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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第6章
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【第56話:考えたこと、気づいたこと】

リステルは巧妙だった。

風下に当たる北西斜面を確保し、岩で山頂側から見えない場所にキャンプを置かせた。

偵察はリステル本人がして、男たちには待機を命じた。

先日の手痛い失敗をもとに、偵察中もリアルタイムに判断が必要だと考えたのだ。

ジュノも山頂から山道を基本に索敵をかけているので、このキャンプを見つけるには大分時間がかかると思われた。

そして万一見つかった場合は、引き付けて逃げ出すよう指示してある。

リステルは味方をも囮にするのだ。

もしも追って行くようであれば上が手薄になるとも考えている。

今従ってきている10名はリステルの親衛隊のようなもので、集団の中でもトップレベルの戦闘力を誇り、領主軍から鹵獲した貴重なライフルも3丁装備させている。

絶対に裏切らないと自身をもって言える人員でもある。

その貴重な戦力を囮にできるのがリステルだった。

先日イレギュラーで部下が接触してしまったことを悔やむと共に、それを活かせないかもリステルは考えた。

撤収させながら潜伏して見ていたところ、何度も上から探索する人員が下りてきた。

リステルは見つかるようなヘマはしなかったが、手厚く探し回る様子からあの人形の評価を上げた。

このようにリステルは要素を与えれば与えるほど、そこからなにかしかを学んだり読み取ったりする。

敵に回してこれほど厄介な相手も居ないと言える。

(特に‥‥あの銀色の髪が怖いな‥‥)

見かけた中で一番動きに無駄がないのがジュノだった。

あとの二人は戦闘員ではないとリステルは判断していた。

フィジカルは相当だが、動きに無駄が多く非合理な動作も多い。

ジュノとヴェスタとアイカ。

銀金黒とリステルは髪色から識別した。

三人の白服をみたリステルは、彼女達もまた神の使徒なのだと定義する。

服装の類似から、同じ部族の可能性も高いと判断する。

(そうすると‥‥この装備を見つかれば即敵対してしまう‥‥あの人形もだ)

リステルは交渉する気でいたのだ。

領主ではなく、自分たちに味方してほしいと。

神々の言語をマスターしているリステルはそれが可能だと試算した。

普通に可能性を考えれば、派遣されて来たタイミングからも領主への援軍だろう。

最低限領主に味方しない所までは頼みたいと思っている。

交渉の席につくには何かしら提示できるものが必要だと、そこまで考えての山登りだった。

青い炎が降りたと、それだけでそこまで思い至る。

それがリステルだった。

(あの銀色さえ居なければ‥‥制圧できると思う‥‥逆にあいつがいたら絶対無理だな全滅する)

リステルの今取れるシナリオは2つ。

一つは3人の誰かを人質にする事。

もちろん傷つけず、交渉後は解放する事が絶対条件。

もう一つはカードを晒すことだ。

正直ほど相手から信頼を引き出せるカードはないのだ。

正直に見えるでは、決して通らない。

どちらにしてもリステルの好きなシナリオではなかった。

リスクが大きすぎるから。

そこまで考えてピンとくるリステル。

(‥‥そうか‥‥そうゆう手もあるか。賭けるのは自分の命だけにできる)

じっと考えを深めるリステル。

使えるものが他にないかと、思考を絞り尽くす。

(うん‥‥気は進まないけど、一番成功する可能性が高いな。スーツの電源ももうすぐ切れてしまうし‥‥)

保護スーツを慎重に運用していたが、充電できる設備がないので、切り札としてしか使っていない。

それでもいつかは切れてしまうし、今現在も少し消費している。

ちらと下のキャンプ地を見やる。

指折りで日付を確認して、今日明日は大丈夫だなと思う。

(どうせそろそろ与えないといけなかったしな‥‥)

表情に苦悩をにじませるが、リステルは決断した。




ジュノは半日で戻れる範囲を索敵範囲とした。

前と違い、アイ04が居るので単独ではない強みが有る。

「ジュノそろそろもどらないと」

アイ04が時間を気にしてくれる。

ジュノは集中すると時間感覚が少しおかしくなる傾向がある。

丸一日でも作戦行動を取れてしまうのだ。

タイマーのようなものでは万が一隠密が求められた時に致命的だ。

状況をみて止めてくれる相棒は心強かった。

「ありがとアイちゃん。お昼までにもどろうね」

そういってにっこりできる、心の余裕ももらえるのだ。

降りてきたペースと変わらないか、速いくらいのペースでもどるジュノ。

拡張MAPには索敵済みのエリアが色濃く表示されている。

地形データに連動参照するので、移動軌跡から地形の死角を抜いて表示する。

そうしてマップを埋めていって、安全保障とする予定だ。

ふとマップを見ていて、ジュノが違和感を覚える。

(あれ‥‥この西側がぜんぜん見えないな‥‥)

実際の地形を見合わせて納得する。

丁度ジュノの移動ルートや山頂からの視界で死角になるエリアがあった。

こういった部分に気づくための索敵であり、マップや地形データの参照だった。

思いがけず拠点に近く、それなりの面積の死角があるのだと気づいた。

(午後からもう一度探ってみよう)

ジュノはヴェスタやアイカにお昼に戻ると言ってあったし、お腹も空いてきていた。

(アイカ‥‥美味しいご飯作ってくれているだろうしな)

アイカのご飯を美味しいと食べてあげることも、今のアイカには必要だと考えるジュノ。

「ごはんなにかなあぁ」

「ふふ、きっとアイカママのご飯はおいしいですよお」

アイ04も保証してくれたのだった。


ふっとジュノはまた後ろを気にした。

もう拠点が近い外輪山の上だ。

戻る時はこちら側からあちこち位置を替えて戻っていた。

万が一を考えてだ。

今日は少し西側から降りたのだが、風にふわりと何かが臭ったのだ。

(いやな‥‥臭いだったな‥‥なんだっけこれ?)

しばらく立ち止まってみたが、それ以上は感じなかったので、拠点にもどることにする。

「ごっはん、ごっはん!」

「ごっはん、ごっはん!」

にこにこしてアイ04と目をあわせ、共に歌いながらもどるジュノだった。



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