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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第6章
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【第59話:信頼しあうことで】

リステルの話しはそこから早かった。

自分たちが領主と争っているレジスタンスだと言う事。

ヴェスタ達と同じ白い服を着た女性が3人いて、領主に知識を与えていること。

その知識で欲をかいた領主がおかしくなり、住民に圧政を敷き、女性に乱暴をすること。

自分も被害にあい逃げてきたのだと。

リステルは使徒を殺して知識を奪ったことは巧みに伏せた。

質問させなかったり、知らないと嘘無く答えられるよう誘導した。

「あの男は‥‥わたしの母にも乱暴をして‥‥わたしにも‥‥」

顔を覆いしくしくと泣き出すリステルに悪意をもって見ることはもう3人には出来なかった。

唯一ジュノだけが警戒を解かない。

銃口は下げたが、リステルに殺気を向けるのは辞めない。

狙っているぞと常に圧をかけている。

(やはり銀色は信用しない‥‥いや警戒するのが義務と思っているのか?視線にはもう敵意がない‥‥)

リステルはシクシクしながらもしっかりと状況を見極める。

いけると判断した。

「どうか‥‥どうか私達をお救いください使徒様」

そういってヴェスタにすがる目線を送る。

鏡を見て沢山練習してきた視線だ。

ヴェスタは迷っていた。

恐らくリステルの話に嘘はないと感じた。

話にも矛盾がないし、ヴェスタ達のもつ技術を流出したら起こり得る事態とも思えた。

だが本来こういった交渉事はすべてヴェスタの責任で進めなくてはいけなかった。

それが責任者のしごとなのだとは理解していた。

「少し相談したいの。貴女も身体がつらいでしょ?リステル。こちらにベッドがあるので休んで」

そういってヴェスタは自分の個室にリステルをいざなう。

事前にアイカに頼んで武器になりそうなものは取り除いてある。

ヴェスタに従うリステルは反抗のそぶりすら見せず弱々しくつづいた。

今のリステルは乱暴されて弱った女の子なのだ。

そう見えるように短時間だが、練習してきている。

アイカもジュノも痛ましそうに見送った。

ベッドに座らせるとヴェスタは我慢できずそっと抱きしめた。

リステルはヴェスタよりも少し年下に見える。

肌の色合いなども、どことなくジュノに雰囲気が似ていて憎めないのだ。

「大丈夫‥‥もう怖いことはないわ‥‥少しお眠りなさい‥‥悪いようにはしないわ」

そっと横にして掛け物をかけてあげるヴェスタは心からいたわる声で言った。

リステルは内心驚いているが、おくびにも出さずそっと目を閉じた。

それを確認したヴェスタはそっとドアを閉めて外に出る。

リステルは思う。

(‥‥なんだか本当にいい人なのだわヴェスタさんは。ジュノさんもきっと役目で厳しい動きをするけど、目線にはいたわりがあった‥‥)

騙すような事をして申し訳ないなとリステルは思った。




作業室に戻ったヴェスタは、さっそく相談する。

「‥‥ジュノどう思った?」

言葉少なくたずねるヴェスタ。

「信用できるし同情もするけど‥‥わたしの立場では油断出来ないってのが感想だわ」

ジュノの気持ちはヴェスタにもわかった。

「アイカは?」

アイカも次に聞かれると覚悟していた。

意見を述べるのはとても抵抗がある。

AIとしての思考ではあり得ない行動なのだ。

そしてそのあり得ないを出来てしまう自分に戸惑う。

「バイタルを見る限り信用できると思う。話にも論理的破綻がない‥‥しいて言えば整いすぎている?と感じます」

そう言い切ってみると、なぜか胸がスッキリした。

ずっと付いていた嘘を正直に話せた気分だった。

「‥‥‥‥協力はしないわ。物資ならば供出してもいいと思う。ティア3までね。アイカ、ティア3レールガンのライフルを朝までに何丁作れるかしら?」

ジュノは不満顔。

アイカは戸惑いつつも今の母船のラインを考えた。

「今は式を作るのでいっぱいなので、朝10時までで2丁ですね10時40分にはさらに2丁作れます」

ジュノがヴェスタに近づく。

「ダメだよヴェスタ‥‥レールガンなら保護膜を貫通する‥‥」

それは自分たちを狙撃できると言う意味になる。

リステルの申告どおりならば、領主軍の銃は高速弾頭の軍用ライフルだろう。

5-7mm程度の高速弾頭では保護膜は貫通しない。

対物ライフルより火力のあるレールガンは渡せないとジュノは思った。

「そうすると‥‥私達の誰かが一緒に行って協力してあげる?」

ヴェスタはもうリステルを助けるつもりでいた。

その悪意ある領主をそのままには出来ないと感じているのだ。

ジュノは安全保障から武器はわたしたくないと思っている。

助けてあげたい気持ちは一緒だった。

「わたしが行くわ‥‥リステルと一緒に」

ジュノがついに決断する。

万が一騙されていても自分一人ならなんとかなると考えている。

拠点の守りを任せるのは怖いが、母船にいてくれたら戻るまで持つとも考えた。

ヴェスタはとても容認できない。

そこまではリステルを信じきれないのだ。

アイカの言ったイメージは、ヴェスタも感じたこと。

あまりに整然と準備されたように話が進んだのだ。

そうしてヴェスタが迷っていると、ふわっと笑うジュノが言う。

大丈夫だよというように。

「拠点の防衛はヴェスタが引き継いで、アルミは事が片付いてからにしよう‥‥わたし一人なら最悪でも帰投するわ」

ヴェスタもそれが合理的と考えた。

「わかった‥‥ジュノにお願いする。そのかわり接触は最低限にして、ここから出撃してここに帰投すること。リステルたちと合流するのはやめよう‥‥可愛そうだけど」

アイカもジュノもヴェスタに賛成だ。

「わたしもそれが現実的と思います‥‥ごめんなさいヴェスタ‥‥さからうようなことを‥‥」

アイカはヴェスタに反対意見は言えても、反対するには抵抗が大きかった。

察したヴェスタがそっとアイカの肩に手を置く。

「アイカ‥‥ありがとう‥‥うれしいわ、アイカがちゃんと意見を言ってくれて」

そういってにっこりとヴェスタがわらう。

アイカが見たこともない綺麗な笑顔だった。

頬を染め微笑んだアイカが、恥ずかしそうにうつむく。

「ヴェスタ‥‥うん‥‥」

そんな二人を見てジュノもにっこりと出来た。

くるっとジュノを向いたヴェスタが頼む。

「では、ジュノは一切リステルと交渉は持たないでね‥‥全て私にと」

真剣にうなずくジュノ。

「わかった。会話もできるだけ避けるよ」

「ごめん‥‥嫌な役を‥‥」

にっこり笑うジュノ。

「いやじゃないよ、役に立てるのなら嬉しい」

ヴェスタもやっとジュノに微笑んだ。

こうして方針が決まると、何も解決してはいないが不安が薄らぐ。

それは家族と同じように互いを信じられたから。

支え合っていると実感できる。

アイカも含めて役割は有っても、対等なのだと信じられたからだった。




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