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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第8章
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【第76話:あたらしい世界があった】

現地の人間に見つかってろくなことが今まで無かった。

ひどいことばかり起きたのだと、ヴェスタは立腹する。

(なんだったらこの星の住人は全部滅ぼしたほうが安心だわ)

そんな恐ろしいことまで考えるヴェスタ。

このままティアが上がったら実現可能なだけに怖い思考だ。

本来は原生の知的生命体との接触は、このタイミングでは禁じられている。

丁寧に避けなければいけない項目だ。

ティア9で衛星軌道ステーションが完成して、国から折衝係の人間が来てから当たるのが普通だ。

ヴェスタ達も予定通りならそうだったのだ。

この星の海洋資源で十分な地上施設を海上に作り、軌道に上がり残りの施設を作る。

そういった予定だったのだ。

ちなみにティア10で、帰還用の星系外航海の準備が整う予定だ。


東の空に明るさが増し、すみれ色のグラデーションが浮かび始める。

ヴェスタ達はもっとも近い街から300㎞程度離れた海岸線から上陸し、新大陸を飛んだ。

「あれだね!結構広い台地だな」

ジュノが目の良さを発揮して、機のカメラより先に目的地の台地を見つけてしまう。

「すごいね?ジュノの目はどうゆう構造なの?調べてみたいわ」

アイカが学術的興味をもつほどの性能だった。

「だ‥‥だめだよ、義体じゃないんだよ?ジュノは」

ジュノのジョークで機内が明るい笑いで満ちる。

ちょっと三人とも寝てないハイテンションではあった。

「余裕で下りれそう。いっかい下りて滑走路整備しよう」

目的地の山脈中にある台地は、事前調査のマップから当てにしていた拠点予定地だ。

水上機もアイカ設計の新機能を搭載した。

主翼を可変させるSTOL機能だ。

わずか50m程の直線があれば離着陸可能としていた。

「あてんしょんぷりぃず♪ベルトをおしめくださぁ~い。当機はまもなく着陸しまぁす」

機長みずからの可愛らしいアナウンスで、アイカもジュノも笑いながら着席した。

2度程離着陸のテストもしていて、機能は問題なく動作していた。

フィィイイイイ!!

着陸するのにスラストモーターの回転数が上がる。

速度が落ちて、揚力が減る分を主翼を立ち上げていきプロペラの推力を足し補うのだ。

速度だけがどんどん落ちて、高度を保ちつつアプローチ。

ここからがヴェスタの超技術。

AIのサポートすら超える調整を見せて、すとんと降りた。

「すごいです‥‥アイカが下ろすよりずっと静かです」

アイカのコントロールで無人テストしたときは、試験用人形の首が一つ取れてしまった。

ころころ転がったのはジュノ人形の首だった。

ヒュゥゥンと回転数を落とす主プロペラたちが唸りを収めると、着陸完了だ。

おそらく20m程度のランディングだったろう。

ジュノも大興奮だ。

「こんなのもうVTOLなんだけど?!」

主翼の可変以上に機首もコントロールされて推力=揚力のトレードオフが神業だった。

ぱちぱちぱちとアイカとジュノに褒められて、てれてれのヴェスタはほっぺが赤かった。




一旦持ってきた荷物を荷下ろしする。

主役はアイカの『式』マクラ01と02だ。

早速ストレージ台車を引きながら、滑走路整備を始める。

アイカはまだ式を出しながら歩いたりは無理なので、マクラ達の操作に集中して、エンジニア席に座っている。

最悪降りられないと判断したら、マクラ2機を空中投下して、パラシュート降下させる予定だったが、ジュノの目とヴェスタの腕で無事軟着陸となった。

ジュノとヴェスタで、運んできた資材を下ろしにかかる。

主に引っ越しの荷物だ。

前の拠点で使っていた鉱石錬成用の機材を少し運んできた。

せっかく往復するからと、軽くてかさばるものを選んで運んだ。

重いものは重力制御のスパイラルアークで運んだ方がいいし、格納室の体積を考えて大きなものを減らしたかったのだ。

今回は低温炉全部と高温炉の煙突を持ち込んだ。

これだけで運ぶ全機材の20%を占めるサイズだ。

中身は殆ど空洞なので、重さはそれほどでもなかった。

下ろした機材に茶色の迷彩シートをかけてアンカーに固定する。

「よし、お仕事完了!」

「いっかいお茶にしようか?日の出になりそうだよ」

東の空はすっかり明るい色を増やしてきた。

水上機の電子ポットでお茶を入れた3人が、持ち込んだクッキーをかじる。

「アイカも一回休憩しよう!」

ジュノが声をかけて、アイカもマクラ達を止めた。

「はーい。いちおうまだ未舗装だけど、離陸はできると思うよ」

「おぉはやいな?」

ジュノもおどろく早さで滑走路を整備したアイカ。

「もともといい場所だったね。苦労は少なかったよ。あとは水平取って簡易舗装するくらいかな?」

森林限界に近い高度なので、大きな樹木も少なく、主に岩や石を片付けた感じだった。

もともと幅200m長さ1㎞程度の台地なので、滑走路に向いた形だった。



山脈の上空を尾根にそって舐めていく。

下部ハッチを開けているのでごうごうと風切の音が聞こえる。

後部荷室とはドア一枚で隔てられているが、気密を取っていないので操縦室も低温にさらされた。

「さむいよぉ!」

「もうちょっとで高度下がるからね、我慢してジュノ」

ヴェスタがそれでもかなり低空に押さえているのだが、もともと標高も高いので、見た目の高さ以上に海面からの高さはあった。

保護スーツは温度も気密もカバーするので、本気をだせば宇宙空間でも作業できるツールだ。

今はそこまで稼働させていないし、手と顔は剥き出しだった。

アイカはまだマクラを操作していて、会話に混ざれないが、一応聞いている。

「よぉっし山抜けたよ!」

「わぁ‥‥」

ジュノもヴェスタも声を失う。

南山脈のあちら側は、全て砂漠だとマップでは知っていたが、そこに広がる砂色の地平に息を呑んだのだ。

「‥‥ぜ‥ぜんぶ砂?」

ジュノが言葉をこぼす。

そこには見渡す限り地平線までが砂でできた世界。

砂丘が広がっていた。

「奥の方にいくと、岩山とかもあって、もうちょっと変化があります」

アイカが操作の合間に教えてくれた。

「そ‥‥そうなんだ」

知識として聞いたものと、想像していたもの。

どちらも現実の風景に及ばなかった。

ジュノもヴェスタも時間を忘れて魅入ってしまうのだった。

どこまでも続く青空と白砂の世界を。





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