【第81話:せっせと働き初めました】
さくさくと採掘が進んでいる。
事前に重力波で正確に各鉱石の座標が解っているので、効率よい掘削経路が選ばれる。
マインビームによる掘削は、穴を開けつつ補強もするので、よほどのことがなければ崩れる心配もない。
「そういえば‥‥一度も地震はないね?」
「そうですね、感じられるほどのものは無いですね、震度1以下のものは割としょっちゅうありますよ?」
ヴェスタにアイカが答える。
今は拠点の下に階段堀りして地下20mほどに横穴を左右に広げている。
マイニングは主にマクラ達が担当する。
階段の横に掘られたスロープにはパイプラインが接続し、この地下採掘拠点から上の作業室に直行される。
上では仕分け機器が分けたものを、それぞれ精錬する作業をジュノがしている。
主に赤鉄鉱石が上がっているので、高温炉に放り込んでいると思われる。
時々銅や錫も交じるので、それらは低温の炉に行くだろう。
マインビームで採掘すると、粒子状になり取り出されるので、見た目は砂のようになる。
左右にある程度進めば、今度は前後にも一定距離を掘る。
これは行き戻りの距離が増えていくと効率が下がるので、また下に掘り進んで同じことをするのだ。
こうして一定の範囲を掘り下げていって、採掘していった。
ある程度間を開けて採掘するのは左右上下の接している部分に貴金属や、レアアースがないか気付ける掘り方とも言えた。
統計上ある程度の固まりになっているだろうと見越して、坑道と坑道の距離を開ける。
ジュノあたりは2マス掘りだねとか言っていた。
調査の結果を見る限りは、地下に行くほどレアアースや貴金属の可能性は増えるようだ。
マグマに行き当たらない限りは下に掘る予定だ。
予定では4日ほどで掘りきって、今度は左方面に少しずれていって、同じ掘り方をする予定だ。
「うん‥‥あとはマクラにまかせて大丈夫です」
一通り充電設備やホッパーやチェストと言われる採掘用の施設が整ったので、上に戻ろうとアイカが誘う。
アイカはもうマクラを動かすのはほとんど負荷にならないようで、走ったりも出来るようだ。
「はーい‥‥うんそろそろお昼ご飯だしね。もどろ」
半日で地下採掘拠点を設置しもどるアイカとヴェスタ。
明日の朝にはこのレイヤーを掘り終わるので、また時間をかけて下に進む予定だ。
「午後はひと当たり哨戒偵察してくるよ」
ジュノはずるずると麺をすすってから言う。
ふーふーとしてるタイミングに話すので、忙しそう。
アイカの作るご飯は汎銀河連邦風味で、とてもバリエーションが広い。
今日は手打ちの小麦麺を濃厚なスープでいただく拉麺だ。
細打ちの小麦麺はちゅるちゅると美味しそうな音でジュノの口に吸い込まれていく。
「アイちゃんを連れて行くし、夕方には戻るよ?」
ヴェスタがすぐ心配そうにするので、ジュノは困った顔で告げた。
「私も一緒にいく‥‥」
ヴェスタがそう言うだろうと想像していジュノ。
「わかった‥‥じゃあ二人でいこうね」
「うん!」
ヴェスタもニコと笑顔になる。
こないだジュノが捕らわれてひどい目に有ったのを、とても気にしているヴェスタは、単独で行動させたがらない。
拠点内とかは良いようだが、外にはアイカも含め一人で行かせない。
以前に比べると、それは効率も悪く、面倒ではあるのだが、ジュノはこころが暖かくなるのを感じた。
「じゃあアイカは引き続き拠点の整備と、時間が取れれば『式』の開発も進めますね」
アイカはティア6に上がれば、作れるものを次々設計している。
上がったら順次作成出来るように、図面をひいておくのだった。
「ナノマシンはどんな感じ?」
ジュノが麺を食べ終えて、スープまで平らげようとしながら問う。
「ジュノ、スープは全部飲んじゃダメですよ、しょっぱいです」
「えぇ‥‥なんか美味しくてやめらんない」
うんうんとヴェスタも同意している。
「おいしいと言われるのは嬉しいけど、塩分過多になるのでダメですよぉ‥‥NPは今のところ無駄遣いしなければ2日ほどで1000NPに届きます!」
確認してアイカも嬉しくなったのかにっこり笑った。
「うん、ありがとう。アイカのおかげだわ。これからも節約お願いね」
ヴェスタもアイカの働きに笑顔を向けねぎらった。
「どうゆう式になるの?飛べるタイプ?」
ジュノの質問はもちろん戦闘指揮官としてのもの。
「そうです、大気圏内では重力制御とエアロボディで飛びます。小口径ですが魔法のビームを撃ちます」
ぴぴっとデバイス操作するとテーブルの上に立体モデルが出る。
筒状の細長い物体。
直径は5cmほどで、長さは20cm程だろうか。
「缶コーヒー?」
「もうちょい長いかな?」
ジュノとヴェスタの一次評価はそうだった。
「ふふふ、これはアイカに装備する状態なのです。電力も使用するので時々もどして充電するのです」
ぱかんと白い缶コーヒーが前後に少しずれ、後方部分は4本のスリットが入り外に少し展開する。
前方からは中心にストローのような筒が伸びた。
後方のスリットからシャキッと短い朱色の翼が現れる。
デルタ翼と垂直にまた小さなデルタが上下に付く。
カラーリングはアイカカラーだ。
「おぉ‥‥飛びそうになった」
「飛びそう、じゃなく飛ぶのです!」
えっへんとアイカがすると、なぜかアイ達4人も机でえっへんとする可愛さ。
ジュノもヴェスタもほっこりして、偵察の緊張感が薄れた。
「これを2機作ります‥‥最終的には4機まで制御してみせます!」
ぱちぱちとジュノとヴェスタ。
アイ達はなぜか「みーみー」と万歳三唱している。
「まあ、これを戦闘で使わせないのが私の仕事ね」
ヴェスタはマジメな顔でうんうんとする。
「偵察以外はさせないで済ましたいね、アイ達がのるんでしょ?」
アイカもアイ達も不思議そうにする。
「式は本体と違って何度でも作れますよ?バックアップもあるし」
ちらと見交わすジュノとヴェスタはにっこり。
『それでもいや!』
ふふふと笑い合って「ねー」、とか言い合う仲良しの二人が出撃していく。
周囲の哨戒偵察にバディで出るのだ。
アイカ達はとまどいつつも、嫌な気持ちにはならなかった。
信頼してないのではなく、大事に思われているのだと解るから。




