【第43話:いろいろと疑わしいよ】
アイカの食事も終わり、落ち着いてから3人で話し合う時間を持った。
「全部ロック確認してきたよ」
ジュノが外部ハッチの施錠を確認して操縦室に戻った。
「回線も物理的な接触は完全に無いと確認取れました。無線も監視しますので、電波・電磁波・霊子波・重力波は検知します」
アイカの報告で、母船『スパイラルアーク』の外部からの隔離も確認できた。
「じゃあ‥‥先ずはジュノと二人で話して得た確信から伝えるね」
そういって最初にアイカと情報の共有を図る。
今は切断してあるが、二人のインプラントデバイスが疑わしいこと。
この母船スパイラルアークのメインコンピューターも信頼できないこと。
あちらの島で住人が何者かに扇動もしくは洗脳されて異常行動をしたこと。
こちらでの襲撃にも怪しい点が多いこと。
こちらの村落もあちらの村も一つも事前調査で見つからないのは不自然なこと。
このあたりまでがジュノのとヴェスタの推論。
「たしかに‥‥言われてみればおかしな点が多いです」
アイカも考え込む仕草で続ける。
「ヴェスタの言った感想と同じ感触を一度経験しました。着陸起動に変移しようとした時です」
ヴェスタは理解の表情。
「第一格納庫?の扉が開いていた‥‥そうか警報はならなかった‥‥」
アイカが頷く。
「そうなのです。わたしの直下にある設備が勝手に動いて、報告もない‥‥おかげであの騒ぎです」
衛星軌道からセンシングして着陸地点を選定して移動遷移した瞬間にコントロールが乱れ、立て直すことが出来ず落ちたのだった。
「あのハッチが開いていると知っていれば、対処の方法もあったのです。ヴェスタならあるいは緊急着陸しないで降りたかも‥‥」
最大限の緊急重力制御をかけると、NPも船体エネルギーもごっそり持っていかれるので、本当に最後の手段だ。
墜落より少し良い状況にするだけだ。
「‥‥遷移前に船体のチェックはもちろんしました‥‥第一格納庫のチェックは問題ないと報告がありますし‥‥実は今現在も第一第二格納船室は異常なしと信号が返ります。そういった故障なのだと後回しにしましたが‥‥空間圧縮の拡張機能も同じ状態で、現在もグリーンを返します」
見つめ合うアイカとヴェスタ。
「一回調べてみましょう‥‥船体の調査なんて思いつきもしなかった‥‥」
「ごめんねさい‥‥わたしが気づいて提案しなきゃいけなかった‥‥」
ヴェスタの意見にしょんぼりのアイカ。
「しかたないよ、色々イベント多かったし‥‥後回しにしたのは間違いじゃないよ‥‥生き延びることを優先した。だから一人も欠けずここに三人で居るんだよ。間違ってなかったんだよ」
そういってジュノはアイカの頭をぽんぽんとする。
にこと力なく笑うアイカ。
「‥‥再起動してから初めて気づいたことが多すぎるのです‥‥まるで意識を逸らされていたかのように感じます」
ヴェスタもジュノも心配そうにアイカを見る。
ジュノが気づいて確認。
「今現在はアイカがこの船の制御では最優先?」
「はい‥‥今も昔もそうですよ?」
ジュノはじっとアイカをみながら続けた。
「アイカ‥‥一旦船から全部切り離せる?」
「ええ?!‥‥一応出来ますが、切ってる間は何もわからないです‥‥この義体だけが感覚器になります。」
「ああ!そういうことね。いいのよアイカすぐやって」
ヴェスタも指示する。
「‥‥できました‥‥すごい不安です」
ぎゅっとジュノがアイカを抱く。
「ごめんね‥‥一回お外行くよ」
うなずきあってアイカを抱えたジュノと、ヴェスタが外部ハッチ横のドアから飛び出す。
すとっと保護スーツまかせでおりるジュノ。
アイカに衝撃を感じさせない技量。
「おふろいこうよ!どうせなら」
「さんせー」
「??」
ヴェスタの提案にジュノが賛成する。
話についていけないアイカはジュノに前抱っこで運ばれる。
ぱたんと脱衣所のドアを閉めて、ふぅと息をはくジュノとヴェスタ。
「どうしたのですか?」
アイカは不思議そう。
「‥‥あの船も、もう信用できないわ」
真剣な顔で言うヴェスタの意見に、ジュノもきりっとして続く。
「もっと早く気づくべきだった」
アイカは目を見開き思い当たる。
「異常が有るのは全てスパイラルアーク経由の動き‥‥」
うんうんと二人も頷く。
アイカを含んだ母船経由の動きで全ておかしい結果をだしていた。
事前調査のデータも、着陸時からつづくセンサーの応答異常も。
霊子通信関係もデバイスのメンテナンスも全て母船か、アイカ経由で母船がしていたのだ。
ヴェスタが尋ねる。
「アイカはその状態でデバイスのチェックってできる?」
自身なさげにアイカが回答した。
「時間があればできるはずです‥‥したこと無いですが」
母船経由のデバイスチェックなら一秒もかからない。
「どれくらいかかりそう?」
ヴェスタはすがるような目でアイカをみる。
「えと‥‥10分くらいです」
「ぜんぜん行けるよ、おねがいするよアイカ」
ジュノはホッとしたように頼む。
「私のもお願い」
ヴェスタも微笑んで気が抜けた。
並行してお風呂もしようとなり、デバイスチェックで身体をあまり動かせないアイカを抱えて二人で入浴する。
「アイカちっちゃくてかわいいわあ」
「ほんとそう、ずっとこのサイズでもいいな」
ヴェスタとジュノであわあわにしたアイカを洗う。
「アイカ、ながすから目とじてね」
ヴェスタに言われて、頷いたアイカがぎゅっと目を閉じる。
シャワーで髪を流して、タオルで顔を拭いてあげる二人。
これでよしと、抱えていって湯船に入れるジュノ。
ヴェスタは自分の身体に取り掛かっていた。
ジュノも並んでこしこしと洗い出す。
「これで‥‥デバイスを信用できる?」
ジュノが聞く。
「アイカ次第だけど‥‥不審な点がなければ信用していいと思う。外から操作するのは現実的じゃないもの‥‥考えがあさかったわ」
二人はデバイスを外から介入して操作されたと推理していた。
「操作しようとしたら私でも中に仕込むわ。その方が確実」
ヴェスタはそう結論した。
「それほんと‥‥ね‥‥」
普通にヴェスタに同意しようとして、ふとまた思いつくジュノ。
同じ事がこの星系にも言えると気づいたのだ。
じっとヴェスタをみながら続けるジュノ。
「‥‥わたし達以外に誰かこの星にいるのかな?」
ヴェスタはゾクっとして固まる。
手を止めてしまって見つめ合う二人はあわあわだ。
ぽとりとヴェスタの胸の先からあわが固まりで落ちた。
「その可能性が‥‥たかい‥‥」
ふと天井を見上げたヴェスタ。
「いったい‥‥どこに‥‥どうやって?」
軌道を見上げたヴェスタだが、そもそもこの星系に来るだけでそうとうのコストなのだ。
ジュノがまた直感から呟く。
「‥‥だから第一格納庫を開けた‥‥」
ヴェスタの目が見開かれる。
「わ‥‥私達が運んだというの?」
二人は無言で見つめ合うしか無かった。
あまりに整合性の高いその推論に。




