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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第5章
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【第49話:拠点を移します】

作業小屋のテーブルを片付けてしまったので、久しぶりに寝室兼リビングの二人の船室でご飯を食べる3人。

アイカの椅子がないので、それだけはジュノが作った椅子を一つ持ち込んだ。

食事は簡単にと携帯食のバーで済まし、溶かすだけスープで飲み込んだ。

この部屋にも収納式のミニキッチンがあるので、簡単な調理や洗い物ができるのだった。

「なんだか懐かしいよ、航宙中はずっとこうだったじゃない?」

ジュノが思い出しながら呟く。

「ごめん‥なんかあんまり覚えてないや」

ヴェスタも思い返してみて、ろくに覚えていないことに思い当たる。

「わかる!」

ジュノがすぐに切り返した。

「なんだか記憶に残らないよね、毎日同じようなこと繰り返したし」

「そうそう、イベントがなかったよね。アイカとも沢山話したのにあんま覚えてないや」

ヴェスタもつづけた。

「そうなんですね?アイカにとっては‥‥あれ?‥‥」

「どした?」

「だいじょうぶ?アイカ」

アイカが言葉に詰まったので、ジュノもヴェスタも心配する。

「いえ‥‥おなじデータとして‥‥残っていますと言いたかったのですが‥‥」

アイカは考え込む仕草。

その姿すらレアだと二人はつばを飲む。

ゴクン

「‥‥不思議です‥‥同じデータのはず無のに‥‥この星に来てからの言葉には色々な‥‥なんだか不思議なのです‥‥‥‥大事に感じてしまう」

そっと二人がアイカを抱きしめる。

いつもよりずっと優しくふわりと包まれてアイカは心地よさに目を閉じてしまう。

「‥‥アイカは幸せです。二人に大事にしてもらって」

「アイカは大事な家族だよ」

「うん‥たった一人の妹よ」

ジュノとヴェスタの言葉にもじわりと胸があつくなるアイカ。

遠慮がちにアイカもそっと二人を抱き返した。

そうして三人がふんわりと温まる時間をすごした。

優しい時間だった。




「私がキャプテンとして責任持ってつとめるわ」

「いいえ、ここは戦闘指揮に従ってもらうわ」

一歩もゆずらない二人の剣幕におろおろするアイカ。

「あ‥わたしはじゃあ操縦室で‥」

『ダメ!』

今夜どっちのベッドでアイカが眠るかの言い争いであった。

あんなにやさしい時間をくれた二人が、どうして争うの?!

「もう‥わたしの為にあらそわないで‥アイカ悲しいです」

「ち‥ちがうのアイカ‥これは」

「そうよ、争っているのではないのよ‥仲良しよ」

むぎゅっとアイカを抱きしめるジュノがさり気なく連れ去ろうとするので、そのまま二人ともヴェスタに引き込まれて、下のベッドに転がり込む。

「きゃっ」「あいたぁ」

ヴェスタに抑え込まれるように二人とも抱かれる。

むにゅむにゅとヴェスタとジュノの柔らかい身体に包まれたアイカは、真っ赤になる。

「もう面倒だからこのまま寝る」

「せまいてばあ!」

「‥‥あっついです」

ジュノが一番下でアイカをサンドイッチするヴェスタ。

このベッドは落ちないように少し縁に立ち上がりが有るので、シングルベッドの空間に三人の身体が収まって動かなくなった。

「‥‥まいっか」

ジュノがあきらめてアイカをぎゅむと更に抱きしめる。

「なんだか‥‥体中があついです‥‥」

アイカは全身に柔らかくて温かい身体を押し付けられてどきどきが止まらない。

ふたりは最近作って気に入っている薄手のキャミソールしか付けていないので、ダイレクトに熱が伝わってくるのだった。

ちなみにアイカも同じのを着せられている。

太ももがほとんど隠れないベビードール姿だ。

すべすべで柔らかい二人の長い脚がアイカをホールドする。

白と琥珀の拘束だ。

アイカの肌色はヴェスタとジュノの間の色だ。

三色が入り乱れる。

もうこうなると力ずくの脱出も難しくなる。

力が足りないのではなく、二人に怪我をさせてしまうので動けないのだ。

今のアイカは素手ならジュノよりも力がある。

(あんなに優しいふたりだったのにぃ‥‥)

アイカは悲しいと感じるかと思ったが‥‥自己分析に悲しいも辛いも無かった。

アイカの中にあるのは、恥ずかしいと‥‥うれしいだった。




翌日拠点を離陸する前に、滑走路もったいないよねと3人で落書きしてきた。

AR表示されるMAPも参照するのでなかなか綺麗にかけた。

「ふふ、結構上からも見えるね!」

「はい!アイカが真ん中です」

「ふふ、スクショ撮っておこうね」

小さくなる滑走路に三人のかわいい似顔絵。

ジュノ、アイカ、ヴェスタと名前も書いてある。

ジュノはオレンジのペンキで、アイカは赤。

ヴェスタは緑色で描かれている。

幅いっぱいを使った落書きには、綺麗な笑顔が3つ並ぶのだった。

そのまま高度8000mでピタリと止めて少し東に移動する。

「じゃあ‥‥いっちょぶち当ててみるか!」

ジュノが操作して、船体下部のアレイレーダーやソナーポッドが動く。

ぴしゅっと細長いソナーポッドが発射される。

これは電磁波通信の無線で収集したデータを送る使い捨ての装置だ。

「音紋確認‥アクティイブソナー映像着ました‥でかいです‥‥」

アイカの緊張した報告。

「くらえ!」

ジュノの気合のつんつんでアレイレーダーから高濃度の重力波と霊子波が叩きつけられる。

この2つは水だろうが岩だろうが貫通するので、きれいなレーダー映像をくれる。

じゅばあっと水面が泡立ちぶっとい触手が上がってくる。

ぶんぶんと振り回す長さは軽く拠点まで届きそう。

おくれてぶわああと無数の細い触手も上がってくる。

「ちょ、ちょ‥‥これ届くかもよ?」

ヴェスタは移動の準備をする。

真上には伸ばせないだろうと、高を括り8000の高度だったが、半分くらいまで太い触手は上がってきた。

「とんでもない生き物?だね?」

ジュノも冷や汗をたらした。

「レーダーの観測結果とソナーの音紋によると‥‥これシャコガイみたいな生き物ですね‥‥全長2㎞近い‥‥触手はその数倍はあります」

アイカの報告にごくんと唾をのんだジュノ。

「いや‥‥あんとき捕まらなくてよかった‥‥」

「ほんとよぉ」

ヴェスタも青い顔になった。

触手の起こした波が滑走路まで届き、森まで濡らしている。

「あんなのがあちこちに居るのかしら?」

ヴェスタの声は震えていた。

相手は、この宇宙船スパイラルアークの10倍を超える大きさなのだ。

周囲に広がっていく津波のような波紋を見ながら、すいっと逃げるように北上するヴェスタ。

「けっこう広い範囲が色が濃い‥‥あれが全部巣なのかな?」

拠点のあった島に並行するようにこの高さからでも見える濃い色が海にあった。

「同じような海底の状況を見つけたら、アレがいるかもと思わないとですね」

アイカの声にも緊張が有る。

拠点を変えるため飛び立ったヴェスタ達は新天地に向けて、すいすいと進むのだった。

それぞれに様々な思いを胸に。








挿絵(By みてみん)


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