【航海日誌3】
「‥‥いや、仕方ないのよ。‥‥うん仕方ないのだわ」
遂にまた航海日誌の存在を思い出したヴェスタ。
今日は新拠点を作り引っ越しして、自分の荷物を展開した所で日誌を見つけた。
見つけないように段ボールの奥底にしまったのに、忘れていて取り出してしまったのだ。
「くっ‥‥見てしまった以上は書かなくてはいけないわ」
ヴェスタは真面目なのか不真面目なのかよくわからない基準で日誌を書こうと端末を開いた。
Ship’s Log ’527/1/24
Location: Planet Alduna/Lemuria Sector
Status: Tear4
日誌を書くの忘れていました。ごめんなさい。
色々と問題があり記録を残せませんでした。
最近ジュノがとても優しくしてくれます。
大好きなのです。
長い旅をしてきたのでとても疲れました。
明日からがんばろうと思います。
「‥‥これ‥‥日誌ではないのでわ?」
過去のページをさらさらっと参考にと、読んでみた。
それはひどいものだった。
そもそも毎日書いてない時点で日誌では無くなっていた。
最後に書いた日誌を見て、あははと乾いた笑いが起きる。
「これではただの日記だわ‥‥いえ日記としてもレベルが低すぎます。キャプテンとしての自覚が足りませんでした」
ぱたりと端末を閉じスリープにしてから目を閉じるヴェスタ。
まぶたのうらに描かれるのは、危険と波乱に満ちた開拓の日々‥‥ではなくジュノとアイカの裸体だった。
(はやくしないとジュノがアイカを堪能しつくしてしまうわ‥‥)
カッと目を開いたヴェスタにもう迷いはなかった。
そこには確固たる信念が宿る。
Ship’s Log ’527/1/29
Location: Planet Alduna/Lemuria Sector
Status: Tear4
日誌を書くの忘れていました。ごめんなさい。
色々と問題があり記録を残せませんでした。
最近アイカがちょっと大きくなり、とても可愛くなりました。
大好きな妹なのです。
長い旅をしてきたのでとても疲れました。
明日からがんばろうと思います。
「よし‥‥書いたわ」
コピペしたものを少し直して完成させた。
もう書くという作業では無くなっているのだが、そこはもうヴェスタを迷わせない。
「これで良いのです‥‥」
パタリと端末を閉じ、そっと段ボールに戻す。
そのうえににも本を一冊乗せて、見えないようにした。
「また今度ちゃんと書くわ‥‥たぶん」
すこしだけチクリと胸が痛むのは、ヴェスタに残された僅かな良心だった。
その痛みも新しいベッドに横たわるアイカとジュノを思えば一瞬で癒えて消えた。
ぱたん
ドアを閉めていちゃいちゃルームに向かうヴェスタの足取りは軽い。
るんるんである。
そう‥‥そうやってヴェスタは生きていくのだった。
日誌をなんとか遠ざけて‥‥




