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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第7章
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【第69話:ひどいことも起きる世界です】

(あぁ‥‥またひどい目にあっちゃったな‥‥ヴェスタに会いたいよ‥‥)

ジュノはかなりひどい目にあった。

スーツのアシストなしでは黒アイカの義体に全く歯が立たなかった。

アイカの義体を超えるティアの義体だと思われた。

力も速度もジュノを上回り、技量もアイカと同等だった。

魔法なしでも無力化させられて、これで魔法もあるのかと絶望した。

今はベッドに戻されて縛られたが、さっきまではそのためにひどい格好で拘束されて、ひどいことをされた。

特に辛いのは、意外とこの自分の身体が言うことを聞いてくれないこと。

あの意地悪黒アイカに言葉でもなぶられて、実際そのとおりだと自覚させられたことだった。

(クスン‥‥やさしい、いちゃいちゃベッドに帰りたいよぉ)

ヴェスタもアイカも綺麗にこういったジュノの嫌がる空気を避けてくれる。

どんなに近くにいても、ジュノが嫌がらないよう工夫をしてくれる。

ヴェスタやアイカに触れるときには、ジュノも気をつける。

イヤだろうなとジュノが考えるから。

この部屋でされたことはまったく逆だった。

ジュノがされたくないと心で思っていることと、思ったこともないひどいことだけをされる。

なにか薬剤も使われたようだが、ジュノの身体もジュノを裏切る。

それはとても悲しいことだった。


ジュノの反応が悪くなると、黒アイカと変態領主は満足したのか、ジュノをベッドに縛り立ち去った。

そうして暫くたってやっとまともな思考が戻ったのだ。

(デバイスが言う事きかない‥‥これじゃ通信もできないよ‥‥)

ジュノの頭蓋にインプラントされたマルチデバイスは、意識操作で再起動出来る。

何度か試してみたが、ジュノの今したい操作やリクエストには答えない。

アーカイブ参照などの動かせる機能も多いので色々試していた。

(ん?!短距離の外部デバイス用リンクが動く‥‥あぁでもこれじゃ外までも届かないから助けはよべないな‥‥‥‥ヴェスタがまた心配して泣いていないと良いな‥‥)

ベッドに仰向けのまま色々デバイスをいじっていると、ふっと接続できる気配がある。

(おお??なんか動かせそうなデバイス見つけた‥‥わたしの装備かな?)

意識を凝らして操作に集中する。

見つけたデバイスのプロパティを確認した。

(よし‥‥アイカ製のデバイスだぞ。バックパックかヘルメットがいいな。長距離通信機がある)

アイカ作とプロパティにあるので接続開始するジュノ。

(むむ電源節約かな?スリープしてて‥‥ん、よしつながった。)

ピロンと特定のチャイムが成りデバイスがジュノにリンクする。

(じゅの?)

びくっとジュノは反応してしまった。

監視カメラがあるだろうなと、できるだけ身体や表情を動かさないでいたのだが、名前をよばれて反応してしまった。

(ああ!アイちゃん?アイちゃんなの?!)

その接続したデバイスの感触に覚えが有った。

いつもサポートしてくれるアイカのコピー娘達の感触だった。

(じゅの‥‥頭がいたいの‥‥うごけないよぉ)

アイのデバイス電源残量もモニターに入った。

6%しかない。

(アイちゃん周りの状態わからないのね?もういいからスリープして電源が危ない!)

ジュノはほぼ確信していたが、これ以上負荷をかけたくなくてスリープさせる。

(うん‥‥ままぁ‥あいたいよぉ)

じわっとジュノの目が涙を流す。

(いきてた‥‥アイ02だ‥‥)

デバイスのリンクがまた切れるが、これ以上の負荷はダメだとジュノは本能的に察した。

(電源になにか不安定な要素がある?充電出来ていない?)

色々な状況を思い描いたが、それ以上に感動と感謝が沸き起こった。

(よかった‥クスン‥‥アイカ‥いきてたよアイ02ちゃんが‥‥)

アイカがどれほど心を痛めたかは、すぐ側にいたジュノにもヴェスタにも解った。

なんとか受け止めてほしくて、触れないように気をつけていたことだ。

(‥‥絶対死ねない‥‥ドロをすすってでも生きる‥‥この情報を持ち帰りアイ02を救い出すまでは!)

ジュノの中に先程までの弱さはもう無かった。

自分だけならもう辛いから死んでも良いとも、ふんわり考えていたジュノだが、今は全力で脱出を目指して考え出した。

ジュノもまたある種の天才だった。

集中することで、常人にはありえない思考速度と論理展開、戦術・作戦能力を持っていた。

(次に移動させられるときだわ‥‥必ず逃げてみせる‥‥)

ジュノの瞳に静かな炎が灯る。

それは『小隊殺し』と恐れられていた、訓練時代のジュノの眼だった。




(あーもうわかったからとわたしは言いたい。そこにもう戦術的・戦略的意味はないのに‥‥)

リステルはわりとひどい目にあっていた。

(屈服したでしょ?もう)

「リステルぅ会いたかったぞぉ‥‥お前の母は館においてきてしまったからな‥‥もうお前だけだよ」

なんか一生懸命運動している変態領主がむしろ哀れに思えてくるリステル。

(あぁ‥‥はやく次の展開に進んでほしいな‥‥)

とりあえずこの状態ではゆっくり考える事も出来ないなと、いったん思考をあきらめるリステルだった。

ここはジュノの寝かされている部屋と同じフロアで、リステルが色々仕込んだ部屋の真下あたりだった。

天井を見上げるリステルは、自分の手掛けた最後の作戦に思いをはせた。


兵士が踏み込む直前に、リステルは自分の持つ全ての未来知識と器具を隠した。

普通には絶対見つからない隠し場所を、事前に準備していたのだ。

町長の部屋だったそこには、都合のいい隠し場所がいくつかあった。

色々と後ろ暗かったのだろう町長は、秘密の帳簿やら金貨を隠してあった。

その一つにさらにリステルが工夫して見つかりにくくして、保護スーツやデバイスと一緒にリステルお手製のバッテリーとアイ02を隠した。

人形の消費はあまり多くないのか、数日放置していたがバッテリーの減りは大したことはなかった。

デバイスと保護スーツにもバッテリーがあることを知っていたリステルは、それらのバッテリーでもアイ02を充電しできるよう繋いで隠した。

ヴェスタ達がここに踏み込んでくれたら、見つけられるだろうとリステルは不確かな可能性にかけた。

そこには一通の手紙も仕込んでおいた。

いくつか描いたリステルのシナリオの中で使う可能性を考え、事前にヴェスタ宛に準備していたものだ。

部屋の入口に家具を倒しバリケードとして時間を稼ぎ、僅かな時間でこれらを成し遂げた。

兵士が踏み込んできたときにはもう、無力そうな少女の演技に戻り怯えていた。

それが一番生存率が高いと経験済みだった。


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