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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第7章
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【第71話:すぷりっとろーど】ー分かれ道ー

(きた‥‥)

ジュノの待ち続けたチャンスが来た。

変態領主が戻ってきたのだ。

しばらく動けないジュノをいたぶると、何をおもったのか両手両足の拘束を解いた。

(あれ?どしたの?)

「よしこい、こっちの部屋で二人一緒に可愛がってやる」

といってジュノの手を引く領主。

(こいつ‥‥わたしがただの女の子だとおもっている?黒アイカが居なければ、余裕ですが?)

ジュノは一瞬なにかの罠だと思ったが、まあチャンスだしムカつくからなぐろうと思った。

どす!

「ぐえええぇぇ‥」

右のボディブロー1発で沈んだ。

もの足りなかったので思いっきり回し蹴り。

ばしゅ!

うずくまっていたので、ちょうど蹴りやすい高さだった。

一部の固くて丸いパーツがはずれてころんころんと転がっていった。

鍛え上げられたジュノはスーツ無しの生身でも、2mほど垂直にジャンプする脚力だ。

ジュノは返り血を浴びないよう素早く移動して、予定通りデバイスを探した。

(上だな‥‥)

2点から観測して上と判断し、するりと音もなく進むジュノ。

3階の廊下は無人だった。

もう一度探知し、3点の情報から、かなり正確に位置を見つけたジュノ。

3階の奥にある部屋で、そっとノブを試すとドアはカギがかかっていた。

ドン!

普通に蹴ったら開いたので、つむじ風のように瞬速で突入。

「な!?なんだあ?」

ここでもベッドで裸の男が運動中だった。

パコ

なんだかムカついたが、手加減して回し蹴り。

体ごとふっとんだがパーツははずれなかった。

「あんたも仲間?」

下で運動されていた女にも訊くジュノ。

ぶんぶんと首をふるので、男のものだろうライフルを拾い、威嚇。

「とっとと行ったほうがいいよ?」

ジュノの目がこわかったのか、ひぃといって服を抱えて逃げていった。

ジュノはもう一度デバイス探知。

「ここか!?」

女の寝ていたベッドを動かすと、床にわずかな隙間。

調べると隠し扉で、くるりと回って開いた。

意外に奥が深く、いくつかの物品をひきだしたジュノ。

最後に出てきたものを見て、息を呑む。

また怒りに震えてしまう。

「ひどい‥‥」

それはアイ02の変わり果てた姿。

ばらばらになったパーツと表面のぬいぐるみ。

そして一通の手紙もあった。

そっとアイ02の頭を抱えてごめんねと呟いたジュノ。

他の出てきた物品を検証する。

(保護スーツと、HMDタイプのデバイスだ)

保護スーツは、サイズ自動調整なので、首と腰に装着。

しゅるんと白い保護膜が身体を覆った。

手首と足首の先はそのまま素足だ。

デバイスはロックもないので、普通に起動した。

『ヴェスタ!ジュノだよ!!』

一瞬の間を開けて返信。

『じゅのぉぉ!!』

『今鉱山の町だと思う。外に出てみる。迎えに来れるかな?』

また一瞬だけ間が有り、今度はアイカ。

うしろでヴェスタの泣き声が聞こえて、ジュノはにこりと微笑む。

『実はリステルを探して、ちょうど鉱山の町についたところです。何処ですか?ジュノは』

『一番上の大きな建物』

『そこに居てください、すぐ行きます!』

『りょーかい』

よかったと思いながらアイ02の状態を確認。

不明な手作りデバイスを経由して充電されている。

「この部品がわるいのでわ?‥‥んと、こうだよ」

リステルは非常充電コードの存在を知らなかった。

非接触充電の回路に有線でバイパスしたバッテリーから充電していた。

スーツとデバイスも供給向きにバッテリーに接続して、アイ02に回したようだ。

ジュノでもわかる効率の悪さだ。

アイ02の頭頂にある非常充電ケーブルを引き出し、腰のリングに繋ぐ。

そこが一番電源残量があった。

消費も抑えるため下半身はビキニにして、上半身をできるだけ伸ばす。

超ミニワンピのような仕上がりになるジュノ。

軍用ライフルのマガジンチェックをして、どうやら20発マガジンだなと確認。

大分古いものだが、訓練の座学で習ったので、使えそうだった。

セレクターは1にしてセーフティは外しておいた。

『ジュノ!建物についたよ!』

ヴェスタの声はもう嬉しそう。

『三階だよヴェスタ!』

ジュノももう我慢できずに、ライフルもデバイスも放り出して、たたっと外に走り出す。

あっというまに3階まで上ったヴェスタがいた。

「じゅのおお!!」

「ああぁぁん!!ゔぇすたぁあ!!」

廊下の真ん中で、がしっと涙とはなみずまみれで抱き合った二人。

追いついたアイカも泣きながらひとかたまりに抱きついた。

「じゅのぉ!!」

「ごめんねぇ!あいかぁ!あぁああん!」

ジュノはずっと泣きっぱなしになってしまい、すっかりアイ02のことを忘れていた。

ひとしきり泣いてから、はっと思い出したジュノ。

「あ!!そうだ、アイカこれみてえ!!」

そういって腰のリングに充電ケーブルでプラプラぶら下がったアイ02を見せた。

「アイ!?」

さすがに制作者だけあり、その状態でも事態を把握し一瞬でアイに接続したアイカ。

『ま‥ま‥‥』

スリープのままアイカを感じ取ったアイ02は寝言のようにもらした。

がしっと両手でアイ02をいだいたアイカも涙があふれた。

胸に抱きかかえたアイ02にささやくアイカ。

「あぁ‥慈悲深き女神ラウマさま‥‥ありがとう‥アイを守ってくれたのですね‥‥」

感動のあまり小さくささやくようにもれた女神の名は、誰の耳にも届かなかった。

それはアイカすら知らないはずの名前。

アイカを構成するコードの海に沈む奥底で、魔法の言葉が明滅していた。

アイカはデバイス接続で状態を確認し、このまま持ち帰ると言う。

「不安定な電源で保持されていたので、メモリーが一部揮発しています‥‥完全にバックアップをとってから起動します‥‥」

自分のスーツに充電ケーブルを差し直したアイカがそっとアイ02の頭を抱いてそういった。

「あれ?そういえば私のスーツは??」

「ん??」

むぎゅっと抱いてはなさないヴェスタも、ジュノの声で顔を上げた。

この屋敷の周りは丁寧にヴェスタとアイカで制圧したので、もう敵性の存在はいないと思われたので、安心して抱きしめているヴェスタ。

「みてないよね?」

アイカに訊くヴェスタ。

「はい‥‥どこでぬいだんですか?ジュノ」

「えと‥‥領主の館?」

コテンと三人で首をかしげた。

「一回拠点に戻りましょう。スーツはそれからです」

アイカの提案で三人は水上機へ戻るのだった。

その後姿を物陰に隠れ、じっと見つめて話しを聞いていた者がいたとは気づかない。

三人が立ち去ると、隠れていたところから飛び出す少女。

金髪をなびかせる褐色の下着姿はリステルだった。

びりびり領主に破かれて、残っていたのはそれだけだったのだ。

町長の部屋に駆け込むと、ジュノが通信のあとポイと投げ捨てたデバイスを拾い上げる。

ついでに目が冷めてうぅとか言ってる裸の男を、蹴り倒してもう一度寝かせる。

「よし、まだ電源もある!」

リステルは男が着ていただろう軍服をまといとブーツも奪った。

武装はライフルとナイフしか無かったので、それも接収する。

ブーツのひもをぎゅうぎゅう締めたが、だいぶ隙間があくので、かぽかぽ苦労しながら外に出る。

フゥィィィィィ!と水上機が離陸していくところだった。

見送るリステルの眼には、ほんの少しの憧憬。

(間に合ったら‥‥見つけられてしまったら‥‥そうも思った)

うれしそうに抱き合う3人に、一度だけ自分を重ねてみた。

(‥‥ここが分かれ道なのだわ‥‥きっと)

見送ったリステルの目には、しっかりとした意思が宿っていた。

今日おどろくほど近くにいたリステルは、声をかけるのをためらってしまった。

自分なら、ジュノ誘拐への関与を疑うだろうと。

実際にはアイカですらそうは思わないし、ジュノやヴェスタでは思い付きもしないだろう。

(‥‥わたしと彼女達は交わらなかった)

さっと振り返ったリステルは行動を開始する。

時間はあまりないと判断したからだ。



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