【第51話:がんばるちいさなアイ02】
北の島まで飛んできたスパイラルアーク。
アイカが船内ネットから遮断されているのでいろいろと手が足りず、小型の義体を4体作り自身のコードをコピーして分け与え子供を作った。
そのうちの一人であるアイ02が、第二船室で羊たちの面倒を見て、芝にもせっせと水やり。
ここの木製チップの土壌には、芝を植えてしっかり芽が出てきている。
毎日の水やりが必要で、純水を積んできてもらっている。
現地でもどうやら湖に下りるらしいので水は困らないなと、アイ02は安心だ。
(羊たちも落ち着いてくれたし、一旦ブリッジにあがろうかな?)
アイ達は身長20cm程の小さな義体に声帯がないので、みーみーとしか泣けないが、思考は一人前にする。
仕事にも意欲的に取り組むので、皆にもよしよしとされる。
アイ02もよしよしが大好きだ。
すでに『よしよし』は最優先報酬関数として認識されている。
AIとしても汎用型・ボトムアップ型として組まれているので、日々進化もしている。
本来ならアイカが指揮下に置きネットワーク内で使うタイプのAIなのだが、今のアイカは船内のネットワークから切り離しているので、このアイ達の小型義体を使い遠隔地の作業にあてている。
今現在アイは四体製造され、01は主にアイカのサポートでブリッジに居る。
03と04はそれぞヴェスタとジュノにマスコットとして愛でられる役目で、ほとんど働かない。
そういった現状に実はアイ02は不満を持っていた。
本来のAIがもつ思考ではないのだが、なにぶんコピー元のアイカが特殊なので、あつかいの難しい子になっていた。
(どうしてわたしだけよしよしされる頻度が低いのかな?いっぱい頑張っているのにな)
チェっと言い、こつっと小石を蹴ってしまうのであった。
蹴られた小石は、恐らく羊の積み込み時にでも紛れ込んだものだったろう。
小石が壁際に置いてあった農具にあたった、微妙なバランスで立てられていた農具が傾いていく。
(あ!しまったたおれちゃう)
てててとアイ02は走って行ったが一歩間に合わず農具が倒れた。
農具が倒れた先にたまたま台車に積まれた工具のレンチがあった。
だれかが片付けたものだが、バランスよく、たまたま収まっていたのだ。
農具がレンチをレンチがテコで台車を、台車がラッシングの緩みで動き出し、もう既にアイ02が何をしても止められない慣性が動き出していた。
(あわわわ!どうしよう!アイカママぁ!!)
必死に呼びかけるがアイカは艦内の回線につながっていないので、インターフォンを使わないと話せない。
そもそもインターフォンでは「みーみー」としか言えないアイ02には、何も伝えることが出来ないのだが。
そもそもそんな事を考える余裕は無かった。
ガン、ゴン、ドガン、ズガガと何故かどんどん慣性が大きくなっていき最後に動いた巨大な荷役カーゴがレールの上を走っていく。
(あぁ‥‥神様‥‥)
アイ02にはもう神頼みくらいしか残っていなかった。
ズガアアン!!
荷役カーゴが壁を突き破り、メンテナンスハッチを吹き飛ばした。
その先にはシリアスシャフトが有り、かなり重要なパイプや配管が通っていると、アイ02は船の構造展開図から読み取った。
ぴしゅぅぅぅーーーー!!
(あぅあぅ!なんか出ちゃいけないような音がしている!!‥‥し‥‥知らせなきゃ!)
アイ02は壁にある赤い緊急ボタンを押そうとするが、人間用の高さに有るので届かない。
むなしく三回ほどぴょんぴょんしてみて、唇を噛む。
(なんであんな高いところに!)
そこでアイ02はひらめく。
自分の身長にアレを足せば届くと。
駆け戻ったアイ02が飛び上がり、羊のいる牧場の入口ロックを開ける。
アイ型義体は自身の身長の3倍ほど飛び跳ねる、運動能力を持っていた。
1mも飛ばないのだが。
たたっと飛び乗ったアイ02が一番仲の良い羊のメエちゃんにお願いする。
「みーみー!みー!」(たすけてメエちゃんボタンにとどかないのよ!)
「めえぇえぇ!」(まかしときな!しっかり捕まってなよ、お嬢!)
何故か会話が成り立ち、メエちゃんは緊急ボタンを目指し突進した。
「まずいです‥‥エネルギーの減り方がおかしいですよ?ヴェスタ?!」
アイカの顔色が悪い。
「え?!何もしていないよ?」
あわあわするヴェスタが操船関連のタスクや操作を再確認。
「異常ないよ!」
二人がかりで色々チェックしたが、不明な点がない。
「火器管制関係でも異常はないよ?!」
ジュノがそちら方面も調べてくれるが異常がない。
「ヴェスタ‥‥まっすぐ予定地に‥‥もうぎりぎりだよ」
「りょうかい」
ゆっくりフライバイして着水地点を選ぼうとしていたスパイラルアークが、緊急着水する。
「みんな!掴まって!!」
『あい!』
アイカとジュノがそれぞれベルトを締め直し、ハンドルにつかまる。
アイカは肩にいたアイ01も抱っこして掴まった。
どっぽーーん!!
がくがくと少し揺れたが、そこは天才操縦士のヴェスタ。
無理な侵入からでも最低限のショックで着水した。
船体の支持脚が4本それぞれに伸び、湖底を捕らえた。
予定よりちょっと深い位置だが、水平を保ち、上部ハッチは水没せずにすんだ。
「みんなごめん。大丈夫?ゆれたね?」
「いや‥‥あの状況からよくこれで済ませてくれたよ‥‥うん船体にも異常なし」
ジュノが素早く数少ない後付の外部センサーで確認した。
「主機のエネルギーラインに損傷がありました。今ラインは緊急停止したので、これ以上のプールからの損出はないのですが‥‥残量が2%に‥‥クスン‥‥いっぱい節約してがんばったのにぃ」
ベルトを外したヴェスタとジュノがアイカを慰める。
よしよしとしながらジュノ。
「しょうがないよ‥‥なにか固定が甘いものでもあったのかな?ちょっと荷室を見てくるよ」
ヴェスタもぽんぽんとアイカの頭をたたいた。
「アイカは他に異常がないか調べつつ、主機を落として。わたしは第一を見てくる、ジュノ第二よろしく」
「あいあいキャプテン」
そうして予想外の着陸となったが、それほどずれもなく火口の湖に着水したのだった。
「みー‥‥」
ジュノに抱かれてもどったアイ02は、ぽろぽろ泣いていた。
「この子が第二で危ないところだったわ‥‥アイカ話しを聞いてあげて。わたしはもどって、逃げ出した羊を捕らえてくる」
ジュノがアイ02を手渡してくれる。
アイカはアイ達と電磁波通信でつながるので、近くにいると会話ができる。
壁は貫通しないので、同じ室内に居ないと話せないのだった。
(アイカママ‥‥ごめんんさい‥‥クスン‥‥わたしのせいなの‥‥)
(どうしたの?話してみて)
いろいろと不幸な偶然で、シリアスシャフトをぶち抜いた話をした。
アイカはアイ02をそっと胸に抱きしめる。
(ごめんね‥‥ママが悪かったわ‥‥通信する手段を考えないとね。羊は01が行ってくれる?)
(はいママいってきまーす!)
アイ01が元気に走っていた。
アイカの胸でアイ02は泣き続けている。
(ごめんなさい‥‥ママ)
よしよしとしてまた胸に抱くアイカ。
(貴女は悪くないのよ‥‥無事で良かったわ‥‥)
そうしてアイカに撫でられてもアイ02の心には罪悪感が溢れていたのだった。
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