【第60話:いろいろと新装備です】
挿絵を追加しました!
リステルには申し訳ないなと思ったが、そこまで信用できないのでヴェスタの個室に軟禁して母船を動かした。
「アイ01、水平を保ちながら主脚をできるだけのばして」
「はぁい」
ざぱああと水面を割って銀色の船体が現れる。
アイ02の騒ぎで警戒レベルを上げたので、日中は水面下5mほどに沈めていた。
日光からのエネルギー吸収が少なくなるが、見つかるよりいいとの判断だった。
夜間も水面下に收まる位置にして、ステルス性アップを図っていた。
今朝はどうしても主船体から取り出したいものが多かったので浮上して、ついでに水上機を出す予定だ。
「ちょっといってくるね。第一のハッチをあけるからね」
「おっけー」
「はぁい」
ジュノとアイカに告げヴェスタが船体の上に飛び乗る。
保護スーツがあれば水平にも7~8m飛ぶことができるヴェスタ。
とんと船体の上に降り、上部ハッチをぱかっと開けて降りた。
ジュノはアイカにおぶさるように、後ろから抱きついてたずねる。
「アイカの式ってどうゆう形なの?」
「うーん‥‥マクラっぽい?」
「どゆこと?!」
「見たらわかるよ?」
ひゅううと補助エンジンが唸り、重力制御がサポートする。
湖水の上に波紋が広がりざばぁとスパイラルアークが浮上した。
「お?はやいね」
「アイ01がアイドリングまで動かしていました」
あぁと納得したジュノがながめる中、重さを感じさせない滑らかさですいっと横滑りして湖岸に降りてくる母船。
見上げるとそれなりに大きいのだが、逆にたったこれだけの質量であの星の海を越えてきたんだと、感慨深いジュノ。
「こうしてみると意外とちいさいよねスパ・アク」
ジュノはなんでも略したがる。
「そうですね、開拓船としては規格外に小さいです。ここんとこの流行ではありますね。空間拡張で最低限の質量・人員を送る派遣タイプは。」
ちょっとだけ考えるアイカ。
母船のマザアームCPUから切り離してから、こうゆう仕草が増えた。
以前だと言い淀むことがまずないので、みれない仕草だ。
「外縁に来るには‥確かに少し頼りなく感じますね‥‥予算的にはむしろ余分にかかるような‥‥そもそも‥‥」
アイカの疑問はヴェスタが着陸を素早く済ませたので、後回しになった。
こういった思考の動きも以前のアイカにはないことだった。
「いこ!アイカ」
「あ、はい!」
とんと背中を押されて、アイカも走り出した。
今、なにか大事なことを考えようとしていたのに、と思いながら笑顔で走った。
新しく作った式のことも楽しみだったのだ。
ジュノとヴェスタで第一格納庫から水上機を出す。
ジュノが誘導してヴェスタがタキシングする。
スロープも今度は下りるだけなので、ウインチを使わず下りられた。
そのまま拠点の横に作った格納庫に入れる。
これもマインレーザーで崖にえぐったもので、大きな扉にはカモフラージュをして隠す予定だ。
水上機を収めたら、ジュノと二人で追加装備を運んだ。
ヴェスタの分も少しティア5装備を追加したのだ。
あとは新しい工作機械や備品等が下ろされる予定。
アイカは式を調整しているはずだ。
自走できるらしいので、調整が終わればアイカが抱えなくても出てこられるとのことで、任せてある。
運び出しが終わると、次は納品だ。
本船のストレージに精錬した金属のインゴットを運び込む。
これはスーツの力押しでジュノとヴェスタが担当する。
合せてアイ01とアイ03が交代してローテーション。
なんか二人で引き継ぎなのかピーチクパーチク話しをしている。
アイ同士は高速の会話が可能で、30倍ほどで話し合うのでぴーちちちと小鳥のように聞こえる。
すこしピッチも上がるので甲高いのだった。
今もテーブルの上で話し合っているが、手足も高速で動いているので、高速ボディランゲージなのだろうかとジュノは見ていた。
「くっそ可愛いのだが?」
「ほんとねえ、アイちゃん達は癒やしだよね」
インゴットを運びながらもアイ達に癒やされる二人だった。
ちなみにアイ04もジュノ当番からヴェスタ当番に変わる。
アイ01はジュノ当番になる予定なので、今度はアイ04と話していておしゃべりはしばらく続きそう。
「こ‥‥これが式?なのね?」
「なるほど‥‥まくらだ」
ヴェスタとジュノの評価は「だいじょうぶ?これ?」だ。
ぷくっとアイカが膨れる。
「仕方がないのです!もっとかっこいいのも作れるのですが‥‥今回は機能と作成速度を優先したのです」
アイカの後ろを付いてくるのはころころとタイヤの音をさせる円柱を半分にした姿。
タイヤは機体に隠れて見えないところに有るようで、円柱を半分にして角を丸くしたものに見える。
ようするにサイズ的にも形的にも”まくら”であった。
それが2つのんびりとアイカに着いてくる。
アイカが事前に準備していたマインレーザーとストレージを装備させていく。
ストレージは大型のもので、まくらと同じ大きさ。
ストレージにも大きめのタイヤが2つ付いていて、まくらが牽引する。
「まくら01とまくら02ね‥‥」
「うん‥‥もうそうとしか見えなくなったわ」
ジュノとヴェスタが勝手に名付ける。
驚いてみやるアイカ。
「‥‥ど、どうして二人がアイカの付けた名前をしってるの?」
ずばり当たったらしい。
マクラの中にマインレーザーは内蔵されるようで、レンズだけ前に付いている状態になった。
ちかちかとマインレーザーの電源テストも終わり、早速地下に潜っていった。
「アイカは見ていなくても良いの?」
ヴェスタはまくらだけが階段をごとんごとんと降りていくのを心配する。
ジュノは追いかけていって覗き込んでいる。
「なるほど‥‥タイヤのサスペンションを伸ばして階段をクリアしているね」
本体があまり揺れずに階段を移動する仕組みはそうなっているらしい。
「えと、式は存在を共有する感じなのです‥‥いま階段にもアイカが二人いる感じです‥‥」
ジュノも戻ってヴェスタと見交わす。
『わからん』
「そうですよね~これはAI独自の感覚なのです。アイ達とはちょっと違いますね。まくら達はわたしの身体の一部みたいな感じです」
アイカの説明にこてんとなるジュノとヴェスタ。
「うん‥問題ないならいいよ?」
ヴェスタはこまった眉でぎこちない笑み。
そのヴェスタの肩をポンとしながらにっこりのジュノ。
「アイカに任せるよ!ヴェスタ、アレを出してみようよ!」
「‥‥ああ!うんうん!」
ふたりで運び出してきた箱をごそごそしだす。
「お!あった!じゃぁ~ん!!」
ジュノが箱から洋服を取り出す。
白い上着は軍服っぽいショートコートのような作り。
ヴェスタが取り出したのはフレアのスカート。
ぱぱっとシーツポンチョを脱いで、防護服の上から着込んでいく。
初期には裸同然の保護スーツで平気だった二人だが、再起動したアイカと合流してからは恥じらいを持つようになり、スーツの上になにかしら着るようになった。
今回羊から羊毛が取れたので、三人でおそろいの服を作ったのだ。
ちなみにアイカのは上だけ。
アイカのスーツはくるぶしまで保護膜でスカート状になるので要らないねとなった。
3人で同じデザインの上を着ただけで、ぐっと仲間意識が強くなる。
理由は解らないが欲求がたかまり、三人で一塊に抱き合った。
「なんかいいね‥‥」
ヴェスタが頬を染めて言う。
「うん」
「とてもいいです‥‥」
ふたりもにっこりと頬をあかくする。
抱き合った以上にぽかぽかする三人だった。




