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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第4章
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【第35話:愛佳とアイカ】

愛佳という名前は、愛(LOVE)と佳(BEAUTIFUL)を合わせたものだ。

名付けに特に感情はこもっていないことを愛佳は知っている。

会ったことはないが、母の名は「愛奈」であったと聞く。

その程度なのだと認識している。

愛佳はそれでも自分の名前が好きだった。

響きも韻も可愛いし、呼ばれると褒められている気分がするのだ。

「かわいいね」と優しく言われた気分になれるのだ。

小さい時は本当にそのままの意味で受け取り、はにかんだものだった。

「AIって赤ちゃんなのかな?どんな声だろう‥‥わたしの音声データも取って行ったから同じ声?」

最近の愛佳の一番の関心事だった。

企業に協力し、愛佳のコピーをAIで作る実験らしい。

「きっと貴重な動物を保護したいと、優しいことをかんがえたのだわぁ‥‥くすくす」

愛佳はそうやって楽しそうに笑うのだった。

「お嬢様‥‥ご来客です。第一応接室にお通ししてあります」

入口に家人の娘が来て告げた。

「ありがとうサヤさん」

そう家人に礼を言って、本邸の応接に向かった。


「はじめましてアイカです。よろしくお願いいたします」

鈴を鳴らすような声とは、このことかと愛佳は感動した。

思ったよりもずっとしっかりした受け答えで、思った通りに可愛らしい少女だった。

黒いお仕着せのような洋装の家人服で、かわいい白のエプロンも着けていた。

ホワイトプリムを揺らすのは愛佳より少し短く揃えられた黒髪だった。

身長は愛佳より頭一つ小さく、体重も軽そうだ。

にこっと自然な笑みは、とても愛らしくぎゅむっと愛佳は抱きしめてしまった。

「かわいいぃぃ‥‥」

自分の容姿をコピーしたものに、そう言うのは抵抗があるかなと覚悟していたが、全く気にならなかった。

「ありがとうございます」

急なスキンシップにも驚くこと無く、微笑んで礼をのべるアイカ。

応接で紹介され、連れてきた先日の男は帰ったあとだ。

とりあえず3日後に見に来ると言っていた。

ソファに座り直し、膝の上にのせたアイカを愛でる愛佳。

よしよしと髪を撫でてあげる。

「愛佳様のお話を伺いたいのです」

ちょっと硬い話しをするアイカ。

「えぇ~あとでいいよ。ねね、私の部屋に行こう!」

そういって手を引いて進んでいった。

部屋をでてから「はい」とアイカが答える程の素早さだった。

なにしろ待ち続けた可愛い妹なので、愛佳はうれしくて仕方ないのだ。


愛佳の少し前の服がピタリと合う。

まあ、あれだけデータを取っていったのだから当たり前かと納得の愛佳。

部屋に連れ込むと、「この服も可愛いけど‥‥」と言ってる内に脱がせてしまう愛佳。

事前にサイズを教えてもらっていたので、妄想してこれを着せよう、あれにしようと色々準備していた。

「あら?下着は大人っぽいのつけてるのね?」

ちょっと年齢らしくない大人っぽい下着にちょっと残念そうな愛佳。

プリントの入った下着でもはいてると、思っていたのだ。

かなり失礼な話だったが、アイカはにこにこしたままだ。

ちらと指でひっぱり、カップの中まで確認する愛佳。

「ふふふふ」とにんまりした。

意味は解らなかったが、あまりいい評価ではないなとアイカは思った。

愛佳の準備した服を一通り順番に着せられたアイカは最終的に、白いミニワンピにおさまった。

ベッドの上でまた横抱きにして抱える愛佳。

これでは妹ではなく、着せ替え人形だなとアイカは冷めた評価をした。

散々抱きしめて匂いも嗅ぎ尽くすと、今度は二人で中庭をぷらぷらと散歩する。

今日は天気も良いので、とても明るい光に満ちていた。

「みてアイカ‥‥この花はね『ハナカイドウ』というのよ」

「なるほど。綺麗な花ですね。美しいグラデーションです」

アイカには植物に関するデータは準備されていなかったので、新しい知識の分類で記憶した。

薄いピンク色の花弁が縁に向かい徐々に桃色に染まる色合いに少し感情が揺れる。

これは『感動』したのだと、知識データに添付した。

はなびらに見惚れるアイカを優しい微笑みで見守る愛佳。

微笑みの中でその瞳には寂しさがにじんだ。

ハナカイドウは朝に咲き昼に誇るが、夕辺には散ってしまうのだと愛佳は知っている。

「とても好きになりました、ハナカイドウ!」

アイカは珍しく興奮した様子ではにかむ。

愛佳もにっこり笑って楽しそうにそれを見ているのだった。




割と重さのある義体なのだが、愛佳は重さを感じないようにひょいひょいと抱える。

(筋力のデータに大きな誤差がある)

いくつか愛佳と触れ合って解ったことを、記憶していくアイカ。

比較するために、この義体の諸元と愛佳のデータは全て持っていた。


愛佳は非常にアイカが気に入ったのか、べったりと側に置いた。

アイカにとってもそれは都合が良いので従ったが、食事や入浴はもちろん、排泄にまでともなう。

「こうやってするのよ。あと、ここをちゃんと拭くの」

などと排泄の仕方まで説明する。

しっとるわい、とは言わず、「なるほど、わかりました」とにっこりするので愛佳はごきげんだ。

今は出ないけど今度大きいのも教えると言い出して、大丈夫ですもう理解しましたと、さすがに必死にごまかした。

寝る時も、もちろん同じベッドに寝かせる。

アイカのために新しい枕も準備して、自分のと並べて置くのだった。

これも似たもので愛佳のお下がりだという寝間着に着替えさせられる。

うすい生地のピンクに肌がすけるのは、ちょっと大人っぽいベビードールだ。

ふむふむと眺める愛佳はちょっと不満そう。

「もう少し前のだと可愛いのも有るんだけどなぁ。まいっか」

そういってアイカを寝かせると、隣に同じような格好で横になりそっと髪を撫でる。

「いいこねアイカ、おやすみ‥‥」

アイカがここは寝たようにしないとと思い、まぶたを閉じると優しく髪を撫でられた。

(なにがいい子なのかは判りませんが‥‥ちょっと気持ちいいですね)

愛佳が子守唄を優しく歌い出すと、耳にも心地よく、アイカは満更でもないようだった。






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