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十分ですよ

 ギルドハウスの案内所に目を向けると、そこにいる人はハルバークさんではなかった。今いる人は、記憶違いでなければ今朝に見かけた人と同じに思える。

 ハルバークさんとはまだ数回しか顔を合わせてはいないけど、会った時間を考えるに彼は夕方勤務なのかもしれない。


 見知った顔じゃない事に少しばかり気おくれしつつも、私は案内所の前に近寄っていく。


「すみません」

「はい。何かわからない事がありでしょうか?」

「ギルドハウスに関してじゃないんですけど、いいですか?」

「ご説明できる事であればお教えいたしますよ」


 快く承諾しれくれた事に、胸を撫で下ろす。

 駄目とは言われないかもしれないけど、少しも不満そうな様子が無いのは聞きやすくて助かる。


「何処かに図鑑の様な物が読める場所ってありませんか?」

「図鑑と言いますと、本ですか……。メルトレレスは港町ですから、潮風などで傷みやすい本を取り扱っているお店は無い為、残念ながらまず本が無いのですよ」

「そうなんですか……」


 これは当てが外れちゃったなぁ。

 何かしらの情報が手に入るかと思ったけど、全く無いとは思わなかった。


「個人で本を持っている方は居るかもしれませんが、図鑑となりますと値が張りますから可能性はゼロに近いかと……」


 案内所の人は申し訳なさそうな表情を浮かべて、段々と尻すぼみになりながらも説明してくれる。

 相手が悪い訳じゃないのに気を遣わせてしまった為、私は慌てて言葉を紡ぐ。


「有るか無いかはっきり分かっただけでも十分ですよ。どうもありがとうございます」

「いえ、お力になれなくて申し訳ございません」

「そんなことないですよ。図鑑の値段が高いって事が分かっただけでも十分です。欲しい理由が大した事ではないので、どうせ有っても値段みて買うのやめちゃいそうです」


 謝る案内の人に、私はそう言いながら苦笑いを浮かべる。

 今朝に受けたクエストの報酬で多少はあるけど、正直金欠と言っていい。消耗品は少し買えるけど、装備品は無理といった量だ。

 事前に情報があれば楽だろうなぁと思っている程度の、あんまり優先度が高くない図鑑を買う気にはきっとならないだろう。


 そんな私の言葉を聞いて、案内の人は少し何かを考える仕草をして一つ質問をしてきた。


「失礼ですが、欲しい理由を聞いてもよろしいですか?」

「ええ、いいですよ」


 別に人に話せない理由でもないので躊躇う事なく承諾して、私は図鑑が欲しい理由を手短に話した。

 すると、案内の人は表情に笑みを浮かべ──


「それでしたら、ギルドハウスの方から情報提供できる事ですよ」


 と、明るい声色で言うのだった。

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