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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第6章
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【第61話:リステルの誤算】

本船スパイラルアークも湖水に沈め直し、格納庫のカモフラージュも終えた。

カモフラージュは木材由来のチップを含んだ接着剤を吹き付け、そこいらの土や小石をくっつける。

「あまりいっぱい付けると重くなるのでほどほどにね!」

ジュノの指揮で拠点の扉も同じ仕様にした。

「いいね!」

「うんうん、これなら近づかなければわかんないね」

ジュノとヴェスタがうろうろして確認もした。

ちょっと離れると溶け込んでわからないレベルに仕上がった。

「さて‥‥では、作戦開始かな?」

ジュノがすっと真剣な顔になる。

キリっとすると途端にジュノはかっこいいなと、ヴェスタはぽっと赤くなる。

「うん‥無理はしないでねジュノ」

ヴェスタが手をとり、手をつないで拠点にもどる二人は、おそろいの白い洋装でならんだ。

拠点にもどるとふわりと甘い匂い。

「あ、おかえり。もう終わったのカモフラージュ?早かったね」

にっこり出迎えるアイカも同じ上着でぽふっとヴェスタに抱きついた。

すりすりと肌触りを堪能する。

ジュノも何故かぽふんとくっついてすりすり。

「ふふ、なんか肌触り良いよねこれ」

ジュノがにこにこで言う。

「パイルの大きさに拘って織りました!アイカ渾身の防刃防弾コットンです!」

「き、機能的にもすごいのね?!」

ヴェスタもジュノもそこは知らなかったらしい。

えっへんとするアイカの肩にいたアイ02とアイ04もえっへんになる。

「なんだかいいにおいだよぉ?!アイカなにか焼いてるの?」

ジュノが目ざとく見つけてダイニングに進む。

「今日はマドレーヌを焼きました!羊のバターが出来たので贅沢に使いましたよ!」

ヴェスタも目がハートになる。

「あふんバターぁ、おなかすいたわ!」

ととと、とヴェスタもリビングに行く。

「じゃあおやつにしましょう!」

アイカの許可がでたので、ジュノはお茶を入れ始める。

ヴェスタが決心したように告げる。

「‥リステルを呼んでもいい?もう話しをすすめちゃおうと思う‥‥準備はできるだけしたし」

二人もすっと真面目な顔。

「そうね‥一人だけオヤツ抜きはかわいそうよね」

ジュノも心情的には親リステルなのだ。

レールガンを持ち出してジュノが警戒し、ヴェスタが個室のカギを開けてリステルを呼んだ。

「リステル‥‥今からオヤツなの。食べながら打ち合わせたいのいい?」

ベッドに座っていたリステルが顔を上げた。

食事は差し入れていたが、半日以上閉じ込めていたので心配したが、すっきりした顔でいた。

「はい‥‥お願いします」


そうしてダイニングにリステルを招き、座らせる。

椅子が足りないが、ジュノは立ったままで良いと言うのでそのまま打ち合わせる。

「さいしょに言うけどね、リステル‥‥貴女を信用しきれない。できるなら関わりたくないと言うのが私達のスタンス」

ある程度予測していたのか、すぐにリステルは切り返す。

「もちろんだと思います‥‥こちらとしては支援はとても欲しいのです。なにか対価になるものを準備出来ないでしょうか?」

リステルの中ではもう必須目標のクリアが確定し、よりよい着地点を探す交渉となっていた。

ヴェスタは目線を逸らさず告げる。

「もし準備してもらえるなら、鉄鉱石などの鉱石はできるだけ欲しいです。かわりに‥‥その領主の排除を手伝う準備があります」

ヴェスタの提案はリステルの中では上から数えたほうがいいほど良い話し。

飛びつきたいのが本当のところだ。

すこし淋しそうな困った顔で告げるリステル。

「ありがとうございます‥昨日救っていただいた上に、これ以上ない温情に感謝を」

そういって目を伏せ深く頭を下げた。

(手伝うか‥‥どこまで?)

リステルの中ではもう次のフェーズに思考は飛んでいた。

「‥‥まずはお茶をどうぞ。お菓子もたべてね、うちのアイカが作ったの」

そういってにこりとアイカと見交わすヴェスタ。

「ありがとうございます」

失礼にならないぎりぎりまで微笑みを添えて、お茶に口を付けるリステル。

しばらくはお茶とお菓子の話題で過ごし、ジュノも合間合間にお茶を飲み、お菓子をかじった。

リステルは終始悲しそうな苦しそうな空気をまとう。

三人にも自然に見える様子だ。

遠慮しているが、本当に困っているのだなと感じ取れる様子。




「これを。連絡用です。タイミングは任せますが、戦闘員を派遣します」

VHFの無線機を手渡すヴェスタ。

技術レベル的にはティア1で作れるもので、受信機側に工夫をして遠距離をカバーする。

わたした物を複製しても100m程度の通信しか出来ないだろう。

こちらは街に向けて半分ほど降りたところにアンテナを設置して中継する予定だ。

こういった技術を渡さない工夫がいるだろうと、三人で決めていた。

使い方を説明するヴェスタ。

「‥‥あの川沿いの街近辺で見通しの良い場所なら、通信できます。会話ができるので要望を伝えてください‥‥必ず答えられるとは限りませんので慎重に」

ヴェスタの言い方は冷たく聞こえるだろうが、こちらの出せる最大の支援となる。

「‥‥麓の鉱山を今、わたしの仲間が占領しています。鉄鉱石なら2tほど採掘済みのものがあります‥‥それでお支払いとさせていただけますか?」

実際には4t以上有るのだが、半分は隠してある。

本来は領主に攻め落とされても半分遺失させるために隠した。

今回うまく作用したなと内心で微笑むリステル。

見せる顔は悲痛だ。

痛い支払いなのだと見せたいのだ。

ヴェスタはちらりとアイカを見る。

別に見る必要はないのだが、うなずくアイカにヴェスタもうなずき、リステルを向き答えた。

「良いでしょう‥‥町まで一人で戻れますか?」

リステルは迷う。

もう一声支援を引き出したいとも思うが、せっかく大成功の交渉を台無しには出来ない。

「はい‥‥大丈夫だと思います。仲間も探してくれていると思います」

それでリステルとヴェスタ達の交渉は終わった。

ヴェスタ達も欲しかった鉄ももらえるので、悪い話ではなくなった。

「最後に‥‥ひとつだけ」

何気ないようにヴェスタがたずねる。

「この山頂に来たのは初めてでしたか?」

リステルは一瞬だけ迷う。

「いえ、前にも来たことがあります‥‥観光で‥‥」

しまったと思ったが、遅かった。

無言の三人に送られ、外に出た。

「引き渡しの準備が出来次第一度連絡していいでしょうか?町の郊外に準備してから連絡します」

リステルは引き渡し方法を指定してみた。

探りだ。

ちらとジュノと見交わすヴェスタ。

「ええ、そうしてください。運搬はこちらでします」

会釈をして立ち去るリステル。

(だいしっぱいだ‥‥考えておいたのに、裏目に出たかも)

初めてきたと答えて嘘だと見破られるよりも、一度来たが最近だと思われない答えとして観光と言った。

その観光をしたことがないと、答えた瞬間に思い立ってしまったリステル。

気付かないでいたなら表情通りのバイタルで居られた。

見破られたかと一瞬考えた心の乱れは、悟られたかもしれない。

(なにか‥‥いい言い訳を考えておかなければ‥‥)

あとはあの人形は絶対に見つからないよう処分しなくてはとも。

内心の焦りを歩調にも表さず、完璧な演技を続けたリステルだった。

疲れ果て、しかし希望をみつけて歩んでいると見えるように。








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