ストロボハイウェイ
初めてのロボットが誕生したとき、誰かが言った。
「すばらしい! これこそ科学の発展の賜物だ!」
ロボットが人々の隣に初めて現れたとき、誰かが言った。
「すばらしい! これこそ人類の進歩の賜物だ!」
そして、ロボットの数が世界の人口と変わらなくなったとき、誰かが言った。
「スバラシイ! コレコソ我々ノ成長ノ賜物ダ!」
私が初めてこの街を訪れた時には、もうすでにここはロボット達の街と化していた。
道路もお店も何もかも、もう人の姿はどこにもない。たぶん今ここにいる私が、最後だった。
ロボット達の群れをかき分け、今日も私は一人で迷子になる。
標識が多すぎるのがいけない。これでは何が何だかさっぱり分からない。
建物が多すぎるのがいけない。これではどこがどこだかさっぱり分からない。
ロボットが多すぎるのがいけない。彼らは優しすぎる。
道行く私にロボット達は声をかける。「そんなに慌てて何処へ行くの。一緒にご飯を食べましょう」
そんな時に、私はどうしようもなく悲しくなるのだ。
どうしようもない私は今日もただひたすらに街を歩きまわる。
どうしようもなくて迷子になっている誰かを見つけるために。
縦に積まれたブラウン管テレビ。店の店頭に並ぶ無数の画面には、カラフルな髪、小柄な体。テレビ画面の向こうには、今日も彼女達が座っていた。
あれから50年、何一つ変わることはない。この街のロボット達が夢を見ることもなかった。ただある一体を除いて。