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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第8章
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【第82話:哨戒偵察を二人でします】

ティア5の外装強化パーツが一組しか無いので、二人で分け合った。

ジュノは腰と足パーツをもらい、ふくらはぎの圧縮空気だけでホバーやジャンプをこなす。

バランス取りがかなり難易度が高くなっていた。

ヴェスタは肩と背中にベクターノズルがあるので、かなり制御は楽だし出力もジュノ側より高い。

それでもジュノに着いていくのに苦労するヴェスタ。

「まってぇ、じゅのぉ!」

ヴェスタが遅れそうになると、ホバーで滑り待つジュノ。

振り返るのがなにげに高難易度なのだが、軽々と振り向くジュノ。

白い制服を来てきているので、膝丈のフレアスカートがふわりと回る。

「急がないし大丈夫!少し休憩しようかな?」

ジュノにとってはだいぶ緩いペースなのだが、ヴェスタにはきつそうだなと気付いた。

しゅんっと追い越したヴェスタを追いかけて機動を始めるジュノ。

軽々と並んで手を伸ばした。

ヴェスタもきづいて手を伸ばし繋ぐ。

こういった外装モジュールで機動するときは両手を伸ばしたほうが安定するが、いかにも初心者っぽいのでヴェスタはイヤがるのだ。

ジュノに手を引かれている状態は、教官に見てもらう訓練生の姿勢だ。

「手を伸ばしたほうが楽だよ?!わたししか見てないし!」

反対側の手も素直にのばすヴェスタ。

「うん!ごめん!」

それだけでもだいぶ安定する。

ジュノに導かれて、高い山頂付近に着陸する二人。

とんっと降りると、さすがにヴェスタは緊張がぬけてペタンと女の子座りになってしまう。

フレアスカートが汚れてしまうが、膝に力が入らず、立っていられなかったのだ。

「お疲れ様。がんばったよヴェスタ」

すぐそばに来たジュノを見上げるヴェスタ。

手足がぷるぷるして力が入らないのだった。

ジュノはピンとしていて、疲れは見せない。

(すごく足手まといだ私‥‥しょんぼりだわ)

眉を下げるヴェスタをふわっと背中から抱きしめるジュノ。

「気にしてるでしょ?‥‥わたしは一緒に来るって言ってもらえたの嬉しいよ!」

えへへと笑うジュノ。

「うん‥‥ありがとうジュノ‥‥」

ぷるぷる言いながらも立ち上がるヴェスタ。

ぎゅっとジュノの胸に抱きついて、力を抜いたヴェスタ。

ジュノも抱きしめて、ヴェスタを休ませた。

「これで200㎞くらい来たね。街まであと100㎞ないかも」

「うん‥‥もうちょっとだね、ガンバル」

ヴェスタも休めて、少し顔色がよくなった。

二人ともヘルメットをしていないので、顔が結構寒いのだった。

額からゴーグルだけ付け直し、しゅっと保護膜をゴーグルまであげる。

これで顔はかなりいいのだが、耳やおでこが出ているので寒いのだった。

しゅんっと圧縮空気を吹き出し、ジュノから飛び出す。

ヴェスタも両手を広げてバランスを取りながら先に飛び始めた。

地上30mくらいを時速にして300㎞以上でホバー移動する二人だった。




拠点から連なっているこの山脈は平均しても1500m程度の標高があり、延々と続いている。

斜面はかなりきついものなので、徒歩での登攀は無理と考え、山頂を連ねてトラバースしていく。

これなら現地の人間に見つからないだろうとの判断だ。

眼下に市街地が見える頃と思っていたら、ジュノがハンドサイン。

降りろだ。

しゅっと二人で山頂近くの広場に降りた。

「どうしたの?」

「‥‥うん。なんか焦げ臭い」

街まではまだ4-50㎞有るはずだが、今は海風が入っていてこちらが風下だ。

「鉱山だし‥‥石油でもでるのかな?」

「いや‥‥石油を掘るような文明じゃないよまだ。木が焦げる匂いと‥‥後はなにかわからないけど」

ジュノは不安そうにする。

「ヴェスタ‥‥嫌かもしれないけど‥‥ここからは一式外装が欲しい。抱っこしていくのじゃいや?」

ヴェスタの気持ちをおもんはかって、ジュノは提案せずに来たが、その方が遥かに負担が少なく高機動だ。

ヴェスタが荷物になるのを嫌がると想い、言わずに来たのだ。

「ジュノ‥‥ごめんね‥‥私抱っこしてもらうよ」

そういって眉を下げるヴェスタは外装パーツをパージする。

肩のパーツを受け取り、胴体部分のロックを外し万歳で脱がせるジュノ。

肩パーツは接続してすでに固定されていた。

ジュノの脱いだ白い制服を着込むヴェスタは、しょんぼり思う。

(私が無理についてきたのに‥‥お荷物だなんて‥‥)

うるっと来ていると、ぎゅっとジュノが抱きしめる。

「ヴェスタ‥‥いいの‥わたしの事心配してくれるのすごい嬉しいんだよ」

ぎゅうっと力を入れて抱くジュノ。

気持ちが伝わるといいなと思ったのだ。

はなれてニッコリと笑うと、上半身のパーツも付けていくジュノ。

ほほが赤くなったヴェスタはもじもじと嬉しそうにする。

(ジュノ‥‥うれしいな‥帰ったらいっぱい甘えたいな)

ヴェスタはすっかり女の子モードになるのだった。

フル装備を掌握したジュノはライフルも出し、右手に装備する。

左手でヴェスタを抱いて、首に掴まらせると、しゅんっと飛び立った。

一式のティア5装備の推力は、余裕をもって二人を飛行させた。

一気に10㎞ほど下り、大きめの尾根を越えると、そらが灰色に染まってきた。

ここまでくるとヴェスタにも焦げ臭さが解り、ジュノはさらに解像度高く察した。

「火災だね‥油も燃えた匂いがする‥‥肉の焦げる匂い‥‥相当被害も出ているようだよ」

「うん‥‥大丈夫?ジュノ私重くないかな?」

ジュノの首に抱きつくヴェスタは前抱っこでジュノに自分でも抱きつき、おしりを片手で支えてもらっている。

「ぜんぜん、重くないし、柔らかくて気持ちいいよ!」

「やぁん」

むにっとおしりを揉まれて、ヴェスタが悲鳴をあげる。

しゅっと再度ジャンプして高度を取ると、すぐに降下するジュノ。

「見えた‥‥‥‥これはひどいね」

ジュノが半身になってくれて、ヴェスタも少し振り向いて視認した。

「ま‥‥街が燃えている」

眼下の海岸まで続く市街地がまんべんなく燃えていた。

港は特に大きな煙がどんどん上がり、少し沖に燃えた船も浮いている。

街の東側で火の手が上がる。

ごうと立ち上る火柱は火炎旋風だろうか、3本程が赤黒くうねうねと動いている。

距離がありゆっくりに見えるが、現場は地獄だろうと想像できた。

「ジュノ‥‥こわいよ」

「うん‥‥さっきの火‥火薬じゃない‥‥あれは‥‥」

しゅっと移動を開始するジュノの言葉は、風に流れヴェスタには届かなかった。

届かなかったが、ヴェスタにもわかった。

(あれは魔法の火だった‥‥こないだのAIと同じ勢力?)

ジュノと同じ不安をヴェスタも持ったのだ。

現地の人間と違って、ヴェスタ達を越えるティアを持っているだろう敵勢力を恐れたのだ。

霊子波センサーならこの距離でも発見される可能性がある。

ジュノに運ばれながらも後ろを見続けるヴェスタに、いつまでもいがらっぽい空気がまとわりついた。






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