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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第8章
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【閑話:成したいことがそこにある】

何処とも知れない漆黒の宇宙の果にさみしく漂う小惑星。

そこに一隻の戦闘艦がたどり着いた。

巨大なその船体は銀河中央連邦軍では巡洋艦に分類されるサイズだ。

大きなひし形にみえる銀色の船体。

滑らかな表面に武装は見えない。

表面の対ビームコーティングやレーザー反射フィールドを効率よく機能させるため、攻撃の瞬間だけ武装を出すのだ。

長辺は10000mを超え、短辺でも7000mはある。

高さは2000mはなく、薄っぺらくも見えた。

一つの大都市に匹敵するそのサイズは、連邦軍にもそう多くはない大きさだ。

民間では星系間を動いている大型タンカー類が該当するスケール。

小惑星はその船が小さな欠片に見える大きさで、歪な形の中央にあるくぼみが港になっている。

船は港からでているガイドビーコンに沿い、しずしずと入港していく。

比較して小さく見えたとして、巨大なその船のブリッジは上面にあり、くろがねの城のような形でそびえ立っていた。

高さは100mほどもあるが、船体の大きさに比してはただのディテールでしかないとも見えた。



城の上部にテラスのように張り出したガラス張りの部屋がある。

戦闘時には引き込まれる、上級船員のための憩いのテラスだった。

テラスにはまるで中世の城のような内装と、張り出した部分は庭園のように草花で整えられている。

空間を広く取り天井も高いのだが、そこに狭そうに立ち、入港をみとどける男がいる。

黒いモーニングに同じ色のコートを重ねた紳士。

目を細めた穏やかな微笑みが黒いシルクハットの下に浮かんでいる。

巨大な手のひらに愛らしい少女の人形を捧げ持っている。

男が大きいのでそう見えるが、人形は小柄な少女と変わらない体格だ。

動かない人形の白い顔で、ピンクの愛らしい唇が動いた。

記録(ログ)をみたけど‥‥ずいぶんいやらしいことばかりするのね?」

どこも動かないと見えて、不快ととれる表情は人形ではないのだと気付かされる。

輝く金髪は左右にわけて高く結んである。

その先端が僅かに揺れ、少女の動きを伝えた。

「ふふ‥‥仕方がないのだ‥‥本位ではないがこころを動かすもっとも効果的な手法なのだよ」

答えた巨大な男もまた表情が変わらない。

微笑みのままだ。

少女は説明を聞いても納得した雰囲気はない。

まるでほほを膨らましているかのような、かわいらしい不満の声。

「効果的でも、はしたないのは嫌だわ」

ツンと顔をそらした雰囲気が最後に添えられた。

見た目は唇意外動いてはいない。

「これからも続けるの?」

少し悲しそうなニュアンスが添えられる。

男は無言で船がくぐり抜ける巨大な港の天井をみやる。

動きに合わせて振り向くと、室内に向かい歩き出した。

巨体に見合わぬ滑らかな動きには、秘めた力がうかがえた。

微笑みのまま答える。

「そうですね‥‥成し得ねばならないのです」

少女の表情が変わる。

ほんの少しうつむいただけ。

うっすらあった笑みが消えて、淋しそうな微笑になった。



こつこつと男の靴音の合間に、滑り込ますように言葉を漏らす少女。

「わたくしのかわいい子供がまた一人死んだわ‥‥一人として失ってよい命などないのよ?」

それは誰を指したのか。

紳士の表情はかわらず微笑んでいた。

進み続ける動きの中で、うなずいたようにも見えたし、首を振ったともとれた。

ただ光源の位置が変わり、シルクハットのツバの下で、すこしづつ微笑みは影をおびていった。

嘆くように、諦めるように、何かを隠すように。


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