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なんて身も蓋もない...

収集つかなくて文字数が。

 アインツの言葉に辟易しつつ、私はアバターに関する設定ウィンドウを全て完了にしていく。


≪以上の設定でアバター設定を終了し、反映させます。よろしいですか?≫


 最後にポップした応否ウィンドウを承認。また私は泡に包まれた。

 これで私の見た目は、先程の鏡アバターと同じになっているはずだ。


「どう、かな?」


 思わず横にいるアインツに尋ねてしまう。


 容貌や体型は弄っていないので、まるで無機質な人形が動いている様にはなっていないと思うけど、やっぱり気になる所だ。


「大丈夫、素敵ですよ」

「……ありがと」


 聞いたのは私だけど、そう真っ直ぐに言われると流石に小っ恥ずかしい。


 頬を指先で弱く掻きながら次にポップしたウィンドウを見て、私は小さな声を出してしまう。


「あ」

「どうしました?」


 ウィンドウには、名前を入力する欄が点滅していた。そういえば、結局名前を全然考えてなかった。


「シキは“四季メグル”を推しているみたいですが」

「なんでそれを知って……」

「今wisで聞きました」

「リアルタイムでwisするの辞めてくれませんかね!」


 私の様子を随一、兄に実況でもしてると言うのか。


「良い名前だと思いますが」

「や、でもメグルは本名だし……」

「問題無いかと」

「えぇー……」


 アインツもその名前を推してくるのか。

 渋る私に、アインツは「そうだ」と手を叩く。


「なら、四季をドイツ語にしますか?」


 何が“なら”なのかわからないし、何故にドイツ語。


「私の名前がドイツ語の1なので。お揃いですよ」


 ニコニコと言うアインツに、私は頭を抱えた。

 お揃いって、このAIの思考回路が謎い。せっかくだから聞いてみるけどさ。


「vier Jahreszeitenです。定冠詞を付けるなら、die vier Jahreszeitenですね」

「ごめん、もっと片言に言ってもらえる?」


 そんな素晴らしい発音されても、私のリスニング力じゃ全く聞き取れません。辛うじてで、頭の部分だけしか理解できなかった。


「フィア、ヤーレスツァイテン、です」

「流石にそれは長くない?」


 それに、あまり名前っぽくない気もする。


「では、四季メグルで」

「そこに戻るのかー……」


 なんからここまで推されると、もういいかって気分になってしまい、私は入力欄に“四季メグル”と入力した。


 大丈夫、大丈夫だよ。本名だなんて思われない、はず。それに、無理に違う名前にしようとしたら、後々後悔する名前にしてしまいそうだ。

 まぁ、本名も後悔しそうだけど、後悔の方向性が違うし。


「改めて初めましてですね、四季メグル」

「四季かメグルって呼んで……」

「ではメグルと呼びますね」


 いい笑顔を浮かべやがって。フルネーム呼びとか、嫌がらせか。


「シキも喜んでるみたいですよ」

「だからwisするなっての!!」


 ここからの設定がゲームとして一番重要だと言うのに、どうしてこんな注意力散漫で疲れきった状態でやらなければいけないのか。


「後は初期アビリティ設定のみですね」

「そうだね。これでやっと終わるよ」


 深い深いため息が出てしまうのは、ごく自然だと思う。


「アビリティ効果の説明は出ますが、理解できない事があったら是非聞いてくださいね」

「その時は頼るよ」


 疑問質問を運営に聞くぐらいなら、そこまで躊躇いはない。ノータイムで応答がくるという、その点に目を瞑ればだけど。


 ウィンドウが展開されで、ズラリと一覧が表示される。手前にポップした小さなウィンドウには、空欄が計10個。これがアビリティ欄で、一覧から選択したアビリティぐ収まっていくのだろう。


 さて、どうしようか。

 と言うのも、wikiに驚くほど情報が出てこず、アビリティ構成を考えられる情報がまともに集まっていないのだ。


 情報がでない理由としては、兄曰く“アビリティの組み合わせしだいで、新たなアビリティに派生するから皆自分のアビリティを秘匿しようとする”らしい。


 つまり、自分だけが見つけたアビリティを、自分だけで独占しようとしているわけだ。


 もちろんの事、情報を提供する人はいる。でもそれは、なんでもない普通のアビリティばかりで、近接戦闘するならこれ、魔法使うならこれ、みたいなテンプレ表だ。私が求めてる情報ではない。


 そんなこんなで私は、この一覧のアビリティをほぼ1から選択していく事となっている。

 我ながら、時間掛かりそうな話です。


「……ねぇ、アインツ。これソート機能とかないの?」


 一覧と睨めっこを開始しようとして気付く。アビリティの量に対してそういった機能が全くなく、アビリティの大まかな種類別にもなっていない。


「その様な量になる事は滅多にないので、付けていないのですよ」

「どゆこと? 初期アビリティってランダムで量が変わるの?」

「いえ、メグルの初期ステータスのDEXとAGIが高めなので、それに伴って生産系のアビリティが増えているようですね。戦闘系は他の方とほぼ変わりないですよ」


 そういえば、初期アビリティに関しては公式サイトで説明があったけど、ステータスに関しては何もなかったっけ。


「その初期ステってランダム決定?」


 もしランダムで、生産向けのステになってるなら、非常にラッキーな話ではある。


「いえ、ランダムではなく、初期設定の時の調整でDEXとAGIは決まります。現在より動きが鈍くなってしまっては、ゲームとして元も子もないですからね」


 よかった。

 正直にいいますと、アインツがなにか色を付けたのでは無いかと思ってました。でもそんな事なかった。仕様で私のステが高くなっただけだ。

 物凄く安心しました。


「残りのステータスは、選択した初期アビリティで決定ですね」

「そういう仕様だったんだ。知らなかったや」

「昨日の夜頃にQ&Aコーナーに載せましたからね。知らなくても仕方ないかと」


 あ、やっぱり初期ステの質問あったんだ。


「とは言え、流石にこれは多いですね。大まかな種類に分けてしまいましょうか」

「あ、武器系アビリティの〈剣〉以外と防具系アビリティは除けてもらえる?」

「防具系アビリティはとらないのですか?」

「どんな装備にするか決めてないからね」


 それに防具系アビリティは、気付いたら習得アビリティ欄に有った事が一番多いって話だ。かわりに〈回避〉か〈受け〉を選択する予定だから問題はないと思う。


 武器は〈剣〉を選択。使い慣れたと言うと変な話だけど、VRゲームの殆どを片手剣でプレイしていたから、それなりに扱えると思っての選択。


「これで大分見やすいかと」

「おぉ、凄いスッキリした」


 アインツの発光が収まると、一旦消えていた一覧のウィンドウが再ポップ。そこには各種別に別けられ、綺麗に整頓されたアビリティ一覧があった。


 とりあえず、一つポツンとある〈剣〉アビリティをタップして指定状態にし、フリックして選択欄に移動させておく。


「詳細は見ないのですか?」


 アビリティ詳細を表示しない私に、アインツが不思議そうな表情を浮かべていた。


「〈剣〉ぐらいは流石に情報出てたからね」


 ちなみに、指定状態のを更にタップすれば詳細は表示される。


 さて次は、防御関係のアビリティが欲しい所だけど、まずはどんなアビリティがあるか見てみようか。


 何があるのかなーと、内心ワクワクしながら一覧をスクロールしていた私は、選択できるアビリティを見てなんとも言えない気持ちになった。


「……防御関係のアビリティは増えてないのかな?」


「いえ、1個増えますよ」


「1個増えてて2個しかないの……」


 そこに表示されたアビリティは〈受け〉と〈回避〉の2個だけだった。

 てか、増えてなかったら1個だけしかなかったんかい。


「ちなみに増えたのはどっち?」

「〈回避〉ですね。AGIが高い為です」

「AGIが低いと〈受け〉しか選択できないんだ」

「鈍い方が〈回避〉を選択しても意味ないですからね」

「なんて身も蓋もない……」


 サラッと毒吐きおったよ、このAI。


 うーん、この2個からなら、盾を持つつもりだし〈受け〉を選ぼうかな。回避の方はプレイしているうちに修得してる事を願おう。


 とりあえず、最低限だけど戦闘ができるアビリティは取った。残りの8枠は趣味で埋める。


 まずは採取だけど、なにこれ。


「……ちょっと、アインツ。これ小分けし過ぎじゃないの?」


 〈採取〉〈薬草採取〉〈毒草採取〉〈霊草採取〉〈魔草採取〉est。...


 〈採掘〉〈鉄採掘〉〈銅採掘〉〈銀採掘〉〈金採掘〉〈魔鉱石採掘〉est...


 〈解体〉〈狼解体〉〈鳥類解体〉〈軟体解体〉〈鱗解体〉〈無機物解体〉est...


「それはですね、三人のとあるスタッフが熱弁した結果です」


 聞くに、採取の時に求めている物と違うアイテムしか出ないのは非常にストレスが溜まるから、特定のアイテム採取に特化したアビリティを作るべきだ、と熱弁したらしい。


 狩ゲーとかで心当たりがある経験だけに、下手に突っ込みが入れられない。


「でもさ、MMOの採取とかって、決まった場所で決まった物が採取できない?採取物がランダム拾得って早々無いよね?」

「そうですね。なにより、WAOの採取は拘って作られてますから、採取ポイントを作ってそこからランダム、といった様には作られていませんよ」

「じゃぁ、アビリティの意味ないんじゃ?」

「いえ、そんな事はないですよ。〈採取〉のアビリティの効果は“アビリティレベルによって、拾得数がランダムで増える”ですが、特化採取アビリティはランダム要素を無くしているので、全くの無意味にはなっていませんよ。他の物を採取するとなると無意味ですが」

「なるほど」


 満遍なく採取していきたいし、特化のアビリティは必要ないかな。


「特化系のアビリティも除けてもらえるかな?」

「わかりました」


 アインツの髪が発光すると、さらにアビリティ欄がスッキリなっていた。

 いやぁ、このAI便利ですわ。


「殆ど特化系だったんだ」

「効果の高いアビリティは、ステータスだけではなく特定のアビリティレベルも必要ですからね」


 まぁ、普通そうですよね。

 初期ステータスが高いって聞いて、ちょっと自惚れてました。


「とりあえず〈採取〉を選択してと」


 〈採取〉を枠に移動させる。

 〈採取〉は、ポーションの製作に使う植物関係の採取に効果があるアビリティだ。


 MMOの草抜きアビリティって、なんか好きなんだよね。レベル上げ中に見つけると、思わずブチブチ抜いてしまう。


「ポーションの生産をするのですか?」

「うん。ポーションの生産アビリティって〈調合〉だよね」

「特化しないのであれば〈調合〉であっていますよ」

「じゃぁ、それを取ってと……。採取ポイントを見つける探検アビリティってあったよね?」

「それはおそらく〈探索〉の事ですね。一覧のもう少し下にありますよ」

「〈探索〉だったか。採取アイテムの詳細見れるのって〈鑑定〉と〈識別〉、どっちだっけ?」

「〈識別〉です。〈鑑定〉はドロップした装備品の詳細を見るものですよ」


 〈調合〉と〈探索〉に〈識別〉のアビリティを枠に移動して、これで残りの枠は4個となった。


 趣味で選ぶのは変わらないけど、前持って考えていたのはここまで。ここからは完全にノープラン。


 今一度、私のプレイスタイルを思い描いてみるとしよう。


 私のMMOのプレイスタイルは、好きな事を好きに遊ぶだ。


 壁役や火力役や回復役といった、役割りがはっきりした構成にはしないで、やって見たい事をやっている。


 まぁ、器用貧乏になるのは当然なわけで、パーティに参加し難くなってソロ行動が自然と多い。本人が楽しんでるからいいんだけどね。


 今回は兄がいるからパーティを組む事はありそうだけど、やっぱり基本ソロになるだろう。となると、ソロ行動を前提に考えた方が良さそうだ。


 MMOの体験は参考にしない方がいいかな。VRじゃないから勝手が全く違うし。参考にするなら、まだオフゲのVRゲームのが当てになりそう。


 仲間がいなくて主人公一人で戦うVRゲームって、どんなのあったっけ。


 幾つかのゲームを思い出して、プレイしていた時の事を思い出していく。


「……」


 思い出すと、結構苦い体験がでてくるな。

 見つかったら一発アウトの侵入クエストとか、暗がりや背後からの不意打ちだとか、多人数に囲まれてのリンチだとか、武器が届かない空中からの攻撃だとか、物理耐性の敵に数時間かけたとか、無駄に凝った状態異常の症状とか。

 思い出してゲンナリしてきた。


 とりあえず、真っ先に思いつくのは敵を見つけるアビリティか。

 採取中に襲われても困るし、妥当なところかな。


「アインツ、敵を見つけるアビリティってある?」

「ありますが、初期選択には出ていないですよ」

「まじでか。ぇーぁー……なら、敵から見つからない様にするのは?」

「〈潜伏〉がありますね」


 アインツに言われたアビリティを一覧から探し出し、詳細を表示する。


 《物影に隠れて敵の視界から逃れる時、発見され難くなる。発見されている場合、一度見失わせる必要がある。動くと効果は乗らない。》


「これさ、採取とかの動きも駄目?」

「はい。完全に停止状態である必要があります」


 最悪、採取中に襲われなければいいやと思ってたんだけど、ちょっとでも動いてたら駄目らしい。


「上位アビリティに上がらないとないのかな...」


 アビリティレベルが上がれば上位アビリティに変わるらしいけど、上位アビリティの情報無いって言っていいぐらい、出てないんだよね。


「そうですね。〈潜伏〉のレベルが上がって〈隠蔽〉や〈隠密〉になれば、採取しても平気になりますよ」


 やってしまった!!


「アインツ……今のは質問じゃないから答えなくてよかったんだよ?」


「そうでしたか。余計な事でしたね」


 まったくもってその通りですね‼︎

 どうしよう、このアビリティを選択し辛くなった。なんてことを言ってくれたのでしょう。


 とりあえず保留にして、他のアビリティも考えよう。すっかり忘れてた魔法とか、見るものは沢山ある。


「……これさー、除かれてないって事は特化関係じゃないよね?」

「違いますよ」

「〈魔法〉としか書かれてないアビリティの他に〈火属性〉やら〈水属性〉やらあるんだけど……」

「何か変ですか?」

「普通、火属性魔法とか水属性魔法とかじゃないの?」

「WAOでは、魔法を使うには〈魔法〉アビリティが必要で、属性魔法を使うには各属性のアビリティが必要となってますよ」

「じゃぁ、属性だけだと...」

「魔法は使えません」


 属性魔法使うには、最低2個のアビリティ枠必要とかきつ過ぎる!!

 残りのアビリティ枠4個なんですけど。魔法使おうとしたら2個になるんですけど。


「メグルはWAOの世界を、どう冒険する予定なのですか?」


 頭を抱えて残りのアビリティに悩む私を見かねたのか、アインツがそう聞いてきた。


 優柔不断だと思われたかなと情けなく思いながら振り返り、アインツの真剣な表情に少し驚く。


 あまりにも真剣で、なんだか軽い気持ちで答え難い。


「どう冒険するか……好きな事を好きに楽しみたい、かな」

「シキと共にですか?」

「うーん……一緒に行動する事はあるだろうけど、やっぱ基本は一人でかな」

「なるほど。では、その冒険に役立つアビリティを紹介しましょうか?」

「それは……」

「プレイスタイルの絞り込みソートの様なものです」


 物凄く魅力的な提案に、すぐに拒否できなかった。

 なにより、時間をかけ過ぎていているのに、未だに全てのアビリティ枠が決まっていないからだ。兄を待たせているというのに。


 私は逡巡して、ひとつ条件を付けてもらう事にした。


「……お願い。だけど、どうして紹介したかは言わないで。詳細をみて私が判断したい」


 紹介してもらうというのに、私は自分勝手なお願いをアインツに言う。


 アインツはそれを聞いて、むしろ嬉しそうな笑みを浮かべて頷き、その髪を発光させる。


 そして、一つのウィンドウが私の前にポップし、私を目を通していく。

 そこには13個のアビリティが表示されていた。


 〈剣術〉〈跳躍〉〈疾駆〉〈潜伏〉〈感知〉〈解体〉〈抽出〉〈採取学〉〈調合学〉〈魔力強化〉〈魔力回復強化〉〈スタミナ最大値強化〉〈スタミナ回復強化〉


 以上の13個。

 アインツに頼んでソートして貰っても10個以上もあるなんて、私だけで考えてたらどんなに掛かったのか。


 とりあえず、名前と詳細を知っていて、必要と思わないアビリティを除外していく。


 〈疾駆〉〈潜伏〉〈感知〉〈解体〉〈抽出〉〈採取学〉〈調合学〉


 真っ先に気になるのは〈採取学〉と〈調合学〉だ。


 《採取の方法に関する知識があるか表すアビリティ。レベルが高いほど、高品質なアイテムが採取できる》


 〈採取学〉アビリティの詳細がこれ。“採取”の部分が調合に変わったのが〈調合学〉の詳細だった。


 改めて〈採取〉アビリティの詳細を確認する。


 《採取の手際を表すアビリティ。レベルが高いほど、数多くのアイテムが採取でき、品質の劣化を防ぐ事ができる》


 うーん...学が無いと高品質なアイテムにならないのかな。でも、レベルが上がれば品質は落ちないみたいだし、趣味での生産なら十分か。

 その二つを除けてと、


 〈疾駆〉〈潜伏〉〈感知〉〈解体〉〈抽出〉


 後ろ二つの〈解体〉と〈抽出〉は生産系だと思うし、先に前の三つ───〈潜伏〉はいいや、〈疾駆〉と〈感知〉の詳細を表示させる。


 《走る事に補正が掛かるアビリティ。レベルが高いほど速度があがり、スタミナの消費が減る》


 《危機に敏感になるアビリティ。敵にターゲット指定された時に感知する。感度や敵の位置の把握はレベルにとステータスに依存する》


 思わずウィンドウを両手で鷲掴みしようとしてつんのめった。


 これ! この〈感知〉アビリティ! こういうの求めてた!!


 迷わず〈感知〉をアビリティ枠に移動して、残りのアビリティ枠は3個だ。


 私は残った生産系アビリティの詳細を見ていく。


 《解体する手際を表すアビリティ。レベルが高いほど、数多くのドロップアイテムが手に入り、希少な物が出る》


 これも学がありそう。


 《至る為の一つのアビリティ。指定した物から指定した物を、魔力を使い抽出する。指定する物によって、消費魔力が変わる。レベルによって消費魔力が軽減される》


 なにこれ。なんだか、これだけ毛色が違う。


 今まで見てきたアビリティって、ちゃんと使い方がはっきりした詳細だったけど、この〈抽出〉アビリティは漠然としてる。


 指定した物から指定した物って、指定は何にでも出来るのだろうか。

 それに一番気になるのが、“至る為の一つ”。つまり、他にもあるんだよね。


 思わずアインツを見てしまうが、アインツはニコニコと笑って何も言ってこない。いやまぁ、私が言うなって言ったけどさ。


 残りの枠は3個で、候補のアビリティは〈疾駆〉〈潜伏〉〈解体〉〈抽出〉の4個。


 選択したアビリティは〈剣〉〈受け〉〈採取〉〈調合〉〈探索〉〈識別〉〈感知〉の7個。


 うーん、〈感知〉した時、倒せない敵だったら逃げる様に〈疾駆〉取っておこうかな。


 それで後は〈潜伏〉〈解体〉〈抽出〉だけど、〈抽出〉が気になる。気になるから、取っちゃおうっと。


 となると、除けた〈魔力強化〉とかも有りになるんだけど、ステータス強化のアビリティは取りやすいって情報あったし、〈感知〉して〈疾駆〉逃げの〈潜伏〉コンボが出来る様に〈潜伏〉かな。


「決まった!!」

「それはよかった」

「アインツ、ありがと。かなり助かったよ」


 思えば、アインツがいなければ特化除去もできなかったんだ。更に時間が掛かったに違いない。


「気にしないでください。WAOの世界を楽しんで欲しいだけです」

「うん、楽しむよ、楽しむに決まってるじゃない」


 全てのアビリティ枠を埋めて、確認ウィンドウを承諾していく。これで設定しなければいけない事は全て終わった。


 目の前に表示された最終確認をすれば、カウント後に私は転送される。


「アインツのアバターに会う事は、もう無いのかな……」

「残念な事に、このエリアまでですね」

「今更だけど、なんでここは平気なの?」

「GMの呼び出すサーバーだからですよ。GMコールをされて、転送されたら会えるかもしれませんね」

「流石にそこまでして会うのはきついかな……」

「さぁ私には気にせず、どうぞ始めてください」


 笑顔を浮かべて促すアインツに頷き、私は最終確認のウィンドウを承諾。視界にカウントが表示される。


「10秒……短いね」


 表示された秒数は10。

 わかってはいたけど、こんなに悠長に話す時間が無いとは思わなかった。

 でも、別れの挨拶をするには十分だし、とんでもない事にアインツは兄とブレンドだ。何かあれば兄経由で伝えられるだろう。できれば何もないといいをだけど。


「それじゃ、楽しんでくるよ」

「新たに世界を描く者、四季メグルに良き旅があらんことを」


 私とアインツは、お互いに笑顔を浮かべたままカウントが0となり、エリア一面が泡に包まれ私の視界は暗転した。







 ◇◇◇





「……彼が気に掛けるのも頷けます。既存の調整システムでは対応できない実に特殊なケース、今後の参考になりそうです。」

初期選択スキル

〈剣〉〈受け〉〈疾駆〉〈潜伏〉〈感知〉〈探索〉〈識別〉〈採取〉〈調合〉〈抽出〉

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