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私もフレンドだよ

「可能性としてはDEXか……?」


 確かに初期選択にあったなら、条件と言える様な物はステータス値しかない。そして最初に差が出来る値はDEXかAGIだ。AGIが回避関係のステータスだと考えると、DEXしか可能性はのこらない。


 そして次は必要値はいくつなのか疑問になるのだが、ダーツさんのスキル習得欄になかったとなると、ダーツさんのDEX以上ということになってしまう。

 それはつまり、私の初期値がダーツさんのDEXを上回っているという事だ。


 多分、ダーツさんが自信を持てないのはそこが原因なんだと思う。

 DEXは個人で初期値が変動するステータスだけど、既にゲームを始めてる人より高いなんて事あるのだろうか。


 そもそも、私自身が自分のステータス確認してないっていうね。そんな時間なかったから仕方ないんだけど、確認するのが少し怖くなってきましたよ?


 ややあってダーツさんは頭を振る。一度頭を振ると、眉間のシワは無くなっていた。

 どうやら考えても切りが無いと思ったのか、一旦頭の隅に追いやったみたいだ。


「まぁ、掲示板に書けば、何かしらわかるか……って、これ掲示板に書き込んでも?」

「勿論いいよ」


 掲示板への書き込みの応否を聞かれたので了承する。むしろ、一人のプレイヤーなんだと分かる様に書き込んでとお願いしたいぐらいだ。

 言葉にしなかった必死な願いを察してか、ダーツさんは苦笑を浮かべながら任されてくれた。


 聞きたい事は粗方終わったのか、ダーツさんが掲示板にどう書き込むかまとめ始めたので、私は手付かずだったデザートを食す。

 特に凝った盛り付けもないシンプルなチーズケーキだ。可もなく不可もなくなお味。


「そういや……」


 黙々とチーズケーキを食べていると、私には見えないメモ帳ウインドウに目を向けたまま、ダーツさんが思い出したかの様に呟いた。


「シキ……《白騎士》つった方がわかるか? あいつとは知り合いなのか?」


 私はフォークを咥えた状態できょとんとした表情を浮かべた。

 そんな私の表情をダーツさんは一瞥し、質問の訳を続ける。


「船着場であいつが迎えにきたとか、一緒にフィールドにいたって話があってな」


 それを聞いて、ますます兄とは一緒に居ない事にしようと、堅く決心したのは言うに及ばず。


「その《白騎士》の名前は〈看破〉で知ったの?」

「そういう奴もいるだろうが、俺は本人から聞いた。 何回かPT組んでな、人柄良いしPS(プレイヤースキル)も高いからクランに勧誘したんだが、残念な事に断られちまった」


 それを聞いて少し意外に思った。

 兄なら、お願いされたら困りながらも最終的に承諾してしまいそうなのに。


「かわりにフレ登録したけどな」


 なにやら自慢げにダーツさんが胸を張っている。

 もはや、我が兄とのフレンド登録がリアルで言う、著名人と友達なんだぜすげーだろ扱いである。


「私もフレンドだよ」

「はーん」


 私の当たり障りの無い返答に、ダーツさんはつまらなさそうに気の抜けた反応を見せる。

 まぁ、今日始めたばかりの私がシキと知り合いって時点で、それがリアル絡みなのは察しているだろう。

 それは私も気付いてるし、その上でのこの返答だからこの反応なのだ。


 ここで私がシキの妹なんだとカミングアウトしたら、ダーツさんはどんな反応を見せるのか。興味はあるけど、うーん……。

 ……そうだなぁ。


「四季メグル」

「うん?」


 ダーツさんが不思議そうな表情を浮かべ、メモ帳から私に視線を移す。


「私のアバター名。漢字で季節の四季に、カタカナでメグルって言うの」

「四季って……たまたま、じゃぁないよな?」


 ダーツさんの質問に答えず、笑みだけを返す。


 真面目な話、掲示板の書き込みとか色々お願いしといて、ダーツさんの名前だけ聞いて私の名前を教えないのは悪いと思ったから。

 適当な話、リアル絡みなのは察してるなら別に名前ぐらいいいかー。


 ……いやでも、妹だと断言するつもりはないし、ダーツさんと話して言っても大丈夫だと思っての事です。

 まぁ、身内だってくらいは流石にわかりそうなもんだけど。


 実際、ダーツさんが「だからかぁ」とか言っちゃってるし、気付いちゃってるし、納得しちゃってるし、何がだからなんですか!?


「いや、シキをクランに誘った時、“妹と一緒にやるから”って断られたんだよ」

「………」


 お兄ちゃんなんか、大っ嫌いだい。

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