表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/43

ん!?

アーツとか効果表現とか、全く考えてなかった!

 翌朝、私は朝食を食べ終わると直ぐにログインを開始した。時刻は午前9時を指している。

 平日なのにこんなに早い時間なのは、今がテスト休みだからだ。出かける予定も気力も無いので、今日一日はWAOにつぎ込む気である。いやはや、テスト休み様様だ。

 ちなみに兄は、サークルの付き合いだとかで既に家にはいない。いても共に行動したくないから、拒否する必要がなくなったのは少しありがたい。


 以前と同じく身体の感覚がアバターに入り込むと、辺りの空中や地面を踏みしめる感触を感じとる。ゆっくりと目を開けると、やはりまだ暗がりで転送は終わっていない。

 待つか、という気持ちを持たせる前に、トンネルから抜け出た様に辺りの景色が一変。昨日ログアウトした場所である、ギルドハウスの隅に私は降り立った。


 やはり平日の朝と言うだけあって、ギルドハウス内に人の数は非常に少ない。いや、良く良く見たらカーソルの色が緑───つまり全員NPCだ。

 プレイヤーが居ないという状況に珍しい光景を見た気分になりつつも、私はクエストが張られた掲示板──クエストボードの前に足を向ける。

 今日は〈調合〉を試す予定だけど、試すには必要になるアイテムが無くてはならない。それを採取するところから始める訳で、そのついでに出来そうなクエストが無いか確認するつもりなのだ。


 やっぱり、指定されたMobを規定数倒すってのが定番かなぁ……。


 クエストボードの前に立ち止まって視線を向ける。するとフォーカスされたのをシステムが認識し、受けられるクエストの一覧が載ったウインドウが手元に出現する。


 とりあえず、《ホワイトラビットの狩猟》《ボアレットの狩猟》《逸れ狼の撃退》の三つを受けることにした。前から順に、5匹、5匹、2匹と倒せばクエスト完了の様だ。


 ちなみにクエストには狩猟、撃退、退治、撃破など、幾つか種類があって必要数が違ったり、時間制限がついていたりなどしている。もちろん制限が多くついている方が報酬はいいけど、ついでという方針に合わないので今回は無し。

 また納品タイプもあるけど、クエストを受けていると専用ドロップが出る仕様の物と、通常ドロップの物があるから、クエストの選別もめんどくさいしこちらも無し。


 通常ドロ品クエの必要数集まってたら、その時受ければいいでしょ。


 クエストを受注したら、次に受付のNPCに話しかけに行く。

 これは別に絶対に必要という訳ではないけど、一言受けた旨などを言っておくと名誉値に多少の補正が掛かる……らしい。

 これらは、昨日ギルドハウスに来た時にヴィーツさんが教えてくれた事だ。ゲームが始まった当初は、NPCに話しかけずに直ぐに出ていく人ばかりだったらしいが、一言声をかけていたプレイヤーと比べてNPC達からの人当りに差が目立ち始めたとか。


 実際の所は正直わからないようだけど、まぁ、今は人もいないし手間でもないし、声を掛けない理由はない。


 ちなみに名誉値というのはWAOのシステムの一つ。

 主にクエストとかを達成させたりすると増えていくマスクデータらしい。


 こういうのがあるよ! って公式で出てるだけで確認の仕方がないけど、信用度とか好感度とかと同じようなものでしょう。増減で何がどう変化するの知らないが。



「すみません、クエストを受けたので行ってきます。」

「少々お待ちください。……はい、クエストの確認を致しました。お気をつけていってらっしゃい」


 クエストを受けたし、これでギルドハウスでやることは他にはない。私はギルドハウスを後にしてフィールドに向かうことにした。

 出る際に出入り口側の受付をチラリと見たが、ハルバークさんは居なく、違うNPCがそこにいた。時間で配置されるNPCが違うのだろうか。




 ◆◆◆




 プレイヤーが居らず、閑散としたメルトレレスの街中を抜けてフィールドに出る。流石にフィールドにはプレイヤーがあちらこちらに見受けられたが、それでも昨日に比べるとその数は少ない。

 この様子なら、Mobの取り合いになる事なくクエストが完了できそう。クエストを受ける時に少し懸念していた事だったけど、この様子なら問題なさそうで私は安堵する。


 よし!とりあえず採取できる場所を探しますか!


 アビリティウインドウを開き<探索>アビリティをタップする。するとアーツウインドウが開き、現在使用できる<探索>アビリティのアーツ表に一足でたどり着く。今使えるアーツを確認してみると、〔ポイントサーチ〕というのが使えるようだ。


 《〔ポイントサーチ〕:アクティブ

 発動時間:即時  再使用時間:2分  効果時間:5分

 発動地点を中心に採取物がある地点を探し出し、位置を視覚的に表示補助するアーツ。

 範囲と効果時間はアビリティレベルとステータスにより変動。》


 常に効果が出るパッシブでは無く、その都度使用して効果を得るアクティブのタイプである様だ。

 この手のタイプのアビリティは、パッシブが殆どだろうと言う先入観があるだけに少し物珍しく感じる。表示補助と言うのが常時見えてると煩わしくなるからだろうか。

 ともかく、使ってみないことには始まらない。


「〔ポイントサーチ〕!」


 ………。


 ……………。


 …………………?


「あれ?」


 全くもって変わりばえのしない景色に首を傾げる。

 ちゃんと発動出来てなかったのかと思ったが、HPケージ等の上部に効果発動のアイコンがしっかりとあるし、アイコンを注視しても〔ポイントサーチ〕と名称が出ている。発動しているのは間違い無い筈だ。


「範囲に無かった……?」


 発動はしてるけど変化無し、となると残る可能性はこれしかない。フィールド出てすぐの場所で発動したから、近くに無くても言う程不思議ではないし。

 とはいえ、再使用に2分かぁ……効果時間中にクール終わるじゃんとか思ってたのに、不発があるとは……。

 仕方ない。再使用出来るまで近くのMobでも倒そう。


 気持ちを切り替えるつもりで、腰に下げた剣の柄頭を軽く叩く。

 人が少ないフィールドなら、すぐにMobとかち合う事が出来るだろう。むしろ人が居なさすぎて、何処の方向に行くか悩ましいくらいだ。


 どうしようかなと考え、昨日に兄と拓篤さんとの三人で向かった方向に顔を向ける。

 昨日は向こう側に行ったのだから、今度は逆の方に向かって進んでみようかな。

 私はそう考えると、顔の向きを変えて視線を逆方向に切り替え───


「ん!?」


 ───ようとしたが、視界の端に入り込んだ違和感に視線をすぐさま戻す。


「……なにあれ」


 出入り口である門からは街を囲う様に外壁が伸びているのだが、街の作りが北と南に延びている為に外壁も北と南に延びる形になっている。そのために太陽が昇りきらない朝や夕方だと、その外壁が光を遮って影ができるのだが、その影の一部に異様なものを発見した。

 その異様なものとは、太陽光が遮られて影になっている場所に、その一部だけ真上から降り注ぐような光が差しているのだ。


 すぐそばの外壁を見てもそんな光芒ができる穴らしき部分はない。そもそも色が青白くて太陽光には見えないし、光芒は真上からで太陽と向きがあってないのも異様だ。


 グラフィックのバグか何かなんだろうか?

 距離があるわけでもないので、私は好奇心に動かされて小走りで近寄ってみる事にした。


 外壁沿いということもあり、Mobは沸きにくい位置のようで辺りにMobは見えない。もし沸いたとしてもノンアクティブなウサギやウリ坊だろうから、私は周りに気をかけることなく光芒の元にたどり着く。


 近寄ってみると、よりはっきりと光芒の様子が視認できた。距離が離れていた状態だと光の加減で分かりにくかったが、この光芒はかなりの高度から射しているようで、それが地面まで続いている。

 私は思わず口を開けながら光芒を見上げて、そのまま光をたどって視線を地面に動かしていく。


「あ、これって……」


 そして光が射す地面を見てとあることに私は気づく。

 そこには、辺りにある草オブジェクトとはデザインの違う───茎や花のないタンポポが一番形としては似ているだろうか、そんな草が生えていたのだ。


 それを見つけた私は、視線を平原の方に向けて目を凝らす。すると、非常に分かりにくいものではあったが、ところどころに同じ感じの青白い光芒を見つけることができる。それで確信した。


 これ、〔ポイントサーチ〕の表示補助の効果だ。


「わっかり難いわっ!!」


 思わず叫んでしまっても、仕方ないことだと思いたい。

 ……人のいない時間帯でよかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ