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司◯遼太郎なら絶対書かない公衆便所の話

作者: パンター

坂の上の雲を見て司馬遼文体風のコメディにするつもりだったのに、文体が掴みきれなかったある意味失敗作ですいません。個々の文章は普通なのに積み重ねて重厚になる感じですね。そういう意味では池上正太郎氏のほうが個性的かな。とは言えこっちは時代小説だからなあ。

 公衆便所である。

 一体公衆とは何か?大衆とは何が違うのか?明確な区別が必要なのか。公共ではいけないのか?

 どうでもいいのである。誰が入ろうとそこは便所なのだから。

 何が言いたいのかといいうと、もよおしているのである。しかも大きい方。

 人間はこういう時に限ってどうでもいいことを考えてしまう。

 自分は公衆なんだろうか、大衆なんだろうか、それともピープォー。

 全くどうでもいいことである。もはや何が言いたいのか皆目不明な思考の迷宮に陥っていた。

 我慢が限界に達しようとしていた。忍耐力が限界に達しせき止めようとしている筋肉の緊張が今にも解けそうだった。

 それでたどり着いたのが公園前。ここには公衆便所があるはずである。

 下半身の感覚がなくなりつつあった。

 さっき食べたアレがまずかったのか?それとも単に暴飲暴食の結果なのか?年末の忘年会リレーが続くこの数日はどれをとっても体にいい訳ないほど宴会漬けになっていた。

 それでこういう結果になったとしても誰かを責められるわけでもなかった。

 自業自得と第三者から非難を受けてもあえて否定できない立ち位置にいる。それは社会の歯車となっている組織人の宿命であり、普段の自分の財布の金では絶対注文できないどんなに美味なるものも、3日続けばただの排泄物の前身に過ぎない、と悟ってしまうまったく恐ろしい時期であった。

 ともあれ、公園の中に入っていかなければ。

 見た目非常に無様な内股すり足走法である。しかしこれ以外の選択肢はなかった。いつ決壊してもおかしくない危険な状態であったのだ。

 確かこの先の噴水のある広場の奥にあるはずだった。

 いつもならこの広場には師走の寒さをもろともしないカップルが少なくとも一組ぐらいは逢引をしているはずなのだが、今日は誰もいなかった。まあ、クリスマスが近いのだから今こんな所で逢引する必要もないのである。

 あった。

 ゆっくり近づいてゆく。

 男性用に入る。そして個室へ。


 そこはある意味地獄であった。

 どうしても便器に辿りつけなかった。その周囲がすでに戦場であったからだ。累々とうず高く異臭を放つ小山を幾つか踏みつけなければ便器をまたいでしゃがめなかったのである。

 どうしてこうなった?と言うより掃除をいつしたんだ?というか掃除してないのか?

 しかし決断は即時にしなければならない状況だった。

 人生に全体ではどうでもいいことでも、その局所的日常で人間は取捨選択しなければならない決断がある。

 もう時間が迫っていた。強固な城門をも突き崩す一撃が迫っていたのである。


 終わった。それは虚しさという喪失感だった。

 人として、成人としての最低限の誇りは失わずに済んだ結果となった。

 しかし、やりきれなさだけは今夜一晩中まとわりついてくるであろう。

 被害は恐らく最小限であるといえる。

 まさか、便器の中に流されないままミイラ化したマッターホルンが聳えていたとは。

 さらに悲劇だったのは紙がなかったことである。そういえばポケットティッシュを昨日使い切らしていたのだ。

 その結果、おろしたてのブランド物のハンカチが犠牲となったのである。

 二日前に買ったばかりの革靴、そしてハンカチ。

 些細といえばそれまでの事である。些事な出来事と言えるであろう。

 しかし、もう二度と公園の公衆トイレは使うべきではない、という短絡的なしばりが脳内に構築された夜であった。

 これが世界の歴史に些かの影響を与えたという記録はない。

 

歴史小説風のコメディの習作にするつもりだったが、ちゃんと読まないとだめだなあ。

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