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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第6章
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【第63話:報酬は支払われた】

リステルから鉄鉱石を準備したと連絡が入り、北の町の郊外に向かう。

「鉄はいくらあっても困らないよね」

ジュノが口元に微笑みを見せる。

「たしかティア7辺りまでいるよね?鉄が一番量を求められるわ」

ヴェスタは真剣ないつもの顔つき。

白い制服ではなく、シーツポンチョを羽織っている。

ポンチョのしたに新装備を隠しているのだ。

今まで使っていた鉄ベースの薄っぺらな装甲では無く、アルミ合金にカーボンの裏打ちを入れた分厚い複合装甲だ。

軽く固くしなやかなそれは、首・胸部までは分厚く、腹部はボディラインにそった薄い円筒装甲の重ね合わせ。

腰部には分割されスカートのように上半身を守る。

前腕とブーツも同じ装甲で白く塗られる。

逆に今まで無地だった防護膜は、白地にパーソナルカラーに色分けされ、蛍光色のラインが入った。

ヴェスタはライムグリーンに、ジュノはオレンジに塗られる。

アイカと三人になるので、視覚的に識別出来るようにと工夫した。

アイカは真紅のラインが入る。

防護スーツも更新されたのだ。

容量だけではなく、耐弾強度や破断強度もあがって、膜自体が厚くなっている。

これによりあちこち形を透かし裸のようにみえてしまう部分も少し改善された。

代わりに外から受け取る温度や湿度などの情報が少し減ってしまう。

ジュノあたりは気配が捉えにくくなると、それを嫌うのだが我慢してもらう。

命の方が大事だと、ヴェスタが頼み込んだのだ。

ジュノはヘルメットも被っている。

ハードタイプでいつものように収納出来るものではない。

今はヴェスタと実声で会話するために、口とアゴの部分だけ収納している。

顔面には大きな2つのカメラと4つの小さなカメラ。

視界はVR表示でまったく死角がないが、少し首の動きに干渉する。

その代わり強度は胸部や肩の防具に匹敵するし、通信機能も高い。

左の耳あたりから30cmほどの細いナイフのような伸張式アンテナブレードが伸びる。

視界は拡張表示で暗闇でも地形は把握出来るし、ヘルメットのカメラとセンサー類が捉えた映像で昼と変わらない行動が可能だ。

ヴェスタはヘルメットなしで、いつものARで表示だけなので、ジュノが索敵と警戒を担当している。

万が一、対人交渉が必要になったときには、ヴェスタが対応すると決めている。

「そろそろ近いから先行偵察するね」

「りょうかい」

ジュノが圧搾空気のラウンドバーニアをふかし、平行に飛び去る。

スーツのジャンプが水平に10mほど飛ぶのだが、そこにバーニアの補助が入ると倍以上遠くに運ぶ。

一飛びで見えなくなるジュノは指定の座標近辺を偵察にいったのだ。

ヴェスタのブーツふくらはぎと肩と背中に可動式のバーニアがあり、吸気した空気をジェネレターとCPUの熱で膨張させファンで加速してノズルから吐き出す。

ティア5のこの防具にはそれぞれに小型の核融合ジェネレーターが内蔵する。

その発電能力と熱が機動力を上げてくれるのだった。

まさに次元の違う戦闘力を提供する。

主武装も変更があり、見た目はあまり変わらないライフルタイプだが、ヴェスタのそれはフルオートで60連装のマガジンを6秒程度で打ち切る。

単発の威力も上がっている。

長くなったマガジンがグリップからはみ出すようになったくらいが外見の変化だ。

腰部のアタッチメントに片側3本、計6本の予備マガジンが付いている。

装備総重量は120kg程度となり、すでに対人兵器ではない火力だった。

電力が十分にあるので、複数の装備も可能なのだがヴェスタが使いこなせないので、主に防御関係に回している。

ヴェスタの両肩には重力制御で浮き、センサー連動で自動防御する小型の盾が一枚ずつ付いている。

ローラーダッシュもあるのだが、音がかなり出るので今夜は途中から走っている。

山道はころころとタイヤで転がして楽をしてきた。

数分走るとヴェスタの視界にも連絡のあった地点が見えた。

集積された後席を荷車に乗せ、6台程の荷役馬車が止まっている。

馬はないので、車だけ置いていったのだろう。

ジュノが待っていて、ヘルメットを跳ね上げている。

バックパック側に90度跳ね上げて、首から上の部分を外せる仕様だ。

「異常ないね。周囲1㎞は無人だったよ」

「‥まあこのタイミングで裏切っても何も得られないでしょ?大丈夫だわきっと」

ジュノはニコっと笑う。

「たのもしいねヴェスタ。いいよ」

ヴェスタもふんわりと笑顔を作った。

二人はバックパックの左右にあるハードポイントからマインビームを出し、鉄鉱石をストレージに収納していく。

ストレージは直径15cm程の円柱状で、腰の上背部に接続され60cm程の長さがあり重量も20kg近いものだ。

スーツの補助があればこの程度の重さは気にならないが、戦闘時など緊急ではパージして重量を軽くすることも出きる。

一人2本付けたその外付けストレージにはナノマシンが仕込んであり、一本あたり500kgほど収納する。素粒子レベルに分解して拡張収納するので、重量はほとんど増えない。

現地の技術レベルからしたら魔法でしかないだろう。

スーツ本体内部にも1t程収納出来るので、一人2tの容量がある。

これは以前のスーツの10倍程の容量になる。

半分づつ二人で取り込み、2分ほどで完了する。

意識で切り替えて素材を選ぶので、最後に木材や精錬された鉄など馬車そのものも収納する。

「ふふ、残さずいただきました!」

「あはぁ、ヴェスタ食いしん坊ね」

「あはは」

楽しそうに笑ったヴェスタをジュノも幸せそうに眺める。

「よし、帰りも緊張切らないでいくよ」

真剣になったジュノにヴェスタもうなずく。

暗闇の中にヴェスタとジュノが駆けて消えていく。


しばらく経ち、その場所に人が集まってくる。

目立たない服装で鉱山労働者にみえるが、動きが一般人のそれでは無かった。

10名ほどの鍛えられた戦士は足音すらたてず、するりと集まる。

中心には小さな人影。

リステルだ。

リステルはHMDヘッド・マウント・ディスプレイをしており、暗闇に困らない。

保護スーツもまとっていて、いざとなれば超人のように動ける。

今は電源節約のため切ってはいるが、作業服の内側には保護スーツのリングを着けている。

戦士たちがおぞましげに話し出す。

『あれがリステルの言ってた使徒か‥‥とんでもないな?魔法使いか?』

『最初に来た方は、空飛んでたぞ?』

『後から来た金髪もとんでもない速度で走ってきたな‥‥』

ジュノ達にすると、警戒しながら慎重にアプローチした速度がそう見えるのだ。

『馬車を溶かしてしまったな‥‥なんだあれは?』

わからないことだらけで、戦士たちも混乱している。

リステルは見回して告げた。

『だから神の使徒なのよ‥‥わたしの話をこれで信じたでしょ?』

先日潜入するリステルを準備したこの部下達は、今まではそういった報酬のためでもあり従ってきたが、ここにきてやっとリステルの異常さに気づいた。

あの山頂で接触するずっと前から、同様の異常な話しをリステルはしていて、誰も信じてはいなかったのだ。

見せつけられ、信じざるを得なくなったと言うわけだ。

『あの力があれば‥‥領主など何ということはないわ』

にんまりとリステルは笑い、戦士たちはゾッとする。

自分たちが手を出したこの女が魔女だったと今気づいた。

すでに魂を捧げてしまっていたのだと、今さら気がついたのだ。

それすらもリステルの計算に、最初からあったとは、もちろん誰も気がつけなかった。



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