いいや別に
アビリティレベルを確認した私は表示していたウインドウを消して、そのままベッドへと後ろに倒れこんだ。
だらしなく四肢を投げ出しながら考えるのは明日の事。
第一にやる事はエクストラクエストのクリア。それにはまず、品質Bの陽光草を採取するのに道具を買わなくてはいけない。
道具があれば絶対に品質Bになるかは分からないけど、無いよりかはマシな筈だし。
レベル上げはどうしようかな……スタミナ関係のアビリティにSPが欲しいけど、とりあえず採取優先で保留でいいや。
虚空を見つめてぼうっとしていた私は、おもむろにヘルプを表示する。確認するのはエクストラクエストの事だ。
改めて探してみるも、やっぱりそれらしい項目は無い。
強いて言うなら、クエスト関連に「出現条件があるクエストなども──」といった一文があるくらいか。
それ以外に関連してそうな項目が見つけられず、小さな溜息と共にウインドウを消していく。
その途中、操作していた指先がフレンドリストの上で止まった。
「……いいや別に」
私は少し考えてからそう呟き、改めて指先を動かしてウインドウを全て消した。
フレンドリストの中には聞けば色々しってそうな奴が登録されているけど、正直そこまで聞きたい事でもない。
「さってと、ログアウトしてお昼ご飯食べよっかな」
ログアウトの準備をしようと、ベッドのスプリングを利用して上半身を起こした。
「あ」
その時、私は目の前の机を視界に入れて、とある事をはたと思い出した。
Authorシステムである冒険譚。
それは何処にいても閲覧はできるけど、評価や投稿をするには借りた一室などの机からアクセスする必要がある。
まぁ、冒険譚を書き連ねると思えば、それらしいと言える仕様なのかな。
「よっと」
私はベッドから腰を上げると、机に近寄り椅子を引く。
全て木製で出来ているからか、見た目では想像していなかった重さに少し驚く。でもその分、見た目と違って頑丈そうでもあるなと考えて、私は躊躇わずに座り込んだ。
椅子に座り込んで机に向かうと、これが異様な迄にジャストフィットしていた。
高過ぎもせず、低過ぎもせず。
思えば、ベッドのサイズも不思議と丁度いい。
フィットするような仕様なのかな?
私は割と小柄だから、学校のとか少し大きいと感じることが多々ある為、助かる話ではある。
おぉ、深く座ってもプラプラできない。
変な事に小さく感動しつつも、私は机上を指先で三回叩く。これが、Authorシステムへのアクセスコマンドのモーションだ。




