【閑話:いくつもの奇跡による存続】
リステルは天才ゆえに、簡単に知識を得る機会を手放せない。
それが危険な選択だと解っていても、リスクが高くとも逃すことができない知識欲を持っていた。
理解する能力が高いとは、理解したがる欲も高めるのだった。
「これ‥‥電源が落ちそう‥‥何かを維持するために電源を必要とするのだわ」
リステルには神の使徒だと思っている、白服の女を殺してまで手にした知識がある。
それはこの時代のはるかな先にある技術と知識。
HMDと呼ばれるスポーツサングラスのような形状のそのデバイスは、霊子通信で銀河連邦のとあるサーバーを通し、連邦内の知識を閲覧可能だった。
リステルは領主の元から逃げ出した時、計画的にこの使徒を排除しようとして成功し、デバイスを奪った。
そのデバイスはリステルの望む知識をすべて与えてくれた。
わずか数週間の学習で、おどろくほど技術を理解したリステルは、先日の偵察時に部下が誤って壊し持ち帰った人形を調べていた。
リステルは手に入れたデバイスも保護スーツも『電源』が必要だと理解していた。
この使徒達の技術は大概それを必要とした。
デバイスから知識を汲み出し、風力による電源供給と、蓄電にまでリステルは成功していた。
そのバッテリーモドキにリステルは人形の中身を繋いだ。
幸いにして充電を受け取る手段を複数持っていたアイカ02はその不安定な電源からでも供給を受け取れた。
(あぅ‥‥やっとごはんがもらえたよ?‥‥アイはどうなってしまったの?)
アイ02は今、頭の部分だけがリステルにより充電されている状態だった。
効率はギリギリだったので、アイ02はスリープモードに入る。
(ままぁ‥‥あいた‥い‥ょ‥‥‥‥)
電源供給を限界まで下げたメモリーは、かろうじてアイ02の存続を赦してくれた。
同じ机の上にはばらばらになり、細かなパーツにまで分解されたアイ02の身体部分がある。
トレイの上で几帳面に分類されたパーツをみれば、リステルの理解度の高さがうかがえる。
「ふむ‥‥身体の方は動作部品ばかりだったから、全部分解してしまったけど‥‥この頭の部分‥‥わからない物がおおすぎるわ‥‥あとでゆっくりしらべたいな」
つんとアイ02の頭をつついたリステルは微笑む。
仕事が終わったらまた遊ぼうねといった雰囲気。
リステルのきまぐれはアイ02を辛うじてそこに残していた。
「さて‥‥それではリステル一世一代の名演技といきますか‥‥」
もと町長の自宅を接収しているリステルは、ぱたりとドアを抜けて山頂を目指す。
なんとかヴェスタ達と良好な関係を結ぼうと。
そうしてリステルはとある作戦でヴェスタ達と接触しに行く。
リステルがこの鉱山の町にもどるのは3日後となる。
リステルは人形を処分しなければと、決意して戻るのだ。
ヴェスタ達の協力を引き出すために。
自分の嘘をごまかすために。
その期間を、バッテリーは単独でアイ02をささえる電力がなかった。
アイ02は繋がれた電源と、頼りない風車一つで保たれながら、奇跡的存続を得たのだった。
あやうい綱渡りの中で。




