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Proto:断絶から繋がるこの世界の生命  作者: 兎豚猫
第一章 『恐怖の到来』
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第一章10 『死に値しない』

 鎖の轟音が止んだ後、見えたのは血に染まり滴る鎖の先端であり、その先を追えばディーゼルの胴体にたどり着く。胴体は斜めに切り裂かれていた。

 その斬撃は左腕を肩から切り落とし、胸と腹は深く裂かれて肋骨が露わになり、巨大な傷口から内臓が溢れ出していた。

 口からは泡立った血が流れ、紅い瞳から光が消えると、彼はクロードのほぼ首なし死体の横に崩れ落ちた。


 まるで敬意の儀式を捧げるかのように、彼女は掌に食い込んだ鎖を回収し、それを手首へと引きずって、意図的に切り裂いた。倒れた賞金稼ぎたちの上にそれを掲げ、血が滴り落ちるままにした。

 唇を噛みしめながら、彼女は自らに与えた傷に、再び頬を赤らめた。


「ああ、そう。気持ちいい、すごく気持ちいい。お前らも気持ちいいだろう? 神の血が滴り落ちる感覚が、そうだろう?」


 彼女は残酷な陶酔の口調でそう言い、赤い唇を舐めながら棘の武器を握りしめた。

 鎖を大きく弧を描いて振り回し、血を振り払うと、残った者たちへと視線を向けた。


 言葉も出ないほど弱り果てたヒナタは地面に横たわり、今まさに起きた残忍な虐殺をただ見ているしかなかった。

 命がこんなにも簡単に終わるなんて、彼女は考えたこともなかった。ついさっきまで何も問題なかったのだから。皆と普通に会話を交わし、あの小さな女の子を普通に抱きしめていた。それでもこの女に潜む危険信号に、最後の瞬間まで気づけなかったのだ。


「―――」



「おや?救いを求めているのか?慈悲でも望むのか?」



 マデリンは脚を伸ばすと胸を掻きむしり、歯を食いしばった。顔に飛び散った血を拭いながら、青い瞳を睨みつけるその眼差しには、憎悪が渦巻いていた。



「…殺してやる。絶対に殺してやる。神に誓って、殺してやる」


 その瞬間のマデリンの声は、彼女の表情と全身を駆け巡るあらゆる感情を伝えた――背後に立つヒナタには見えないものさえも。しかしその声だけで、ヒナタは眼前に立つマデリンの姿を完璧に思い描けた。

 憎悪に満ちた声、この部屋に渦巻く怒りの真髄は、彼女自身だった。


「私を無駄に利用するなんて許せない。ましてや脅すなんて。私の提案を本当に拒むのか?」


「どうでもいいわ。お前の神様気取りも、サディスティックな戯言もクソくらえ。私にとって全てだった人々を殺したんだ——お前を道連れにするために死ぬ必要があるなら、喜んでそうするわ、このクソ女!」


 ああ、この侮辱は決して忘れはしない。神のような私が、お前の罪を罰してやるのだ。


 意志と怒りだけを頼りに女と対峙する彼女に、勝つ見込みなどなかった――一撃すら与えられない。それでも、ヒナタには理解できない理由で、マデリンは頬を平手打ちし、足を踏ん張り、避けられない運命に身構えた。


 たとえ命を救われても、助けるつもりなど微塵もなかった。死は彼女にとって何の得にもならず、死を恐れるがゆえに、これからも何もしないだろう。

 叫び声をあげて誰かを呼ぶこと、あるいは女性の気をそらすことさえ、彼女の頭には浮かばなかった。震える瞳の奥に浮かんだのは、ただ自分だけを守ることだけだった。だが、自分さえも守ることなど、到底叶うことではなかった。


「ナタ、俺、ここで死ぬかも。数時間しか知り合ってないのに、お前は結構イケてるな——特にあの汚い言葉遣いがな。だから頼むよ、逃げてくれ。お前が母親代わりをしてたあの子も連れてな」


「…ちくしょう…」


 そう呟くと、彼女は前方に静かに立つ女性へと再び顔を向けた。

 日向は先ほどの自分の考えを後悔せずにはいられなかった。マデリンは、日向が彼女を全く気にかけていない思いを抱いていたことなど知らずに、ただひたすらに自分の気持ちをさらけ出していたのだ。その瞬間、日向は血にまみれた青い髪の女性よりも、はるかに卑しい存在に感じられた。


 飛びかかるように前進し、まるで最初からそこにいなかったかのように視界から消えた。

 壁と天井を跳板に、それらを跳ね返るようにして、スリンキーがピンと張ったようにロラに真っ直ぐに飛びかかり、衝突しようとした。


 間一髪で攻撃をかわしたロラは、鎖を背後に這わせるように跳び退いた。

 マデリンの動きは超人的な技量で、アクロバティックなダンサーのように身体が流れる。ヒナタには想像もつかない角度で捻じれ、曲がりながら、ローラは次々と繰り出される攻撃を難なくかわし続けた。

 マデリンは最高速度で動き続け、下段蹴りとストレートパンチが空気を切り裂く。その勢いは重力が存在しないかのように壁から彼女を弾き飛ばした。その様子にローラさえ思わず微笑んだ。


「ああ、よくしなやかね。私が作った通りの姿だわ。自分の創造物に羨ましく思ってしまうのも仕方ないかもしれない」


 その言葉の後、再び鎖が軋む音が響いた。そしてまたしても、


「——グッ!」


 ――彼女はまた一人を鎖で絡め取った。


 とげがふくらはぎに食い込み、血を流した。ローラはクロードにしたのと同じことをマデリンにも行い、空中に放り投げた。何度も何度も地面に顔から叩きつけ、糸で操る人形のように残酷な弧を描いて投げ飛ばした。

 その顔は原型を留めていなかった。歯は失われ、かつて日向が知っていた可憐な少女の面影は消え失せていた。傷だらけの顔が日向の翡翠色の瞳に映り込み、彼女は横たわったまま吐き気を催した。


 マデリンの体は動かず、顔の下から広がる血の池。広がれば広がるほど光沢を失っていくそれは、彼女の命が尽きつつあることを告げていた。

 静かに、マデリンのふくらはぎに巻きついていた鎖の端が、まるで生き物のように滑るように離れ、ローラの手に戻っていった。


 それでも、ヒナタは動けなかった。

 彼女は無力だった。初めて、学び得ないものに出会ったのだ。

 言葉も出せず、戦うこともできず、自分だけを救いたいという自己中心的な考えを振り払うこともできない。一体、何ができるというのか?


「慈悲を求めるのか? ああ、何てことを…私はお前を殺すためにここに来た。苦労して作り上げたものを、自らの手で滅ぼすのは嫌だ。だが、それを成し遂げた時の陶酔感には抗えない。自らに刻んだ傷が疼く時の高揚感に」


 背筋を伸ばして座り直すと、彼女は壁に向かって後ずさりするしかなかった。


 彼女の声にはどこか傲慢さがにじみ、震えるヒナタを見つめながらずっと笑みを浮かべていた。自らの苦痛を思い浮かべ、頬を赤らめながら。

 彼女が立っている距離からでも、あの鎖が振り下ろされれば命の終わりを告げるだろう。それでも彼女はそこに立ち続け、いつでも命を奪えることを知りながらヒナタを睨み続けた。

 なぜ、この女はそこまで狂っているのか?


 ――逃げなければ。


 周囲の者たちがこの忌まわしい女の手で次々と死んでいくのを見て、パンティに尿を漏らし、激しく歯を震わせて舌を噛みながら、彼女は獣のように立ち上がった。

 恐怖だけが全身を駆け巡っていた。勝てない戦いだ。戦うつもりなどなかった。

 だから、彼女は体をドアの方へ向け——


「...ヒナタさん?」


 壊れ散らかったテーブルの近く、開けた場所に立っていたのは、チューリップと呼ばれる緑髪の少女だった。

 指を絡め、唇を震わせ涙を浮かべて、彼女はサディスティックな女性の背後に立っていた。目覚めた時に見た光景が、この涙と恐怖を引き起こしていたのだ。


「おや?」


 体をひねり、ローラは背後に怯えてうずくまる少女を見下ろした。


「待って…やめて…お願い…」


 ヒナタは、この状況で何かできるかのように、遠くから手を伸ばした。その哀願に応えるように、ローラはニヤリと笑い、再び鎖を手に握りしめた。

 少女を救う方法など彼女にはわからなかった。ただ、奇跡的に助かるわずかな可能性を願いながら泣くことしかできなかった。

 ——そのわずかな可能性は、確かに訪れなかった。


「これはまずい、もう一人も一緒か」


 手を伸ばし、少女の髪を掴むと、トロフィーのように高く掲げた。

 甲高い悲鳴を上げ、もがきながら、チューリップは必死に逃れようと激しく身もだえた。


「——ギャアアアッ!!」


「やめて…やめて、お願い!」


 ヒナタの息は震え、叫ぶたびに唾が飛んだ。ローラは隣と前方の二人の少女の悲鳴を面白がっており、これから犯そうとしている行為に何の躊躇も見せなかった。

 心臓が激しく鼓動する中、ヒナタの視線はドアとチューリップを繰り返し往復していた。少女の命を救う方法が分からず、救えないことも分かっていた。

 それは不可能な任務だった。彼女に課せられた究極の重圧だった。


「お前を必ず生まれ変わらせてやる、私の愛しき創造物よ」


 彼女はそう言いながら恍惚とした目つきで、まるでこの世の神であるかのように確信しているようだった。口ではそう言いながらも、命を奪うことなど彼女にとって何の意味もなかった。

 自らに苦痛を与えることに快感を覚え、他者に苦痛を与えることに喜びを見出す、実に病的な女だった。


 しかしその言葉を口にした後、高く掲げられた少女の哀願や悲鳴はもはや聞こえなかった。


「——ク、キャアアア」


 その瞬間、チューリップスの首は女に折られ、まるで布人形のように地面へ投げ飛ばされた。

 完全に空っぽになった感覚。自分が連れてこられた場所が、まさに地獄だと悟った瞬間、思考が激しく衝突し合った。


「ええ、いよいよあなたの番よ。私がわざわざ足を運んだ相手、そう、今こそあなたの番なの」


 ローラはゆっくりとヒナタに近づき、鎖を背中に這わせながら、ただ膝をついて座った。

 その声は鼓膜を直接打ちつけるように響いた――穏やかで、苛立たせ、欲情に満ち、そして悲嘆に暮れた声だった。

 ヒナタは身体の制御を完全に失っていた。あらゆる体液が彼女を裏切り、心臓は胸から飛び出さんばかりに激しく鼓動していた。怒り、苦しみ、悲しみが一つに溶け合い、圧倒的な感情へと変貌した。それは彼女が確かに認識しながらも、名づけることさえできない感情だった。


 死への圧倒的な恐怖にもかかわらず、彼女はそこから逃げ出すことができなかった。死に身を委ねたいのか? 続ける理由——称賛されたいという渇望——がまだ残っているにもかかわらず、あまりにも簡単に諦めてしまったからか? それは怠惰なのか?


 そうだ。その全てだった。


 そして今、理解もせずに引きずり込まれたこの世界で、価値あることを何も成し遂げられないまま死ぬ運命にある彼女は、恐怖と、生涯無視し続けてきた自らの欠点に支配され、ただ立ち尽くしていた。


 ——殺して?殺して!殺して?殺して!殺して?殺して!死にたくない!殺して?死にたくない!殺す?殺せ!殺す?殺せ! 殺す?殺せ!死にたくない! 殺す? 死にたくない! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 死にたくない! 殺す? 死にたくない! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 死にたくない! 殺す? 死にたくない! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺す?殺せ! 殺 殺す?殺して!殺す?殺して!死にたくない!殺す?死にたくない!殺す?殺して!殺す?殺して!殺す?殺して!殺す?殺して!死にたくない!殺す?死にたくない!殺す?殺して!殺す?殺して!殺す?殺して!殺す?殺して!死にたくない!殺す?死にたくない!俺は死に値しないのか?いや、値する。だが今の俺の命に価値はないのか?俺は獲物で彼女は捕食者か?狩られるのが嫌だ、狩られるのが嫌だ、生死の手で弄ばれているのか?生死に弄ばれるに値するのか?


 くそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそ くそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそ


 女、ローラは今やその場にたどり着き、日向の頭上にそびえ立っていた。

 日向はゆっくりと顔を上げ、涙に濡れた顔を露わにした。それに対しローラはただ微笑み、囁いた。


「汝は再び生まれ変わる。我が意志によって。」


 その時、彼女は血まみれの手を自分の首へと伸ばした。指が触れる直前に、日向鈴は——

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