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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第5章
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【第46話:保険の試験飛行】

本日も晴天なりであった。

いつも新しい事をしようとすると邪魔が入っていたので、なんだか拍子抜けするくらい順調であった。

「メインスラストモーター1番から4番‥‥ON‥‥」

ふぃーという軽い音で後方からプロペラが回る音がする。

「メインジェネレーター62%‥‥電圧正常‥‥導入ロス正常‥‥機関異常なし」

エンジニア席から、今までのアイカより少しだけ大人になった声がする。

鈴がなるような心地よい声だ。

昨日までの甲高いとさえいえた声も愛らしかったが、この声も好きだなとヴェスタは思う。

滑走路に向かってジュノが誘導してくれる中、少しずつモーターの出力を上げタキシングしていく。

綺麗に離陸準備が整うとぴょんとジュノも乗り込む。

「いいね!さすがヴェスタ一発だ」

「地上をコロコロしただけだよ、まだ」

ヴェスタは緊張を保つ。

誘導に使ったマーシャリングワンドを所定の金具で固定したジュノが、コパイ席にくる。

さりげなく、アイカに触ってから来たのをヴェスタは気配で悟った。

アイカがヴェスタに余計な気遣いをさせないため、抵抗しないとしっての狼藉だ。

ぷっとほほを膨らませたアイカが見えるようで、ニコっとヴェスタは笑う。

ふぃぃぃぃぃ!!

モーターの音が更に高まり本格的に推力が上がる。

くうっと機首が沈んだ所でブレーキをリリースし、いっきにスロットルを開く。

ごうごうと風が鳴り、モーターの音を後方に押しやり機体が加速する。

くんっ

一瞬の浮遊感のあとはシートに押し付けられるGを感じる。

この機体の加速はジェット機に匹敵するものとなる。

4発の高回転モーターが、精密にナノマシンにより組まれ驚くべき速度でプロペラを回す。

機体は超々ジュラルミンを骨組みに、木材を原料にする強化複合材で覆ってある。

表面はマイクロメートルの歪みもなく、滑らかに組み上がり、強度をあげるリムだけが機体表面を飾る。

純白に塗られた機体が青空に舞い上がっていく。

「完璧ね!」

「ランディングギアの電磁化も良かったですね、ちゃんとテイクオフまでのタイムが縮まってます」

「さすがのヴェスタだわ、左右のタイヤが同時に離れるのがわかったもん」

「えへへぇもっとほめてえ」

でれでれのヴェスタだが、目は真剣で計器と拡張MAPをちらちら見ながら前方を見据える。

すうっと高度を落とし、海面に近づく。

予定の行動で、波が穏やかな内に地面効果が受けれるか低空飛行をする。

AR技術でヴェスタには海面がリアルタイムに透視され見えている。

高度は1mも無いだろう。

「いいですね‥‥モーターの負荷が減りました。速度は安定」

アイカが計器を確認し報告。

「これなら15%は消費を抑えられます」

それは連続飛行時間を15%伸ばしてくれるとも言えた。

単純に航続距離が伸びる。

左手に見えていた島の端を超えて、外洋に飛び出す機体。

「このまま進むと次の目的地が見えるね、標高が3000mくらい有るみたいだから、そろそろ見えるかも?」

大型のMAPを確認するジュノからの説明。

次の目的地の島には大きな単独峰があるのだ。

目のいいジュノでもこの高度では見えない。

「ヴェスタ低空飛行のデータはOKです、高度あげてください」

アイカの指示で、今度は滑らかに左旋回しながら高度を上げていく。

きしっと機体がなるが、ほとんど振動もない。

これは表面の滑らかさと、計算されたリッドとリムで整流しているためだ。

見た目はプロペラ機だが、飛翔性能はジェット機に迫る物があるだろう。

「今800㎞/hも速度でてるの?すごいね風切音が小さい」

ジュノが計器を読んで驚く。

緩やかにだが旋回しながら上昇してこの速度なら、本気で下降しながら加速すれば音速に届きそうだ。

「さいこうだわぁ、この子。気に入ったわ」

ヴェスタも頬を染めて楽しそう。

「武装はレールガンが有るんだね」

ジュノが火器管制を少しわけてもらい確認している。

「回転砲台になっていますが、この速度だと動かせないですね。前方に固定になっています。400㎞/h以下なら360℃周りますよ。

機体の後部と翼下に二機、合計3機の単装砲塔がある。

今は翼下のが前方、後部のは後方に固定されている。

機体に組まれたアイカのコピーAIが速度に合わせて自動制御している。

アイカの2頭身のミニチュアが、ホロアバターになりアイカの肩にいる。

この機体のメインAIをこなすアイカの娘だ。

アイカの肩に立ち上がりえっへんと偉そうにジュノににんまりした顔を見せている。

「ちょーかわいいミニアイカ‥‥たべちゃいたいわ‥‥」

ジュノの欲望視姦に怯えてアイカに隠れるミニアイカだった。

ぶるぶると震えている。

「ジュノ‥‥うちの子を怯えさせないでください」

「はーい」

べーっとミニアイカがジュノにあかんべする。




ざあぁーーーー

綺麗に降りた機体が水面で減速する。

そもそも軽量で揚力も高いので、フラップを出せば速度は大分落とせた。

「お見事です!ヴェスタ」

「ありがとお!」

綺麗に水面に降りたヴェスタだが、停止すること無く加速に移る。

「次は水中翼を試すよ」

ヴェスタの宣言で、機体の下部に格納されていた水平の水中翼が降り、翼端も折れ下がりスタビライザーになる。

あっという間に加速してふわりと浮くが、これはまだ離陸していない。

「いいですね‥‥速度をすこしづつお願いします」

アイカが計器と下部のカメラを確認している。

水中にある羽を支える垂直の支柱は流線型の断面で、薄く抵抗も少ない。

上手く海水を捕まえて安定しているが、速度が上がれば離陸するだろう。

こうして水中翼で水上加速して離陸するシステムなのだ。

「いいです‥‥ほぼ設計通りの速度で離陸しましたね、モーターの負荷も最低限でいけました」

アイカは設計通りに動いてくれてにっこにこだ。

「じゃあ帰投するね!」

ヴェスタも久しぶりの操縦で嬉しそう。

ジュノもふざけるのを辞めてにっこりと座っている。

(ずっとこうして楽しいといいな‥‥アイカもヴェスタも楽しそうにしてると、わたしも嬉しいな)

ジュノの心はこのプロジェクトの中で、確実に癒やされているのだった。

肉体的には辛い事件も有ったのだが、補って余りある幸せを受け取ったのだった。

「いいね‥‥」

ついぽつりとこぼすジュノ。

チラとヴェスタが見て、にっこり自然な笑みをくれる。

それだけでジュノは幸せが倍増するのだった。



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