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花が結ぶ恋  作者: 千華
知らない姿
3/3

ずっと見ていた

配達した花を通りかかった家の者に花を渡し、二人は奏の部屋を目指した。


奏が一室の部屋の前で止まった。

どうやら彼の部屋らしい。

襖を開いた奏は少し笑った。

「どうぞ、散らかってますが」

「お邪魔しまーす」

後輩の部屋だと気が抜けたのか言葉を伸ばし安心しきっている。

本格的な道具を見た風花はふと思った。


「ねぇ、奏 」


「何ですか?」


「なんで、部活に入ったの?」


部活に入らなくっても花を生ける環境にいて、たたが、高校の部活だ。


将来家元になる彼が、どうしてだろうと疑問になったのだ。


「俺、最初は部活に入る気無かったですよ。お遊びじゃないですか、本場の者から見ると」


言い方は悪いが納得する解答だ。


一生懸命だが、その道にいるものからしたらお粗末な出来だろう。

それに、道具も安物であって高級な物ではない。

だけど、と彼は言葉を紡いだ。


「先輩達は違っていたんです。遊びじゃ無かった。嫌々参加をしていた華道の者達が次々に誉め出したんです。評論家までもが。高校の部活ですよ?お嬢様達ではない先輩達の生けた華。それはどれも美しいと言っていたのを聞いたんです。

珍しいと思いました。

師範の資格を持って本格的に習ってないアマチュアの人達の華を誉めた先輩達に逢いたいと思いました。だから部活に入って新しい自分の可能性を知りたかったのも理由です。

誉めた中でも先輩の華をとくに誉めてました。

花の色、香り、誰もあまり気にしない花言葉までもが、相性がいいもので、タイトルもその花達に合っていた。目を見開きました。

プロでも気にしない細かいとこも繊細に彩る生け花。

高校1年のレベルではないと誰もが言いました。

俺もそう思ったんです。

俺はずっと3歳から教育されてるのに、先輩の生け花に惹かれました。

俺もいつかこんな華を生けたいと思いました。

俺の母も、父も先輩の華を絶賛してましたよ。

それこそ珍しいです。

けして誉めたりしない親達が先輩の華を誉めたんですから。

それからですよ、先輩が花屋の娘だとして四ノ宮の花屋に花を変えたんですから」

クスクスと笑う彼に風花は初めて聞いた本音に耳を疑った。


緑川の家から花を頼まれたのは展覧会の後からだった。


去年の展覧会で入賞をした風花。


べた褒めするまでだとは知らなかった。


「そうだったんだ...」


「はい、でも実際あった先輩達は想像を越えた人だった。とても楽しそうに話ながら丁寧に生ける。だからあんな誰よりも目を引く花が楽しそうに話している華を生けらるのだろうと思ったんです。とくに風花先輩は部長になっていて他の人達とも仲良く的確な指導をしていました。後輩への指示や当番制の掃除。しかも先輩後輩が一緒になるように工夫してました。イビリが無いように先輩は毎回掃除に参加して皆の生け花を飾りに回ってましたよね」



人の行動をよく見てる、と思った風花は楽しそうに嬉しそうに笑った。


「ははっ!奏らしいよね、良く人を見て洞察力に優れてる。私ね?去年入賞してと当時3年の先輩達にイビられたの。調子に乗るなって。でもね?今の3年の先輩が助けてくれたの。

“風ちゃんが一生懸命やった証何ですからそんなこと言わないで下さい”って、当時は今のように雰囲気が良かった訳じゃないの。

私が2年になって、先輩が私なら部活を変えられるって部長に推薦してくれたの。もうすぐ夏休みだし先輩たち勉強に集中したいからって毎回のように部活に出れないから私が先月部長になったってわけ」


知らなかった事実に目を見開くが、納得している自分がいた。

「ねぇ、風花先輩」


「何?」


「俺ずっと見てたから分かるよ」


「え?」

何が分かるのだろうと首を傾げる。


「風花先輩が誰よりも花を好きってこと。好きじゃなきゃ努力しても頑張ってもあんな綺麗な花を生けることは出来ないよ」


優しく染み渡る言葉。

傷付いていた自分に言われたらどんなに嬉しかったか。

多分、この後輩の前で泣いていたかも知れない。

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