字の五十音順であり、自分の席すなわち出席番号が近い者同士でクラス内の交友関係構築が進んでいるようだ。俺の席は廊下側から5列目、窓側からは2列目の一番後ろ。将棋で例えるならおおよそ金か銀の位置であろうか。なるほど、そう考えれば将に使われるというのもなんだか性に合っている気がする。......つまらんシャレはやめなしゃれ。
カバンを机の上にドッと置いて着席し、カバンの中から教科書をガッと掴んでは机の中に突っ込んでいく。学習道具を全て吐き出したカバンを机の横にかけようとしたところで、俺の右隣の席に生徒が着席した。黒みがかった栗色の髪を肩の辺りまで伸ばし、妙に似合った制服姿が様になっている。
束石竜子が着席しながら声をかけてきた。
「おはよう。どうしたの雪彦、今日は早いのね」
「俺もこんな早く学校に来るとは思わなかった」
「私があなたに登校時間で負けるとはね......明日は雪か雷かしら」
「雪の予報は出ていなかったが、朝から雨だそうだ。雷の方は可能性があるかもな」
眉根を揉むジェスチャーと共に、竜子は軽く悔しがってみせた。
本人は早いと評してはいるが、朝のHR開始時刻まで残り10分といったところだ。既に登校してきた級友たちを見る限り、俺が特別早い時間に登校したわけではない。
つまるところこいつは、俺が完全に遅刻ないしはギリギリの登校になるものだと思っていたらしい。なんとも失敬な話である。
束石竜子。俺の家のすぐ近所にある中華料理屋「鵬竜」の娘である。まさか小中高と同じ学校に通うことになろとは思ってもみなかった、というのが入学式の時の本音だ。
義務教育期間の半分でクラスが一緒であったことを除いても、彼女の中華料理屋に家族で足を運んでいたこともあって、不思議と縁は深いのかもしれない。昔から顔立ちは整っておりその身に纏う雰囲気と丁寧な所作が人に清楚な印象を与えるが、その正体はただの『生き物大好きクレイジージャーニー』である。
小学生の時も、彼女に好意を抱いた男子生徒が、ナメクジを腕に這わせて遊んでいる彼女を見てドン引きした、と言うような類の話がその手の噂にあまり明るくない俺の耳にまで届くことが珍しくなかった。中学の時は自分の机の中で蜘蛛を瓶に入れて飼育していた。現に花の女子高生となった今も、生物部に所属して同士たちいや同類たちと己の好奇心を日々満たしているようである。
「まあ、霞の奴に叩き起こされたんだけどな。私がいるからには二日連続で遅刻はさせない、って」
「フフッ、真面目な霞ちゃんらしいわね」
「出来のいい妹を持つと、出来の悪い兄は大変だよ」
と肩をすくめてみせたところで、出席簿を手にした担任教師が教室に入ってきた。教室のあちこちに散っていた生徒が磁石が近づいた砂鉄のように各自の席に戻る。座り手がいない空白の席があるところを見ると、遅刻もしくは欠席の生徒が何人もいるらしい。遅刻するなどけしからんことだ。俺の目の前の席も空いていた。
担任が生徒の苗字を次々と呼び、点呼をとっていく。
「......梁間!」
「......はい」
若干声が裏返ってしまっただろうか。今日はちゃんと朝から来てます。偉いでしょう。
3
チャイムと同時に4時間目の現代文の授業が終わり、同時に昼休みの時間を迎えた。
教師の板書をシャーペンと赤ペンでそのまま写しただけの面白みのないノートとまだ綺麗な教科書を、手早く机の中に吸い込ませる。
気づくと竜子はすでにどこかに出かけたようで、教室内に姿は見当たらない。授業が終わったばかりだというのに忙しないことだ。昼食時であるしおそらく食堂か、もしくは別のクラスの友人とお弁当、といったところだろうか。
いつもなら自分がこの時間に登校してきてもおかしくないよなあなどと思いつつ、弁当を持たない俺もまた昼食のために席を立とうとしたところで前から声がかかる。
「やあ梁間、お昼ご飯にしようじゃないか」
そう言うと、俺の目の前の席の持ち主である軒山壮一が椅子の背もたれに腹を当てるようにして座り直し、俺の机の上でコンビニの袋をひっくり返した。重力に逆らうことなく、半透明のビニール袋の中から菓子パンがボトボトと落ちてくる。
「お前、遅刻してきた割には昼飯きっちり用意してるんだな」
俺が軽く毒づくと、
「いやあ、健康のためには三食きっちり食べないとね」
という台詞と共にニッとはにかみが返ってきた。この物言いから察するに、寝坊した上で朝食まできっちり取ってきたらしい。なんたる傍若無人っぷりであろうか。あまり人のことは言えないが。
「悪い、俺は買いに行かないと飯がないんだ。先に食っててくれ」
あいにく今朝は弁当を作る気が起きなかったので、今日は昼飯を調達しなければならない。
「僕のパンでよければ分けてあげるよ。......このメロンパンは渡さないけど」
「他のならくれるってのか」
「大金を積まれれば僕もやぶさかでないね」
ありがたい申し出ではあるが、この細身の優男から食糧を取り上げるというのはなんとなく後ろめたさがあっていけない。それに、空腹の男子高校生がパンの一つや二つで満足できるわけも無し。
「いや、遠慮しとくよ。ちょっとコンビニに行ってくるわ」
そう言って今度こそ席を立つ。すると軒山も立ち上がった。
「飲み物がないから僕も行こうかな。一人でパンを貪るのも味気ないし。ボッチは嫌だし」
最後の理由が悲しい。まあ、部活仲間と連れ立つのも、悪くはない。
軒山壮一と出会うきっかけは「教室の席が前後である」という、至極シンプルなものであった。
身体の線が細く短髪に眼鏡、そしてわずかに俺より低い身長をもつ軒山の第一印象は「理科系の男」であった。コイルやらビリリダマを繰り出してきそうだ。
俺はあまり人と関わるのが得意な方ではないが、お互いに活発な性質を持ち合わせていないので一緒にいて気疲れしない。へらへらと軽口や冗談、皮肉ばかり言うやつだが、見た目通り理系の知識が深かったり、時々鋭い意見を口にしたりするので中々侮れない男だ。
また俺を「化学部」に導いた張本人でもある。全生徒に部活動所属が義務付けられているこの台泉高校でにおいてそこそこに楽な部活を探して途方に暮れていた俺だったが、こいつの甘言に乗せられて化学部に入部することになった。
「放課後18時きっかりに下校できて、なおかつ休日の活動がないのは化学部だけだよ」という売り文句に違わず、今のところ毎日定時下校を果たせているので別に不満はない。
「朝から学校にいると一日が長く感じられる」
ポツリと独り言のように出た言葉だったが、軒山は聞き逃さなかった。
「確かに、梁間が朝からいるなんて珍しいからね。こりゃ午後は雨かな」
どいつもこいつも、人が朝から登校しただけでそんなに未来の天気が心配かね。
珍しい、と言われ自身のここまで登校模様を精査してみる。入学以来、遅刻率はおよそ3割強といったところだろう。首位打者を十分狙える位置だ。シーズンMVPも視野に入れる必要があるかもしれない。
「お前も同じくらい遅刻してるだろう。でもまあ、雨が降るならその前に帰りたいな」
と答えてやる。朝のワイドショーによれば、今日は一日晴れの予報だった。
コンビニに向かう道すがら、ポケットから財布を取り出し中身を確認すると、5千円札がまだ1枚残っていた。
今週の我が家の食費も含まれているので、あまり贅沢なランチはできない。そう思い、袋に何本も入っているスティックパンとその大きさの割には価格が控えめな菓子パンを購入した。
えっちらほっちらと教室に戻ってきた時点で、昼休みは残り30分になっていた。パンを食みながら、軒山とたわいもない議論を交わす。先週の小テストの話に始まり、教鞭を執る教師の癖に話題が変わり、最終的には教師のモノマネ合戦に落ち着いた。昼休み終了のチャイムと同時に数学の千葉先生が突然教室に入ってきた時は流石にヒヤッとした。
4
激しい睡魔に襲われながらも5時間目の数学と6時間目の体育をなんとか乗り切り、トロトロと教室の清掃を終えてアフタースクール、つまり放課後になった。
軒山の「実験室行こう」といういつもの合図で部活動に赴くのが習慣になってきた。
俺たちの間で交わされる「実験室」とは「化学実験室」、つまり化学部の活動場所である。
南校舎1階の南東に位置する化学実験室は授業以外では誰も寄り付くことのない、台泉高校の果てにある教室である。南校舎1階には他にも、生物実験室、地学実験室、物理実験室、コンピューター室といった特別教室が集まっているが、放課後の廊下は人の気配がまるでない薄暗い空間が続いている。
荷物をまとめたカバンを肩にかけ教室を出ようとしたところで、紫のリュックを背負った竜子に声をかけられた。
「部活行くの?私も途中まで一緒に行く」
竜子の部活は生物部。南校舎の1階、生物実験室で活動を行っている。化学実験室から見ると、なぜか化学部が所有する畑を挟んで向こう側、北側に生物実験室が見える。向かう方向が同じなので特に断る理由もなく、3人で連れ立って歩く。自然と、先を歩く二人の後ろを俺がついて行くような形になる。
「軒山くん、化学部って普段どんな活動してるの?」
「今のところ、部長の研究のお手伝いかな。自分の研究やら実験やらを始められるのはもう少し経験を積んでからだね。束石さんの方こそ、生物部は普段なにしてるんだい?」
「うーん......生物の授業をまだ履修してない1年生には専門的な知識がないから、最近は生物の勉強をしたり、先輩の研究の手伝いをしてるかな。今日は先輩たちが数学の追試でいないから、1年生で解剖の練習をする予定があるの。そうだ、化学部は今日の活動どうするの?」
「多分今日も今日とて部長のお手伝い」
ふーんそうなんだ、と竜子が相槌を打つ。
理系部活トークに花が咲いていく。理系ダメ人間の俺が会話に混じるとその花を端から摘んでしまいかねないので、黙っている。
「雪彦はちゃんと働いてる?」
「梁間なんかは楽するためにうちの部に入ってるから、特にこれといって何か活動している感じはしないな。きっと頭の中で哲学でもしてるんじゃないかな」
ただ実験室に現れるだけの幽霊部員だと思われるのも心外だ。ここは訂正が必要だろう。
「何もしてないわけじゃない、何をしていいか分からないんだ。お前と部長の科学トークにはさっぱりついていけない」
実際、化学の知識が皆無である俺にはあまりできることがない。部長の実験を思考停止で機械的に手伝ったり、器具の片付けや洗浄をしたりとその程度だ。僅かばかりの好奇心を働かせて「この実験って何を調べているんですか?」などと尋ねたが最後、部長の科学呪文を時間の許す限り浴びせられてしまう。
部長と軒山の会話を聞いていると、聞きなれない言葉が飛び交うのでまるで異国にいるような心持ちになるのも無理からぬ話である。
俺の弁明が届いたのか届かなかったのか、今度は俺の話題にすり替わる。
「ねえ、軒山くん。部活の時の雪彦ってどんな感じなのかしら」
「どんな感じ......教室にいる時とあまり変わらないかな。眠そうな顔でずっとボーッとしてる」
「それってあれよね、虫とか手づかみで食べそうな感じの顔じゃない?」
「ハハハッ、確かにそんな顔してるかも」
「食虫文化なぞ俺は知らん」
俺は部活中そんな顔をしていたのか......少しは顔の筋肉を使ってあげたほうがいいかもしれない。
一瞬、振り返った竜子と目が合った。そのまま竜子が軒山に優しい口調で続ける。
「でもやる時はやる子だから......仲良くしてあげてね?」
過保護だ。お前は俺のおかんか。
階段を降りたところで竜子と別れ、軒山と二人で静かな廊下を進む。今朝入ってきた南校舎の入り口は堅く閉ざされており、また薄暗さも相まってこのフロアをより重苦しい雰囲気で飾り立てていた。廊下の突き当たりを左折し、化学講義室を通り過ぎる。ようやく目的地である化学実験室にたどり着いた。
「こんにちわー」と挨拶して実験室に入る軒山に続き、俺も「こんにちわーっす」と入っていく。......実際の発音は「んちゃあっす」に近い。
実験室を見渡す。向かって左手の窓際には電子天秤が相変わらずズラっと並び、右手には何も乗っていない大きな実験室用教卓が存在感を放っている。そして実験室の床面積の大部分を占めるのは6つの大きな実験机。実験室の奥の壁は全て引き出しになっているが、このほとんどは化学部員が収納として使用しているものだ。左手北側の窓も右手南側の窓も閉め切っており、もう一つの出入口である校庭に続く南側のドアも閉まっていた。
昨日帰る際に見た光景とあまりにも相違がなく、昨日から誰もこの実験室に立ち入ってはいないのではと思ったが、よくよく見ればすでに部員が一人来ていた。実験机のうちの一つ、程よく日が差し込む南側の机をひとり占領し、倉橋蘭が組んだ腕を枕にして机に頭をうち伏し静かな寝息を立てている。
倉橋も俺たちと同じ1年生だが、小柄な体格でツインテールを揺らしている様が彼女を幼く見せている。ガッツポーズで「自分にできることならなんでもやるっす!」と活動に積極的な姿勢を見せるが、そのやる気はどこか空回りすることが多く彼女が割ったガラス器具の数はもはや数え切れない。壊した器具の片付けをしている彼女を見ながら、部員が足りず廃部の可能性が浮上していたらしい化学部にとってどんな形であれ仲間が一人でも増えるのはとても喜ばしいことだ、と部長が笑顔で話していたことを思い出す。
倉橋の所属する1年7組とは体育の授業が一緒である。6時間目の体育で完全燃焼した結果が、この幸せそうな寝顔だろうと勝手に推測した。
そして部長がまだ来てないことに気づく。今日は俺も軒山も教室の掃除が割り当てられていたため、実験室に来る時刻がいつもよりかは遅くなった。時刻はすでに16時。部長が俺たちよりも遅くなったことが今までなかったので、当然疑問を抱く。
「部長はまだ来てないのか」
「姿は見当たらないけど......荷物はあるみたいだよ」
そう言いながら、倉橋の横を指差す。見れば、倉橋の白いトートバッグが部長の赤いリュックサックに寄りかかるようにして机の上に置いてあった。
「この様子ならすぐ戻って来るだろう。とりあえず待ってみるか」
特に何も指示がないので、1年坊だけでは部長が戻ってくるまで今日の部活が始められない。
俺の提案を受け入れた軒山と共に中央前列にある実験机に陣取り、適当な椅子にかける。今日の数学の授業で課題が出ていたので、荷物からノートを取り出し二人とも無言でそれに取り組んだ。なんとなく頭を上げると、窓の向こうに畑を挟んで生物実験室の中の様子が見えた。白衣を着た数名の女子生徒たちが一つの実験机を囲んで楽しそうに笑っている。キャッキャと上げる声がこちらまで聞こえてきた気がした。
それから20分が経過したが、部長は戻ってこなかった。
5
「いくらなんでも、遅くない?」
先に切り出したのは軒山だった。
「お手洗いか何かだと思ったけど、どうやら違うかもしれない」
俺もシャーペンを持つ手を一旦置く。
顎に手を当てながら軒山が続ける。
「部長会議があるなんて話も聞いてないし、成績のいい部長が梁間みたいに小テストに引っかかって追試を受けているとも考えづらい。これはもう、失踪だよ、失踪」
そういえば、竜子がさっきそんな話をしていた。「生物部の先輩が小テストの追試を受けている」と。
しかし軒山が言うように、理系パーフェクトヒューマンの部長が数学なんぞで追試を受けているとは考えにくい。
だが、失踪届を出すにはいささか早すぎる気がする。
「部長が行きそうなところは他にないか」
俺の問いに、軒山は指を折りながら答えた。
「パッと思いつく候補としては、お手洗い、部長の2年8組教室、それから部室棟、図書館、コンビニ......くらいかな。でも、部長の性格からして、何も言わずに數十分も実験室を離れるとは思えないよ」
確かに部長は実験室を離れる時、いつも一言もしくは書き置きを残していた。以前「部長会議に行ってきます」という黒板のメッセージの後に、ハートマークよろしくベンゼン環が書かれていたことを思い出す。
もう少し女子高生らしさが現れる可愛い顔文字やら絵文字やらがあるだろうに、なぜベンゼン環......
まあ、部長らしいっちゃ部長らしいかと思ったものだ。
「書き置きみたいなものもないし......ほんと、どこ行っちゃったんだろう」
「書き置きがないなら、出て行くことを伝えて行ったんじゃないか......これに」
後ろで未だ昼寝に耽っている、倉橋蘭を俺は親指で示した。
うち伏して寝ていた倉橋を名を呼びながら何度も何度も揺さぶると、眠り姫はようやく目を覚ました。寝ている人間を起こすってのはこんなにも大変だったのか......心の中で我が妹の苦労を偲ぶ。
「ん......梁間くんに軒山くん......来てたんっすか」
起きてるのか起きてないのか分からないような半開きの眼で独り言のようにそう呟くと、自身の口からこぼれている唾液を慌てて袖で拭き取り恥ずかしそうに続けた。
「......寝てないっすよ!」
「いや寝てただろ」
「寝てたね。気持ちよさそーに」
腕の下に敷かれていたツインテールをときながら倉橋はきょろきょろとあたりを見回す。
「あれ?部長は?まだ戻ってきてないんすか?」
倉橋の口ぶりから察するに、やはり部長は一言残していったらしい。
「そうなんだ。少なくとも僕たちがここに来てから、部長は現れていない。倉橋さんは何か知らない?」
「そうっすね.......確か『ちょっと見てくるから待ってて』って言い残して出て行ったっす」
「『ちょっと見てくる』?どこに行くって言ってたか覚えてない?」
「ごめんなさい、部長が来る前から寝てて......いや寝てないっす。部長がなーんか言ってたと思うんすけど、その後すぐにまた寝ちゃって......思い出せないっす......いや寝てないっすけど」
『ちょっと見てくるから待ってて』か......少し考えて、今度は俺が尋ねる。
「部長が出て行ったの、何時頃だったか覚えてるか?」
「あ、それは覚えてるっす。16時になるほんの前っす。部長が出て行くときあの時計を見たんで」
と、俺たちが入ってきたドアの上を指差した。
なるほど、少し絞れた気がする。
軒山が両手を動かしながら、一つ一つ確認するように言う。
「えーっと、整理すると......倉橋さんは部長がここにくる前から寝ていた。16時前に部長が一度 倉橋さんを起こして行き先を告げて出て行くが、倉橋さんは覚えていない。ただし、『ちょっと見てくるから待ってて』とは言っていた、と。その後、16時に僕たちがここに到着。そして現在に至るまで、部長の消息は分かっていない......」
倉橋がウンウン頷きながら軒山の話を真剣に聞いている。寝てないと主張するのを忘れているぞ、倉橋よ。
「さっきから失踪だの消息だの不穏な言葉を使ってはいるけども、部長が『待ってて』と言った以上、ここに戻ってくる気でいるのは間違いない」
と、軒山は最後に付け足した。
「はーあ、部長ったら、ど〜こに行っちゃったんすかね〜?もしかして、今日はこのまま部活休みっすか?」
両手を床の方にダランと伸ばし、机の上に頰を付けながら倉橋がボヤく。
そこで気づいた。このまま部長が戻ってこなければ、今日の部活は休み。つまり帰れる!
早く帰宅できることを一瞬期待したが、視界の端にある部長の荷物がその期待を無情にも打ち砕く。俺たち全員で帰ったとして、実験室を施錠し部長の荷物だけを実験室前の廊下に投げておくのは後輩として不義理なことこの上ない。
早く帰りたい衝動をなんとか飲み込み、俺は口を開いた。
「部長はおそらく、南校舎1階のどこかに行った。今現在もそこにいるかどうかは分からないが」
軒山と倉橋が同時にこちらを見る。注目されるのはあまり得意ではない。
「どうして分かるんすか?」
早口にならないように気をつけながら、言葉を紡ぐ。
「まず、部長は実験室にある二つの出入口のうち、前の方のドア、俺たちが入ってきた入り口から出て行った。こちらのドアが開いていてかつ後ろのドアの鍵が閉まっていることと、部長と話していた倉橋が自然に時計を見上げたことから予想できる」
倉橋が頭を縦に振るのを確認し、続ける。
「しかもそれは、俺と軒山がここに来るほんの数分前のことだ。俺たちが南階段を下って化学実験室に到着するまでに、部長とはすれ違わなかった。この実験室から南階段までのルートは、外から回ることを除けば、俺たちが通ってきた1本しかない。よって、部長はこの南校舎1階のどこかの教室に潜んでいる可能性が高いと考えられる」
俺たちが階段を下るより早く部長が南階段3階に移動していた可能性、もしくは階段を使わずに俺が今朝入った南校舎出入口から外に出た可能性も考えられなくはない。
しかし、前者はわずか数分の差でそのようなすれ違いが生まれたとは考えにくいし、後者はあの重そうな扉を一人で閉めきるには時間がかかってしまい、俺たちに発見されないのは不可能だろうという推量から否定したに過ぎない。
他にも、部長が瞬間移動能力者として覚醒した、部長が透明マントをダンブルドアから贈られていた、などの事象もあるかもしれないが、さすがにそこまでの特例は面倒見きれない。
「それじゃあ、この階の教室を部長がいるかどうか見てまわれば発見できそうだね。行こう!」
「自分もオトモするっす!」
軒山と倉橋が勢いよく立ち上がる。その勢いに俺は一瞬驚いた。なんて活力のある連中なんだ......
「それはそうなんだが、一ヶ所、思い当たる節がある。多分あそこじゃないか?と言うか、あれじゃないか?」
と、俺は北側の窓を指さす。その先には生物実験室。
常に白衣を着ているので分かりづらいが、生物部員に混じって、見慣れた小さい人影がそこにはあった。
小柄な倉橋よりも低い身長、両肩のあたりで留めておさげにした髪、そして赤いふちの眼鏡。
「ぶ......ぶちょぉぉぉぉぉぉぉ!?」
指をさして驚く軒山と倉橋に気づき、化学部部長、日名川灯が笑いながらこちらに向かって手を振り、また手招きをしていた。
6
俺たち3人は部長に招かれるまま化学実験室を出て、生物実験室に向かっていた。
「竜子の話を聞いてた時、少し疑問に思ったんだ。まだ入りたてで専門知識のない1年生が、追試を受ける先輩を欠いて解剖の練習をするって言ってただろ」
「確かに言ってた。てっきり、みんなであーでもないこーでもないって言いながら、手探りしながらやるもんだと思ってた」
軒山がこめかみを人差し指で押さえながら答えた。俺も続ける。
「その可能性も十分にあったが、もう一つ、竜子の質問の仕方に違和感があった。あの時たしか、最初に『普段の化学部の活動』について聞いてきた。そこでお前は」
「今のところ部長の手伝いをしているって答えた」
「そうだ。しかしその後、今度は『今日の化学部の活動』について尋ねてきた」
「なんで同じようなこと二回も聞いてくるのかな、って思ってた。なるほどね、得心がいったよ」
俺たち二人の会話になんとかついていこうと腕組みしながら聞いていた倉橋だったが、「よくわからないっす!」と両手を上げて降参した。
倉橋に分かるように、軒山が説明を引き継いだ。
「これは僕と、生物部員の束石さんの会話さ。お互いの部活動について尋ねあってた。その中で束石さんは僕に『普段の化学部の活動』を尋ねてきた。僕は、『今は部長の研究の手伝いをしている』と答えた。
この後、束石さんは今日の生物部の活動で、解剖の練習をすることを明かした。しかし生物部の先輩たちは追試真っ最中につき、練習に立ち会えないらしい。すると突然、束石さんは『今日の化学部の活動』について尋ねてきた。どうだい、何か気づかないかい?」
お前もさっき気づいたばかりだろう、と突っ込みたくなったが、別に先に気づいたことを俺自身が誇っているわけでもないので、黙って倉橋の答えを待つ。
「うーん......あっ、なるほど!その束石さんはうちの部長に解剖の練習に付き合ってもらえるようにお願いしてたんすね!だから今日の化学部の活動に部長がいないことを知っていて、『今日の化学部の活動』について尋ねた!」
竜子は、現在の化学部の活動がが部長の一存によって成り立っていることを、軒山への最初の質問で把握した。だから彼女はもう一度尋ねたのだ、『部長がいない今日の活動はどうするのか』、と。
「おそらくそうだろう。もしくは、今日の化学部の活動を再確認した上でうちの部長をこれから引き抜こうとしていたのかもしれないが、階段のところで竜子と別れてから時間がほとんどなかった点から見て、前もって依頼してあったんだろう」
推し量るに、そのお願いは今日の昼休みあたりに行われたのではなかろうか。昼休みになるとすぐに教室を飛び出した竜子の行動から考えて、なんとなくそんな気がする。
ドアをノックし、生物実験室の中に足を踏み入れる。生物の授業は2年生からであるし他の授業で使うこともないので、この空間にいま初めて入った。壁面や棚にはガラスの入れ物の中でネズミやらカエルやらが液体に浸かった標本が所狭しと並んでいる。化学実験室とはまた別の、独特な匂いがした。
「やあやあ来たね。ごめんねー、戻るのが遅くなった」
生物部員の輪の中から、白衣を着た化学部部長、日名川灯先輩が出てくる。その手には、白っぽいニトリル手袋がはめられている。
「生物部の1年生がね、『カエルの解剖をするから教えてください』って昼休みに頼みにきてさ。聞けば生物部の2年生は全員もれなく数学の追試でいない、って言うから。それなら仕方ない、私に任せなさいなー!って感じでさ」
それなら、解剖の練習をする日にちをずらせばよかったのでは......と今更ながら思って、輪の中の一人、束石竜子をチラリと見る。俺の恨めしげな視線に気づいて目が合うと、ペロッと舌を出して軽く握った拳で自らの頭を叩く仕草を見せてきた。
「生物部に教えを授けるなんて、やっぱり部長はすごいですねえ」
と軒山が心底感心した様子で言う。
ふふん、と鳴らして日名川部長は小さい体でふんぞり返った。
それにしても、日名川部長は本当に凄い、と心から思う。
そりゃあ、科学トークに付き合わされる時は耳を塞ぎたくもなるけれど、俺と年が1つしか変わらない、いってみればただの高校生があんなにも語ることができるのかと、感服すると同時に尊敬の念を抱く。一つのことに熱中し、もっと極めよう、もっと知ろうとすること。そんな思いを抱けるのはそれだけで一つの才能である気がする。
科学について語る時のあの目の輝きは、一生かかっても俺には出せないだろうと常々思う。
こんな風に、自分が持てる情熱の全てを注ぎ込めるような、夢中になれるものが、この先、俺の人生に現れるのだろうか。
わからない。自分が何かに熱中するイメージというものが、全く湧かない。自らに、この問いを改めて投げかける。
「ーーーお前は、何がしたい?何になりたい?」
わからない。したいことなんて、夢なんて、ない。才能も何もないのだ。
梁間雪彦は、これから一体、何者になるのだろう。
答えはまだ出ないし出せない。きっと出そうとすることもないだろう。
「部長ぉ、心配したんすよぉ......」
と倉橋が部長に抱きつく。
「蘭ちゃんには言っておいたと思うけどなあ......」
部長は倉橋の頭をよしよしと撫でながら呟いた。とにかく、一件落着。めでたしめでたし。部長も見つかったし、時間ももうアレだし、あとは帰るだけだ。
「じゃあそろそろ......」と右手を上げて踵を返したところで、左の手首を部長にガッと掴まれる。小柄な体に似合わない、強い力で掴まれる。
「まあまあ待て待て、せっかく来たんだし、ここで少し見学させてもらいんしゃい。解剖なんて、化学の分野じゃなかなか扱わないからにぇ〜」
強引に引っ張られる。それまで作業していた机の前に連れて行かれた。
そして見た。見せられた。目に入った。ついに見てしまった。
目の前で、カエルが仰向けになって寝ている。内臓やら筋肉やらピンク色の中身をあらわにして寝ている。腹のあたりから四方にペラっとめくられた白い皮がピンで板に停められ、その様子はまるで磔にされているかのようだった。
「3人とも、よく見ておきんしゃい。これがカエルの解剖じゃ。この足の筋肉のつき方がな......」
思わず目を覆った。倉橋の悲鳴が聞こえる。
そのあとも部長の説明は続いたが、よく覚えていない。
「おーい、兄さーん。大丈夫ー?」
いつ帰宅したのだろう、気づくと俺は自宅のリビングに仰向けで横たわっていた。目の前には霞の顔がある。
「雪兄ぃ、学校から帰って来てからずっとこれなのよ。学校でなんかあったんじゃない?」
視界にみぞれの姿も映る。どれくらいの時間、俺はこうしていたんだろう。慌てて時計を見るとすでに20時を回っていた。
「夕飯の準備を......」と言いかけたところで、口が止まる。意識が途切れる直前の光景を思い出す。
自分がこれから料理する姿をイメージしようとすると、包丁を握ったところでどうしてもあのカエルの開きが脳裏をちらつく。フラッシュバックする。気持ち食欲も失せた。
なんだか今日はもう、料理できる気がしない。無理だ。
突然固まった兄を心配そうな表情で見守る妹たちに向けて、俺は口をパクパクさせて宣言した。
「訳あって今日は料理できない。ので、夕飯は『鵬竜』で食べます。以上。各自、外出の準備をせよ」
早起きから始まり、今日は長い一日だった。さすがに疲れた。
妹たちよ、悪いが、今日の夕飯は休ませてくれ。
2016年12月12日 第1話を投稿しました。
2017年12月9日 段替え、ルビ振りなど、読みやすくなるように改変しました。
まずはここまで読んでくださったことにお礼を申し上げます。ありがとうございます。
第1話、投稿しました!ってか投稿できました!プロローグで終わらなくて本当に良かった。
自分で読んでても、ちょっと長いかな、と思う第1話になってしまいました。二つに切って2話分にしても良かったんですが、それだと事件になる前で切れてしまいそうでしたので、この形になりました。
今回は雪彦の高校生活の一日を場面ごとに切り取って、若干ミステリー風に仕上げてみたつもりです。
ミステリーとしての質は低いと自覚してはおりますが、それでもストーリーに絡めることができたので満足しています。それで満足するしかないじゃないか...
次回は、梁間家サイドのお話を書く予定です。次回更新はまたしても未定ですが、次も読んでいただけたら非常に嬉しいです。作品の感想をお待ちしております。
ではまた次回。アディオス!
(2016年12月12日)