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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第7章
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【第68話:理解できないこともあります】

リステルには理解できない事態が発生した。

(なんなの‥‥これは‥‥)

勝利は確定で、あとは時間の問題だった。

総崩れになる敵軍に、トドメとばかりリステルの罠が発動し、逃げ場を閉じていく。

川をせき止めて解放する水攻め。

事前に油をまいてあり風向きまで鑑みて、最後はスコールで消火するとこまで計算された火攻め。

単純な落とし穴ですら、悪魔のように狡猾に準備してあった。

残りは200も残っていなかったはずだった。

退路はすべて罠が塞ぎ、あとは狩人たちが刈り取るだけだった。


リステルが身体まで捧げて手にした屈強な親衛隊の戦士達までが蹂躙された。

天から降り落ちる輝くビームに次々と撃ち抜かれ動かなくなる。

一般の兵士たちの中には逃げ出すものも増えてきた。

一時戦力比は2:3程度に勝っていたものが、数分の内に逆転され今では自軍が敗走状態だ。

宙に舞うその黒い人影はまさに神の使徒‥‥いや神そのものにすらリステルには見えた。

バーン!

リステルの居る町長の屋敷についに敵兵が入り込んだ。

一階でガチャガチャと騒がしい気配が動いている。

俯いたリステルはらしくない表情。

(どうせ逃がしてはくれないわ‥‥私はあの神を敵にまわしたのだから‥‥)

数秒落ち込んだあとに、ふるふると首をふるリステル。

キッと上げた顔には再び意思の光が灯った。

(出来ることを全てする。そうやって生きてきたでしょ!あきらめるのは!‥‥それからだわ)

リステルは一瞬でさまざまな状況を考えて、叶うならこうなって欲しいという願望まで込めて作業をつづけた。

廊下を兵士のものらしい靴音が迫ってくる。

扉が開けられたときにはリステルの出来ることはすべてした後だった。




裸は可愛そうだなと、収納していたシーツポンチョを出すヴェスタ。

怒りにまかせて、部屋中の変態器具を破壊したあとだった。

台風か竜巻でも通ったようにすべてぐしゃぐしゃに破壊されて、散らばっていた。

アイカも何か着るものがないかなと、あちこち開けたりしたが、出てくる変なものをヴェスタが奪い取りスーツの力で壁に叩きつけ壊してしまう。

「アイカさわんないの!手がけがれるわ!」

投げ捨てると戻って、ぎゅっとアイカを抱きしめるヴェスタは大泣きする。

「あーん!じゅのぉぉ!!」

なんだか情緒不安定だなとアイカは心配した。

(ジュノが心配なだけじゃない?なにかおかしいヴェスタ‥‥)

そうして破壊し尽くしてから、アイカが女性を横抱きにして、とぼとぼ歩くヴェスタに続き地上に上がった。

『アイちゃん‥‥かまわないからそこの道路に下りて』

『はーい』

アイカは霊子通信でアイ01に指示をだし、もうこのあたりには人気もないしと水上機を館の前の大きな道に着陸させた。

ヴェスタに女性を預けて、アイカは着陸させてある降下デバイスを拾いに行った。

ちゃんと指示通り道路にランディングして止まってたそれをひょいと回収し、ちょうど下りてきた水上機を追って行く。

アイカの倍ぐらいあるシルエットの降下デバイスだが、強化木材とアルミで出来ていて重量は思いがけず軽いのだった。




アイ01からヴェスタの操縦に代わり上空まで上がると、ヴェスタはリステルに連絡を取る。

今は一つでも情報がほしかった。

女性は衰弱しており、アイカの診断で栄養剤を処方した。

「ダメだわ‥‥リステルも連絡がつかない‥‥電源が入っていないようだわ」

ヴェスタは操縦桿を握ったら精神的に安定した。

アイカはそのヴェスタの心も不思議だが、今はジュノを探す手段を考えようを思った。

「ヴェスタ‥‥リステルに会いに行ってみませんか?確か鉱山の町で指揮を取って、領主軍と戦っているはずですよね?」

考えに沈んでいたヴェスタははっとアイカを見る。

「そ‥‥そうね‥‥今は少しでも情報が欲しい‥‥」

そういったが、何をすればいいのかまだ決断できないヴェスタに痛ましそうに目を向けるアイカ。

(ヴェスタは少し休ませてあげなければ‥‥)

アイカは決断し、提案する。

「ヴェスタ、そこの女性はちょっとバイタルが心配な状態です。休養を取らせるべきですし、意識が戻れば情報を貰える可能性が高いです」

ヴェスタはアイカを見つめて思考がまとまらない様子。

「ここは手分けしましょう。リステルにはアイカが接触します。ヴェスタは女性を拠点に連れ帰り看病してください。意識が戻ったら情報も聞き出して」

結局すべてアイカが指示してしまったが、ヴェスタは不審にも思わない様子。

「そうね、そうしましょう‥‥」

目線を正面に戻したヴェスタはまた口を引き結んで黙ってしまう。

(やはり‥‥ようすがおかしい‥‥アイ01にお願いしよう)

『アイちゃん‥‥ヴェスタが心配なの‥‥そばに居てくれる?なにかあったら霊子通信で教えて』

『はいママ‥‥一人で行くの?気をつけてね‥‥』

『ありがとう、安心してアイちゃん、今日のママはBEP(損益分岐点)を気にしないから大丈夫よ!』

『うん‥‥でも気をつけてね!』

例のぴーっちちっちちでアイ01と話すアイカは、1秒かからず打ち合わせた。

「ヴェスタ、ここでアイカは降りるわ。アイ01を連れて行って、看病ならできるから任せたらいいよ」

ヴェスタは、はっとまたアイカを見る。

なんの話だっけみたいな顔をする。

「リステルを探してくる。見つけたら連絡するよ」

そういうと、うんうんとするヴェスタを残し、後部のカーゴに進む。

また降下して降りるのだ。

『いいよヴェスタ、下部ハッチあけて』

しばしの間があり、ガコンとロックが外れとびらが開いていく。

ごうごうと風が唸る中、ひょいと気軽に飛び降りるアイカ。

くるっと丸まり小石のように落ちていき、機体から離れた所でボンっと保護膜を広げる。

アイカのAラインワンピースの保護膜は、手足を広げるとそれだけでカイトのように減速しコントロールがある程度効く。

高度は4000m程だったので、少しづつ鉱山町に向かって斜めに滑る。

町は現在地から直線距離で10㎞程の位置だった。

(うん、着陸時にレビテーションを一瞬くらいでおりられるな‥‥いや気配を隠したいから少し手前に降りるか‥‥)

アイカは冷静に降下シークエンスをこなしていった。

眼下に見えた十字の明かりに、前回見下ろしたときのセンチメンタルはない。

そこにジュノを救う情報があるかも知れないと、それだけを胸に風を切った。










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