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幸先いいね

初戦闘シーンだから色々詰め込んだけど、二度とやらん。

 とりあえず、ウサギにリンチにされる様な恥ずかしい死に方をした大剣使いは置いといて、私自身どうしたものか。


 体当たりをどうにかするというのは確定だから、〈受け〉アビリティのレベル上げに受けるのも有りだし、〈回避〉アビリティを狙って避けるのも有り。


 ただ不安が一つある。それはスタミナ切れ。

 アクションゲームと言うのもは、防御や回避にスタミナを多く消費するものだし、おそらく普通に攻撃するだけでも消費してるだろう。


 ただでさえHPやMPみたいにゲージとして目で見えないのに、スタミナを消費していくのは怖い。


 某大剣使いの二の舞とかごめんだしなぁ。


 どうするか悩んでいると、ウサギが動きだして距離を詰めてくる。対処方法はわかっているのでその事には焦らず、ウサギが体当たりの溜めに入った瞬間に一歩踏み込む。


 おぉ、見えた。


 今度は超反応で逃げる事を知っていたので、辛うじてだけど跳んだ方向を追うことができた。


 うーん。タイミングはバッチリだけど、一歩でも近づいたら逃げられるから……。


 右手に持つ剣に視線を移して剣を持ち上げる。そして風切り音を出してバツ字に振るい、持ち手の先でクルリと回す。


 やっぱりちょっと軽いけど、すっぽ抜ける感じはなさそうだしいいか。


「よしっ、目指せホームラン」


 意気込み剣を構える。

 ホームランなんて言いつつも構えはバッターのそれではなく、テニスのフォアハンド。それも既にテークバックしている状態だ。


 勿論テニスをするつもりはないし、そもそも残念の事にテニスをしたことがない。この状態からのが合わせやすいというだけだ。


 構えて待つ事数秒、威嚇していたウサギが動きだす。

 最初こそ動きの速さに驚いたものの、左右に跳ぶテンポが一定なのに気づけば大したことはない。距離に気を付けて何歩目に攻撃がくるかを計算するだけだ。


 タンタンタンときてから、溜めが入っての───


「タンッ!」


 振り抜いた剣に確かな手応え。その感覚と同時にウサギの悲鳴が上がり、ダメージを示す薄紅色のポリゴン片が宙を舞う。


 それを視界端に捉え、追撃する為に振り抜いた剣の刃を返して踏み込み───動きを止めた。


「え? ぁ、一撃?」


 初撃でウサギは吹っ飛び、地面に崩れ落ちると共に消滅していた。


 柔いとは聞いてたけど、私初期装備のレベル1なんですけど。


「いいのが入ったなー」


 あまりの呆気なさに剣を構えたまま呆然としていると、拓篤さんと兄が近づいてきた。

 私は構えていた剣を下げて2人に向き直る。


「一撃死とか、これ経験値乱獲出来るんじゃないの?」

「んなホイホイ一撃されてたまるかっ!」

「今のは綺麗に入ってたからねぇ。クリティカルヒットだったから一撃死だと思うよ」

「今のクリティカルだったんだ」

「普通だったらもう二、三回必要だろうしな」


 WAOにクリティカルヒットはあり、発生すれば通常より大ダメージを与えられる事は勿論の事、相手を即死させる事も可能だ。

 ただ、エフェクトも何もないので通常ダメージと判別出来ず、とりあえず即死したらクリティカルって話になってるらしい。


「じゃ、次はウリ坊だな」

「近くには湧いてないみたいだよ」

「街道近くは人も多いから、すぐ倒されてるんじゃないかな」

「少し遠く行ってみっか」

「りょうかーい」


 拓篤さんの言葉に兄共々頷き、私は抜きっぱなしだった右手の剣を、手先で逆手に持ち直してカシンと鞘に収めた。


 あ。


 驚いた表情を浮かべた拓篤さんと、微笑ましいものを見る様な笑みを浮かべる兄、2人の視線が私に突き刺さる。


「……なんだ今の動き」

「……」

「お、おい! 感情エフェクト振り切れてないか!? 顔真っ赤だぞ!!」


「うるさい! ついやっちゃったんだから仕方ないでしょ!」


 えぇい! オプションは何処だ!? 感情エフェクト切ってやる!


「なんか動きに淀みも無いしえらい様にもなってたし、ついやっちゃう程ってどんなだよ……」

「メグルはロールプレイ大好きだし、それにとある病気の気もあるからね。VRゲームでやってたんじゃないかな」

「ぇ、メグルちゃん患ってんの? 俺が越す前そんな感じまったくなかったぞ」

「VRゲームにはまり込んでから悪化した」

「あぁ……VRはガチで自分が主人公だもんな……」

「いいじゃん格好付けたって! ゲーム楽しんでる証拠ですぅ!!」


 うわ、二人して苦笑いされた。

 いいじゃんか、ゲームなんだから普段じゃ痛々しい事したってさー。


「いやまぁ、メグルちゃんぐらいのはまだいいよ、うん」

「そんな視線そらして苦笑いされたフォローいらんです」

「いやマジで。WAOにもロールプレイヤーいるけどさ、事あるごとに地が出てネタ扱いだし」

「有名なのは、ゴツい巨漢アバターの黄色い悲鳴があるよね」

「それは中々のギャップで……」


 VRはPCと違ってチャットじゃないからなぁ。

 口から出た言葉がそのまま相手にいっちゃうから、ロールプレイは難しそう。


「まぁ、だからメグルちゃんぐらいの格好付けは悪くないって。……つか普通にいいな。俺も何か考え様かな」


 最後にそう呟き思案に没頭し始める拓篤さんを見て思い出す。そういえばこの人も病気持ちだった。


 それを見て、兄もやれやれといった感じに肩を竦めてから私に向く。


「そういえばリザルトで何か手に入ったかい?」

「ん? あ、忘れてた」


 WAOの戦闘は敵を倒したら終わりというものでは無く、武器をしまってプレイヤーが警戒を解いたと認識した時に、プレイヤーの前にリザルトウインドウが表示される。


 私も剣を鞘に収めた際に出たのだけど、オプション開くのに退けちゃったから戻さないと。


「……何してるの?」

「思いっきりウインドウ退けちゃってて……」


 視界的に遥か彼方にあるウインドウを手繰り寄せようと、唐突に宙を掻き始めた私。


 スルスルとウインドウが手元に戻ったので内容を読んでみる。


「【白兎の足】だって」

「ぉ、いきなりいいのが出たね。報酬金の高いギルドクエストの収集品だよ。初期資金には丁度いいね」

「幸先いいね。ウリ坊は何がでるかな」

「ウリ坊は特にレアはなかったかなぁ」

「こう十字に切ってから背に……いや大剣じゃキツイか……」

「ほらタク、先行くぞ!」

「お? あぁわりっ。つかいい加減アバター名で読んでくれない?」


 ……リアルな知り合いだと、ついあるよね

予告。ウリ坊さん戦ダイジェスト。

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