ずっと待ち焦がれてた
「とはいえ、相当嬉しい物みたいだけど、どんなゲームなのよ?」
なんだかんだ言っても、私のゲーム好きを受け入れて聞いてくれる理恵。話に熱が入り過ぎて、ドン引きされる事も多々あるけど。
「VRのゲームなんだけど、初のMMOなんだ」
「MMOって、確か、めぐが事ある毎にやりたいって言ってた奴?」
「うん、そう」
理恵はゲームとかは少し疎い。MMOがなんなのか、どういう意味かも知らないけど、私がゲームの事を話す時、毎回の様に口にしていたのを覚えいたみたいだった。
それも仕方ない。MOばっかしか出ないんだもの、幾らでも文句言いたくなるよ。
「待望ゲームって事ね」
「ずっと待ち焦がれてた」
「そうとうね、あんた……」
感極まった私に、理恵は呆れた表情を浮かべてるけど、本当に待ち望んで焦がれていたのだ。
「確かMMOとかMOってネットよね?」
「うん、オンラインゲーム」
話を続けながら、ホームに到着した電車へと乗り込んで行く。
「気を付けなよ」
「ありがと」
車内に入ると、最早指定席となりかけている場所に座る。
何時も同じ場所を開けてもらって、申し訳ないと思いつつ甘えてしまう。実際楽なんだもの。
「そのVRMMOってどんななのよ?」
電車内、朝の通勤、通学ラッシュで人が多い中、オンラインゲームの話を促されるうら若き高校生女子。
だけどそんなの、私、全く気にしません! だって、ゲーム好きなんだもの!
「名前はWorld Author Onlineって言うみたい」
車内に何人か、あからさまに反応をするのが居た。
初のVRMMOだもの。そりゃ知ってる人は知ってるよね。兄曰く今日オープンだし。名前を急に聞いたら反応しちゃうよね。
私は目線を向けそうになるのをこらえ、居に介さない様に話を続ける
「お兄ちゃんに聞いた限り、戦ったり物作ったり、なんでも出来るみたいだよ」
「色々自由なんだ」
そこな男子がチラチラをこちらを見てくる。
きっとWAOに詳しく調べてて、もっとちゃんと説明したいんだろうな。わかるよ、その気持ち。
でも自分で調べるからいいです。
「私も調べてみようかなぁ」
「理恵も?」
その反応は少し、いや、かなり意外だった。
まず理恵は、VRゲームをやる為のマシナリーを持っていない。理恵の弟がマシナリーを持っているので、私が勧めて貸したりするVRゲームを、その弟から借りてやる程度だ。
それらはどれも一人用だし、VR慣れしてなくても気軽に楽しめる物ばかりだ。
そんな理恵が私が勧める事も無く、VRゲーム、それもMMOに興味を示しているのだ。
意外も意外だ。
「いや、ほら、ネットって事はめぐと一緒に出来るって事でしょ? VRゲームなら気にせず動き回れるし、そういうのもありなのかなって」
「……そうだね。一緒に出来るなら一緒にやりたいな」
そうだ。
だからVRMMOを──もう一つの世界を待ち望んでいたんだ。
「でも無理しないでよ?VRMって普通に高いし」
「幾らだっけ?」
「オプションとがで色々変わるけど、最低でも20万はすると思う」
「たっか!」
私の言った値段に理恵は驚愕の表情を浮かべているけど、ハイエンドな環境ででVRMMOをするとなると、もっといくだろうな。それを聞いたら、どんな反応をするのだろうか。
一緒にやれるようになるのは、当分先の話になりそうかな。