堕落したユートピアで歌う
禁忌、禁断、赤い果実。
アダムとイブはその実を手にして堕落した。
君がアダムで私がイブだとするのなら、ほの赤い果実は『愛』なのでしょう。
触れ合う事に交わる事に全てが崩れていくのです。
「『愛』しています」
絡み合う指と指。
離さないで離れないで、そういう思いを込めてギュッと握る。
決して認められることない『愛』の形。
それでもいい。
どんな否定も罪も罰も甘んじて受け入れよう。
君と私がいればそこは楽園。
堕ちて落ちてオチて……『愛』を歌う。
「好きっ……大好き」
唇を這わせて、小さな水音が鼓膜を震わす。
私の想いに答えるように、君の想いに答えるように紡ぐ言葉。
「『愛』してる」
重なる言葉。
終わらない愛の行方。
行き着く先は天国か地獄か。
「兄さん……」
そう呟いた私の唇を塞ぐのは君。
二人だけの楽園で生きるのです。
永遠に続く愛の歌。
その血を濃くして次へと巡らせましょうと二人は笑う。
想うことは罪であり、交わることが罰だと知っていてももう戻れない。