【第50話:島の歴史がかわった日】
ヴェスタ達の向かう北の新しい島には、実は多くの住人がいる。
ほんの100㎞ほど南に土地が有ることは知られていたが、海に恐ろしい魔物が居ることも知られていた。
南に向かったものは決して戻らないのだ。
そうして島の中でも南側は禁忌とされていき、北側の平地に町を築いていた。
この割と大きな島には中央に火山がある。
標高は3000mを超える大きな山で、頂上に綺麗な火口が開いている。
この島自体が火山によって形成されたのか、各所に大小の湖を持ち、山から流れ出す水が川となりいくつか北の海に流れ出ている。
河口も北に集中するため、海も北側が豊かで、その昔から北側に村落は多かった。
この島自体がもっと北にある大陸の国の植民地で、肌の色が白い支配者たちが統治している。
黒い肌の原住民はひどい扱いではないが、搾取され不満をもって生活をしていた。
白い肌の支配者たちは、彼らを“守っている”と信じていた。
だが、原住民の若者たちはその「保護」の裏にある鎖を見抜いていた。
北に流れるもっとも大きい川の側に、古くから人があつまり大きな街を作っていた。
彼らは船を巧みに操り、川伝いに交易をするまでの文化を持っていたのだ。
そこに北の大陸から巨大な船が来て、新しい知識を浸透させていった。
知識は数十年の内にこの島をすっかり替えてしまい、住民はより多くの知識を求め豊かな生活を望むようになっていた。
この街には数千人の住人がおり、大きな市街地を形成した。
北の大陸からも、当時500人以上の入植者がいた。
今でも年に数回大陸から船が来る。
人を運び、富を持ち去るために。
今では混血が進み、色々な肌色合いの住人が増えていった。
支配者サイドとしては血がまじるのは好ましく、推奨し援助金すらだした。
生まれによる差別をとりしまる法も施行され、住人は穏やかに交わっていった。
3世代ほど進んだ今では純血の人のほうが少ないほどだった。
この島には北側にいくつも村落があり、特に大きいものが町として6箇所にある。
すべて川沿いで、各地で取れるものが中心たる街に集まり、より豊かな世界を形作った。
海岸線に4つは海産物や海塩などのため。
大いな湖側の平原に一つ、農耕のため。
山間部に採掘のための町が一つずつ出来た。
そうして島の世界は安定し発展していった。
つい一月前ほどから、この島に変化が訪れた。
怪しい姿の異人が、とてつもない技術を運んできたのだ。
その美しい女性たちは白い不思議な衣服をまとい、身体のラインを浮かせる艶めかしい姿で街に表れた。
支配者たる領主の貴族は、早速城に招き話しを聞いた。
信じられないほどの技術を見せられた。
先ずは飛び道具の性能が桁外れだった。
作り方まで指導を受けた支配者は、大きな音も発するその『銃』というものに夢中になった。
この島で取れる素材で『火薬』と『銃』が量産されるようになると、領主の貴族にはさらなる野望が産まれた。
『この銃なら王家を打倒し、自分たちこそが支配者になれるのでは?』と。
貴族は毎年くる大陸からの船で、少なからぬ鉱石や貴金属、美しい住人などを持ち去られていた。
代わりに人足となる人を降ろしていく。
不満はない生活だったが、さらなる欲を持ってしまったのだ。
それくらいこの技術には価値があった。
3人の白服の女性は、大事にあつかわれ、さらなる技術もいくつか授けてくれた。
より高度な採掘技術や、船舶の設計。
さらなる兵器の情報だ。
それは大型の『大砲』といわれる銃だった。
まだ数は作れていないが、大陸にある攻城兵器と比べたら、レベルの違う射程と威力を持っていた。
『これをそろえたら‥‥勝てる』
そう領主が思ったのも当然であったろう。
中世初期に近代兵器をわたしたのだから。
鉱石の精錬法や、鋳造技術、そしてライフリングされた精密な銃身は、数百年先の技術だった。
そうして密かに軍船と揚陸艦が数隻作られ、軍備も整ってきた頃革命が起きた。
今でも少ないながら南側に村落をかまえていた原住民をまとめ上げ率いた軍略家がいたのだ。
その者は天才であったろう。
街で産まれ、貴族に召し抱えられて務めていた家族の生まれで、島でも恵まれた家族だった。
ところが領主はさらなる欲を持ち、住人や家臣にもそれを振りかざした。
まるで王になった気分だったのだろう。
そのものの母はまた優秀な人材で、恵まれた容姿を持ったハーフだった。
小麦色の肌に美しい金の髪と青い瞳。
文官として優れていたのもあり重用していたが、領主はその身柄を求めた。
断る家族を捕らえ、思い通りにしてしまったのだ。
夫は密かに処理され、息子も後を追った。
美しい妻と可憐な娘は領主に気に入られ、大変可愛がられ妻は新たな子を孕まされた。
娘は隙をついて逃げ出し、最初に領主の欲の源たる三人の娘を襲った。
二人は溶けるように消え、慌てて逃げようとした最後の金髪を銃で撃ち殺した。
その者の不思議な服はリングだけを残した。
娘は天才だったので、それがどういう仕組なのか直感で理解してしまう。
保護スーツの力を得た娘は、兵士たちに追われながら南へ逃げた。
一人では出来ることは限られていると知っていたから。
そうして娘は衣服の下に保護スーツをまとい、殺した異人の持っていた装備も奪い使いこなした。
娘は天才だった。
愚かな領主と違い、その技術の危険性や、秘匿しなければいけない理由も気が付いていた。
ハイテクは隠した方が効果が高いのだと。
母の手伝いをしながら学んだ天才の娘は、殺した異人達からも知識を得ていた。
この者達を領主に残しては決して勝てないと、最初に排除したのだった。
領主より優先と。
娘は数年かけて南側の原住民と鉱山の町を手に入れやっと旗揚げした。
充分に勝てると判断したのだった。
娘の名はリステル。
まだ年若いが、この星最高の天才にして、美しい少女に成長していた。
目立たない砂色のローブの下に、保護スーツとハイテクの装備を隠し、美しい容姿すら利用し一軍を作り上げてしまった。
そして領主は気づいてないが、この鉱石を産する町こそ、この島の生命線と最初に抑えたのだ。
それが現在のこの島の状態だった。




