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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第6章
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【第53話:思いやりは誇り】

この山には山道が有ることが判明した。

昨夜お散歩がてらとアイカがアイ02を連れて、月見しながらプラプラしていて発見した。

いちゃいちゃベッドは今までよりだいぶ広いので、3人で寝ていてもこっそりアイカが抜け出す余裕があった。

アイカはなるほど大きなベッドを作ってもらって正解と思った。

いつも絡まりあって寝ていたので、一度寝ると皆が起きるまで身動きできなかったのだ。

それはそれで楽しい思い出だったが、アイカは基本的に寝ないので時間を有効利用できるようになった。

そうしてぷらぷら散歩していて発見したのだ。

ちゃんと整地したりしていない、獣道のようなものだったので、降下時に発見できなかったようだ。

早速監視カメラや簡易センサーを設置しようと、朝食時に提案した。

「それはそう。大至急だわそれ」

「簡易センサーわすれてたね、ごめん。回収してきたのと予備で60個位あるから、さっそくばらまくね」

ヴェスタとジュノも賛成で、食後すぐやろうと決まった。

「監視カメラも4台あるのだったわ‥‥ごめんなさいアイカ。たるんでいたわ」

ヴェスタの指示でカメラはアイカが担当することとなった。

「初めての拠点移動でしたので、これから活かせばいい教訓だと思います!」

アイカの意見が全員の総意となって、優しい笑みの朝食を取り戻した。

アイ02は誇らしくアイカを眺め上げた。

(アイ達のママは優しいのです!)

その思いやりと言う付加ステータスをアイ02は新たに音声データに付与した。

ジュノのお茶が少なくなったので、継ぎ足そうとアイ02が動いてアイ04も気づいて手伝ってくれる。

二人で頑張ってお茶を足すと、ジュノが気づいてよしよししてくれる。

02も04も一緒くたにむぎゅっと抱かれて、ちょっと照れくさかったアイ02だった。

「もう、アイちゃん達もいい娘ね、よしよし」

嬉しそうにジュノが言うので、アイ02も嬉しくて微笑みが深くなった。




アイタイプの義体は保護スーツや武装と一緒で充電が必要だ、軽量化の為にあまり容量の大きいバッテリーではないが、基本的に船内で使用する予定でアイカが設計したので今までは問題なかった。

新しい拠点でもヴェスタ達三人のスーツ充電のため、食卓と各ベッドに非接触充電装置が置かれている。

アイ達は充電の残りをみて、一日に1-2度そこで充電していた。

大体8時間程度活動すると充電が切れるので、気をつけていた。

アイカに連れられて屋外に行くときは、基本アイカから離れないようにアイカに言われていたが、今日の作業は別々のカメラ同士で無駄がないようにと、別れて行動していた。

新しく霊子・電波の通信装置も実装したので、他のメンバーと同じで離れていても会話ができる。

電波でも多少障害物を超えるので、基本消費電力の少ない通信を選んで会話する。

「ママ!これでいーい?」

監視カメラの映像をアイカが無線で受取り、画角と可動範囲を設定していく。

「うんいいよ。アイ、ありがとうね」

ママアイカに褒められてご満悦のアイ02はてててと走って戻っていく。

屋外用にと作ってもらった靴も可愛いので気に入っている。

アイカとおそろいの白いブーツだった。

もちろん4人のアイ達全員分有るので、アイ02だけの特別な装備ではないのだが、嬉しいものは嬉しいのだった。

走ってアイカの所までくるとぴょんと飛んで、ぽふっと抱きつく。

着艦終了である。

まるでアイカの艦載機のように動き回るアイだった。

「ティアが上がってわたしが『式』を動かせるようになったら、アイ達を式にしようかなあ」

「うれしい!アイ02はそうなりたいよ!」

そうしたら本当にいつも一緒に居られるなと、アイ02は大喜びした。

式とはアイカ達戦闘もできる義体に装備される攻撃装置だ。

霊子無線制御で稼働させる自立行動のできる兵器で、基本的に魔法を使い攻撃する。

実力のあるAIと義体の組み合わせなら、複数の式を操り一人で隊を制圧できる火力を持つ。

今の義体でもアイカは複数制御が可能なAIなのだが、式の方がまだ作れないのだ。

ぎゅっと抱きしめてくれるアイカに深い愛情を感じたアイ02だった。

カメラはあと2つあるので、火山口の外輪山を二人で左右に別れて周り、登山口と拠点の中間辺りで設置した。

「アイ02、一回電源入れてちょうだい」

アイカが受信のチャンネルを開き3台目のカメラを探す。

「あれ?アイちゃん聞こえないかな?‥‥霊子で呼ぶかな。アイ02応答して」

途中から指向性霊子通信のナロウビームをアイ02が向かった方向に向けた。

そこでやっと異常に気づくアイカ。

「アイ02?!」

アイカは身体強化魔法をまとう。

これはAI達の使う魔法のなかでもメジャーなもので、保護スーツと同じ動きをする魔力の膜をまとうのだ。保護スーツの行動補助と併用で動くので、短時間だが強力な力を発揮する。

地を蹴ったアイカが外輪山を多角形のようにショートカットして飛ぶ。

1蹴りで20-30m飛ぶので、円を描くより距離が短くなる。

その僅かな誤差のような距離さえも縮めたい気持ちがアイカにはあった。

身を焼くような焦燥だ。

「アイ!!返事をしてぇ!!」

最大出力で叩きつける霊子波が、あらゆる生き物を震わせた。

意味を受け取れるのは周波数を合わせた霊子通信機を持つものだけだが、ノイズとして強い霊子波は生身でも受け取れる。

アイカの放った霊子の咆哮は、山頂付近の全ての生き物を怯えさせるほどのものだった。

鳥たちが一斉に飛び立ち、小動物は隙間や地に潜り隠れる。

まるで巨大な魔物が現れたかのように。

アイの咆哮は巨大な竜の叫びに匹敵する出力だった。

「おねがいよ‥‥へんじして‥‥アイ‥‥」

アイカはもうこぼれ落ちる涙が抑えられなかった。

既に火口を一周してしまっていたから。







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