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道を聞きたいんですけど

 夕食中に今後の事をつらつらと考えた。と言うのも、予想以上に注目を浴びてしまったからだ。


 スキャニングアバターなので多少は覚悟していたが、今の注目度は流石に辛い。


 それがプレイヤースキルの高さなどの褒め称える注目ならまだいい。正直に言って、ゲーム好きとしてはそういう願望が無い訳じゃない。ただ今みたいな物珍しい注目は、嫌いだ。


 そういう視線は、現実だけので十分だ。


 なので、注目される原因を考えて対策を練る事にして、まず真っ先に上げられるのは髪の色でしょう。船から降りる時も凄い見られていたし。


 これはフードとか頭を覆う何かをしておけばやたらめったら見られないでしょう。後は掲示板あたりに設定の仕方を書き込めば、時間が解決してくれる気がする。


 次はスキャニングアバターだろうか。しかし、うーん……。確かにスキャニングアバター自体は珍しいけど、今みたいに取り立てて注目される事は無いと思うんだけどなぁ。


 つまり、取り立てる程に注目される原因がある訳で……その原因が……。


 ……同じスキャニングアバターである白騎士(おにいちゃん)かっ!!


 えぇー……私自身が原因じゃないとか、対策とりようが無いじゃないですか……。


 その事に気づいた時に兄を睨みつけて困惑させたけど、私は悪くない。このイケメン(周囲評価談)め!


 これの対策は、とりあえず兄と一緒に居ない事でどうにかしようと言うことにした。街の案内を申し出されても拒否である。


 先ずはクエスト報酬のお金でフードなんかを買う事にしました。防具もニュービーから買い替えたいし、そっちも一緒に買ってしまおう。




 ◆◆◆




 ゲームを起動してログインを開始。すぐにアバターに感覚が入り込み目を開けるも、まだ転送中なのか辺り一面真っ暗だ。だがすぐに正面に小さな穴が開いたと思うと広がり、ログアウトしたギルドハウスの景色と変化した。


 う、早速視線が……。でも〈感知〉は反応して無いし怖くないかな。本当に何に反応してるんだか……。


 私に視線を向ける人と目が合わない様に、騒がしい喧騒が飛び交うギルドハウスを見回していく。探しているのはギルドハウスで働くフリーのNPCだ。


 すぐにこの場所から離れたいけど、生憎な事に何処で防具が買えるかわからない。だからNPCに聞こうと言う訳だ。


 メインメニューにマップ機能はあるけど、自分で歩いた範囲や知った情報しか乗らない仕様だからなぁ。ちとめんどくさい。


 キョロキョロと見渡していると、一つの受け付け場所が空いているのに気付く。なんであそこだけ人が居ないのか不思議に思いながらも、空いてるならと向かっていく。


「おや? ギルドハウスのご利用は初めてですか? よろしければ説明いたしましょう」


 ギルドハウスの説明をするNPCだった様だ。だからプレイヤーが居ないのか。


 と、はたと気づく。

 NPCに道聞いて教えてもらえるのだろうか?


 アインツのせいで普通に会話ができるもんだと思ってたけど、ぶっちゃけVRが流行しているこの時代の今でも、AIの会話は定型文がほとんどだ。


 しかしNPCとはいえ、反応されて無言で離れるというのもどうか。ただでさえVRでリアルだと言うのに。

 ここは人工知能の最大手であるエクストメニクス社の技術を信じてみよう。


「あの、道を聞きたいんですけど……」


 ギルドハウスの説明を始めようとしていたNPCに駄目元で、それも反応は無いだろうという思いで小さくなった声にNPCは───。


「あぁ、そうでしたか。これは早とちりして申し訳ありません。何処への道ですか?」


 説明に開けかけた口ですまなそうに謝罪すると、にこやかな笑みで聞き返してきた。びっくりである。


「……その、頭を覆うフードとか、防具を売ってる店までのを」


 まさかの反応に硬直しかけたものの、相手に不審に思われる前になんとか言葉を紡ぐ。


 すると、相手は私の髪を一瞥し、次いでその髪へ視線を向ける後ろの人達に気付き納得気に頷いた。


「なるほど、確かにそういった物が欲しくなりますね。では、いい場所をお教えしますよ」


 今度は流石に驚き固まりましたとも。だって“道”というキーワードで反応したのかと思ってた所への、今のリアルな反応ですよ。「どうしました?」と声をかけられるまで、完全に硬直してた。


「い、いえ、その、あ、ありがとうございます」


 私のしどろもどろなお礼に、相手はにこやかな笑みで頭を振る。


「お気になさらず」


 そうして店の位置、細かな道順──とはいえ、大きい街でもないからややこしくはないが教えてもらい、勿論この情報はマップに反映された。いやぁ、聞いてみるものだ。


「最初にお伝えしたお店に雨除けのフードやマントなど売ってますので、先にそちらに行くのがいいと思いますよ」

「はい、ありがとうございます!」


 この人すっごい親切に教えてくれて、本当にありがたい! それに全然NPCっぽくないし、すごいなエクストメニクス社! とはいえ、ここまで来るとなんだかNPC扱いしにくい。


「……あの、名前を聞いてもいいですか」

「おっと、これは紹介が遅れましたね。私はハルバークと言いまして、ここでギルドハウスについて説明しています。」


 物は試しと聞いて見ると、ハルバークと自己紹介してくれる。その途端、ハルバークの頭上に《ハルバーク》と表示が出現した。


 まさか、NPCは名前を知るとその頭上に表示されるのか! ……って事は、え、じゃぁ、ここにいるNPCって知らないだけで全員名前あるの!?


「貴女の名前も聞いてもいいですか?」

「あ、はい。私は四季メグルです。四季だとかぶる人がいるのでメグルと呼んでください」

「あぁ、シキさんですね」


 ナチュラルにNPCの口から兄の名が出るこの感じ。まぁ……《白騎士》の事が兄なら仕方ないか。NPC相手に俗に言うお使いクエストやりまくってたみたいだし、好感度とか高そう。


「とにかくメグルでお願いしますよ。道を教えてくれてありがとうございました、ハルバークさん」

「道中お気をつけて、メグルさん」


 お互いに挨拶を交わし、私はギルドハウスを後にした。

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