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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第7章
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【第66話:いそいでるのよ!】

「わかったわ‥‥そこまでお膳立てしてくれたなら、こちらも万全を尽くす。報告を待って」

ヴェスタとリステルの通信は、その程度で終わった。

ヴェスタがごねられる要素が一つも無かったのだ。

リステルからの要望は領主の討伐だけとなった。

領主の護衛は少数とまで言われては、イヤとはもう言えなかった。

「やろう‥‥」

ジュノも気合の入った顔だ。

女性に乱暴すると聞いて、ジュノは領主に対していい印象を持っていない。

「そうね‥‥出来る限りの準備はしたものね」

ヴェスタもキリっとする。

「アイカ‥‥10分後に作戦開始」

「了解ですキャプテン!」『りょうかい!』

アイカと、アイカの肩にいるアイ01と03も敬礼。

三人で拠点の外に向かった。


まだ午後になったばかりだが、母船をまた動かす。

まだ改修出来ていないので、VLSは6機一度に射出口を開ける。

防御面からダメだししたアイカだが、まだ改良は出来ていなかった。

『ジュノ、スタンバイおーけー!』

ジュノの頼もしい声がする。

「絶対無理はしないで‥おねがいよジュノ」

『まかせて!ヴェスタはどっしり待ってて。必ず帰るよ!今夜はいちゃいちゃするんだからね!』

「もう‥‥いくらでも甘えていいから‥‥無事に帰って」

『了解!』

「VLS準備完了」

「うん、やって!」

アイカの報告にうなずくヴェスタ。

「カウントダウン5‥4‥3‥2‥1‥発射」

アイカの声に続き、ズンと射出のお釣りGがくるが、すぐに移動を開始するアイカとヴェスタ。

「あとよろしくねアイ04」

「はーい、いってらっしゃいママ、ヴェスタとアイ01も!」

アイ04に母船を任せて、すぐにジュノのバックアップに向かうのだった。


ジュノは今回補助翼なしで飛んだ。

前回の試験で、パージした翼を回収するのはかなり手間だった。

一枚は割と山頂近くで見つけたが、もう一枚は山の麓まで飛んでいたのだ。

データも取れたし、あとは通常装備でも十分領主の館まで届くとなった。

それでも工夫はされていて、ジュノの外部装備にヴェスタと同じ重力制御で固定するアーマーを二枚追加していた。

両肩に付いた40cmほどのそれが左右に展開し、若干の揚力を提供するのだった。

装甲自体は電磁力で浮かせているので、瞬間的なトルクにも対応しやすく、ジェネレータープールの消費を少し抑えてくれた。

『みえたわ。予定通り屋上から突入する』

領主の館は4階建てのビルのような作り。

屋上があるのでそこを着地、侵入地点と決めていた。

今回の作戦では霊子通信を切らない。

切れたら異常事態として、ヴェスタとアイカが突入する手筈になっている。

ばしゅぅ!!

圧縮空気をベクターノズルから吹き、減速したジュノが屋上に降り立つ。

どん!

屋上に大きなヒビが入るが、想定内の侵入速度だ。

ジュノの外装はこれくらいの衝撃では、傷一つつかない。

ガンとドアを蹴り破り、銃口から突入するジュノ。

(秒で片付けて、いちゃいちゃするんだから!)

ジュノの報酬関数(リワード)はもう固定されていた。

反応のいい兵士が二人上がってきたが、ジュノは接近戦にもしない。

ズバン!

階段で出会った二名はジュノの電磁ショットガンの一射で蜂の巣になった。

一発当たれば戦闘不能な威力の弾丸を数発もらい、悲鳴もあげず倒れた。

豪華な扉の前に出る。

(‥‥改装どころか部屋の移動すらしないとは‥ヌルゲーね)

リステルあら建物の情報ももらっていて、ここが目的地第一候補だった。

ドンと蹴り開けると、ベッドに二人。

一人は裸の女なので、このまま射殺とはいかないなとジュノは銃をおろした。

「なな、何者だ!わしは領主だぞ!ぶれいなあ!!」

と腰を隠しながら強がられてもジュノにはなんの痛痒もない。

「きゃぁああ!!」

領主の横の女も悲鳴を上げ顔を隠した。

ショットガンを手放すと、しゅるっと電源供給ラインが巻き取る。

反対側のバックパックにあるハードポイントからライフルを抜く。

このレールガンなら領主だけ撃ち抜ける。

そこで女が顔を上げた。

「やめて!ジュノ、わたしよ!アイカよ」

『な?!』

ジュノが凍りつく。

領主の横で裸で寄り添っていたのは、ついさっき別れたはずのアイカだった。



ヴェスタはアイカとアイ01を伴い、機上の人となっている。

水上機も発進させたのだ。

ジュノもここから降下でも良かったのだが、展開速度がVLS発進より大分かかるので今回はジュノが先行した。

恐らくリステルから連絡が入って15分程度で突入したはずだ。

今こちらはまだ離陸直後だ。

「離陸確認、主機異常なし、フォワードモーター1、2、3、4異常なし。油温安定、水温異常なし」

アイカの機器チェックの声が静かに響く。

ヴェスタは一気に高度をあげる。

目標の街には高度8000で侵入予定だ。

気づいても現地の人間では点にしか見えないだろう。

『ジュノ!!応答して!‥‥』

アイカが霊子通信に叫ぶ。

今回はケチケチしないと決めていたので、通信切断にすぐにきづいたアイカ。

「だめ!応答なし、緊急よ急いでヴェスタ!」

アイカは言いながらベルトを外し、後部デッキに走る。

「‥‥了解」

言葉少ないヴェスタもキリリと表情を険しくした。

(‥‥嫌な予感ばかり当たる‥‥どうして?おかしいよ)

いつもクリティカルなタイミングや、油断した瞬間にトラブルが起こるとヴェスタは不審がる。

(私って運が悪いの?‥‥クスン)

ジュノが心配で涙が出てしまうヴェスタ。

予定を変更して高度は取らずどんどん落としながら加速する。

火口から飛び立った時点で4000m程度はあり、今は6000m程を飛んでいたので、2000程度まで下げながら速度を上げていく。

5分以内に到達すると、ヴェスタは考えた。

(‥‥5分もかかる)

『ヴェスタ‥‥残り5㎞ででる!』

アイカの出撃許可申請。

『3000mからにして‥‥余裕がなさすぎる5000じゃ』

ヴェスタももちろん早く出てほしいが、アイカの安全もジュノの安全と替えられないと思っている。

『ヴェスタ‥‥アイカはレビテーションも使えます‥‥信じて‥‥ジュノを救いたい』

アイカは浮遊魔法があるので、届かなくても魔法で補えると言う。

ヴェスタは魔法を知識としてしか知らず、信頼性にプラスに働かない。

それでも急ぎたいのも事実だ。

アイカはヴェスタ達が作ったグライダーを材料に加工し、自分用に戦闘機動降下用飛行ユニットも作っていた。

この高度からなら5000mぎりぎり行けるものではある。

目的地の街まであと20㎞ほどであった。

推力にはスーツの圧縮空気を使い、揚力をぎりぎりまで減らし速度がでる形状になっている。

後部デッキから垂直降下させて、加速する仕様だ。

母機の速度も乗るので、いまの巡航速度ならかなり先行出来る。

上空到達しても待機姿勢を作りアイ01にまかせ、ヴェスタが降下するまでは、まだ5分以上かかるだろう。

『わかった‥‥ジュノをおねがいアイカ‥‥』

クスンと鼻をならすヴェスタを安心させたくて、アイカは気合を入れる。

『まかせて!!節約しないアイカの実力をみせつける!』

あと2分程度でアイカの発進時間となる。




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