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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第6章
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【第55話:うけとめること、すすむこと】

「‥‥今、アイ02の最終充電時から20時間経ちました‥‥以上を持って捜索を打ち切ります」

アイカが静かに告げた。

それはアイシリーズが最大限、スリープ状態で保てる電源の持つ時間だ。

なにか問題が有り動けず声も出せなくてスリープに入ったとしても、これ以上電源が持たないと判断したのだ。

そっとアイカを抱くジュノ。

ヴェスタもふんわりと二人を抱きしめた。

言葉はなかったが、二人の気持ちがアイカを支えた。

崩れ落ちそうになるアイカの心を支えてくれたのだった。

じっと温度を伝えあう3人には葬送の気持ちにあふれていた。

短い間だったが愛らしいアイ02の姿が、三人にはしっかりと記録されていた。

「すすもう」

ヴェスタが静かに、はっきりとそういった。

しっかりうなづいたジュノには決意の光。

同じくちいさくうなづくアイカにも前に進む気持ちが宿った。


ヴェスタとアイ03・04で引き続き拠点の整備を準備しつつ、アイカとジュノは採掘計画も進めていく。

「コンセプトどおり進めるなら、ここから地下に掘り進むのがいいと思うの」

「外を経由しないと言う事ですね‥‥確かに。ここで欲しい鉱石は錫1t・銅3t・鉄2t・アルミ4tです‥‥ティア6を目指すためには、今の容量ならナノマシンプールを満タンにしないといけないです」

「‥‥結構な量だね‥‥鉱石は良いとしてNP (ナノマシンプール)はどうやって増やせばいいの?」

ヴェスタもジュノもアイカに頼る。

今はアイカに考える時間を与えないほうが良いと知っているから。

「そうですね‥‥効率がいいのは希少金属です。チタンやコバルトや金なら少なくてもかなり稼げるので‥‥今までも優先してNPに変えていました」

アイカの表情は難しいと感じている。

「この星も岩石惑星なのだし‥‥地下に行けば行くほど重金属にあたりやすい?」

つつつんとアイカが立体モニターを操作して、惑星モデルを出す。

横に事前調査と、現地調査のデータや差異が別レイヤーで描かれる。

「そうは言いきれませんが‥‥マントル上層での熱変成が金属結晶を引き寄せやすい。特に火山帯では、地表近くに重金属のポケットが生まれやすいんです」

ちょっとだけアイカの表情が上向く。

ジュノとヴェスタはこっそり見合わせてにこっとする。

「‥‥掘る価値はあるかもです。複合材を補強しながら縦坑をほって‥‥‥‥」

アイカが深い計算に溺れていく。

実務のレベルにアイデアを落とし込もうとしているのだ。

こういったシュミレーション系は本来なら有り余る母船のCPUを併用するのだが、禁じられた今はアイカの脳力を最大限に求める。

「安全性も含めると慎重にいきたいわ‥‥アイカ少し時間がかかってもいいからしっかり試算して」

坑道に向かうヴェスタからも声がかかる。

ヴェスタもサポートのアイ03もおでこにライトを点ける採掘モードだ。

「はい、お昼ころまでには具体化します。ごはんもつくりますね!」

アイカに微笑みが戻る。

うんうんとジュノもうなづいて、一旦解散となった。

アイカは食事の準備を始めながら、ゆっくりと考える。

(こうして余計なことを考えないで済むように‥‥気をつかってくれたんだ‥‥うれしいな)

心がふんわりとあたたかい‥‥一人なら耐えられない痛みもこうやって乗り越えられるのだと知った。

(そうか‥‥ジュノもヴェスタもこうして歩いてきたのだわ‥‥なんてやさしくて強いこころ)

アイカの中で二人の評価がまた一つ上がる。

それはとっくに家族のラインを超えて上がっていたのだった。




ジュノはしっかりと装備を整え、拠点を出た。

定期的な周囲索敵をルーチンに入れた。

今まで人数の少なさを言い訳にしてこなかった。

これからは自分がそこで無理をしてでもするとジュノは決めていた。

すっと半眼になったコバルト色の瞳には決意がみなぎる。

(ゆるさない‥‥)

心には燃え盛る炎があった。

周囲に未発見の敵が居ると、ジュノは決めていた。

事故ではないと。

大事な妹を悲しませ、愛くるしいみんなのアイ02を殺した者をジュノは許せないと思う。

同時にそれは自分の戦闘指揮官としての落ち度でもあった。

後悔はアイカ以上に深く鋭く心をえぐった。

心と裏腹にジュノの気配は沈み込み隠される。

潜伏のスキルが高いので、素人では首を切られるまで気づけないレベルでするりと動き出した。

プラチナの髪がふわりと流れ、空気に溶けるように消えた。


ヴェスタは採掘に当たる。

そもそもこの拠点は鉄と銅鉱石の鉱床直上に作った。

10mも潜れば鉄の鉱床に当たると計算してあった。

「うん‥‥重力波探査の結果通りね‥‥この下も同じ精度が期待できるわ」

サポートにきているアイ03とも共有し掘削を横方向に切り替える。

鉱脈は東西に伸びていて、二人で左右に別れて横坑を伸ばしてしまう作戦だ。

「アイ03、なにかあったら言うのよ?あなたの命より大事なものはないからね‥‥機材なんか捨てていいからね?」

「ヴェスタありがとう。気をつける!」

アイたちはヴェスタにもジュノにも敬称はつけない。

そうして欲しいと望まれたから。

アイカにだけママとつけるのは仕方ないと皆思ってくれている。

(ヴェスタに褒めてもらえるようにがんばろう!)

機材はアイ03の持つマインビームの方がティアが上だ。

装備としても軽くなるのでそのように配備したのだ。

電源も拠点から引き込んだ、バッテリーからマインビームに有線で引いている。

今だけかもしれないが、アイ達に少しでも無駄な電力を使わせない配慮が有る。

せっせとマインビームを操作してアイ03は掘り進んでいった。

青いマインビームは溶かすように鉄鉱石を分解し吸い込む。

マインビームからつながるストレージは少し重いのだが、アイ03は気合で進む。

(アイ02、あなたの分もがんばる‥‥アイ達が有能だと評価されたら‥‥それはあなたの評価でも有るのだもの)

すこしだけ仲間を失った悲しい気持ちもあるが、それ以上にアイ達は道具でもある自分たちに誇りをもつ。

それは自分たちをつくってくれた、大好きなアイカママの評価にもなるのだと。

誇りに思ってもらいたいなと、考えるのだった。

こうして3人と3体のAIは喪失を受け止めたのだった。

2人と4体ではなく。




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