採取に納品ですか
エクストラ──つまりは特別って事で、直前の“条件が満たされた”ってインフォメーションを見た感じ、これってきっと隠し要素だよね……?
公式HPのクエスト関係の項目にそれらしい物はなかったし、ヘルプの項目にも……うん、やっぱ無い。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ、すみません。 えっと、その……」
思った以上に私はてんぱっていたみたいだ。 ハルバークさんの事を気にせずにメニューを開いてヘルプを確認した為、不思議そうな目で見られてしまった。
慌ててハルバークさんに向き直り、手前のインフォメーションに目を落とす。 Yes/Noの選択肢はないしお答えくださいって事は、たぶん口に出せって事だよね。 ハルバークさんも私の返事を待ってる様子で見つめてきてるし。
どうしようか……。 隠し要素だし受けたい気持ちはあるのだけど、クエスト内容がまったく表示されて無いのが正直不安なんだよね。 って、そうか、聞いちゃえばいいのか。
「お願いの内容を聞いてからでも、いいですか?」
「はい、勿論かまいませんよ」
内心ドキドキしながら恐る恐る口にすると、ハルバークさんはにこやかな笑みで了承してくれた。 よかった。
「お願いというのは、ポーションの材料となる陽光草の採取および納品です」
「採取に納品ですか」
お願いの内容を聞いて、私は思わず首を傾げてしまった。 だって、採取系クエスト──それもランク1の採取物なのに、それがエクストラクエストなんてちょっとおかしい。
そんな私の疑問を感じ取ったのか、ハルバークさんは事の説明をしてくれた。
「先ほど話した事ですが、現在のメルトレレスはランペイジベアの出現により物流が止まってしまっています。 そして大勢の冒険者が集った事により消耗品──特にポーションの消費が著しい。 それを少しでも解消しようと、ギルドから陽光草納品クエストを出したのですが、未だ受ける人がいない状態でして……」
話を聞いて合点がいき、私は小さく「あー……」と零した。
このエクストラクエストの条件が大体予想できた。 きっと消耗品の在庫がなくなると、クリアすると消耗品の補充がかかるようなクエストがギルドに出現する。 それが全くクリアされない状態の時に、プレイヤーがギルドのNPCに話しかけて、クエストクリア可能なスキルに触れると発生って感じかな。
この予想が当たってるとしたら、エクストラクエストが発生する確率って大分低いかも。 今回はまだゲーム始まったばかりで、生産系スキル持ってる人が少なかったからって感じだし、人が増えて生産系プレイヤーとか増えたら発生しなくなりそう。 他にも違う条件のエクストラクエストがあったらその限りじゃないだろうけど。
と、そんな事を考えていると、チリンと小さな鈴の音と共に手前にあったインフォメーションが変化し、新たにウィンドウが表示される。 どうやらクエストの内容を聞いた為、内容を表示するものに変化したみたいだ。
えーと、どれど──
《〔【陽光草】の納品〕:エクストラクエスト
品質Bの【陽光草】を可能な限り採取をし、ギルドに納品する。
〔報酬〕
AP+1~3 and 交渉により変化。》
反射的に隠すようにウィンドウを両手で押さえつけた。
報酬にAPがあったよ。 APがあった! しかも最大3も増える!! ま、周りに見られてないよね?
ウィンドウを押さえつけたまま、キョロキョロを辺りを見回す。 ギルド内は今の時間がピークなのか人でごった返しているが、殆どがPTを組んでいた人達と話していたり、メニューを弄っているか様子の人ばかりで、私に注目している人は片手で数える程度だ。
って、見られてますがな! あ、でも大丈夫かな……? なんか不思議そうに見られてるだけでエクストラクエストの事には気づいてなさそう。 というかちょっと落ち着け私、普通こういうウインドウは他人には見えない仕様なんだから。
落ち着いてその事を思い出すと、不思議そうにみられる訳もわかってくる。 そりゃ突然、宙に両手を合わせてキョロキョロしてたら見ますよね。 ……気づけばハルバークさんも不思議そうな顔してるし、ちょっと恥ずかしい。
取り繕うようにフードの端を積まんで目深に被りなおし、クエストウインドウに目をやる。
内容はいたってシンプルだ。 品質Bの陽光草を可能な限り採取する。 手持ちにあるのは全部Bじゃないから今すぐは出せない。 道具を買って手動で採取する必要があるね。
そんで“可能な限り”ってのは報酬を見れば、多ければ多いほどSPが多く貰えるって察する事はできるけど……交渉により変化ってなんだろ? 普通のクエストの報酬にあるお金がないから、交渉してそれを決めろって事なんだろうか。




