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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第3章
36/451

【第30話:これはたまらないわ】

挿絵を追加しました。(手直し再投稿しました)




まもなく明け方という頃に、火事は消し止めるか燃え尽くして収まった村。

全戸で25軒70名の住人が住まう村だった。

成人男性は30名で、残りは女子供だった。

この周辺に6つあった似た規模の村落は全て昨夜から異常事態に見舞われていた。

成人男性が凶暴化して暴れまわったのだ。

まるで発情期の動物のように、人間と違う行動理念で暴れまわり、最終的に逃げ出した女性を追いかけて村を出ていった。

残ったのはすべて被害にあった女性と、何も出来ずふるえていた子供ばかりが残された。

最後に逃げる女性の姿は少し特殊だった。

金属のリングを首と腰に巻き、白い薄物をまとい誘うようにあちこち露出した若い娘。

それは男たちの最優先ターゲットの姿。

今ならんで逃げるのは金髪の白い肌と、銀髪の褐色肌。

どこからみてもジュノとヴェスタの姿であった。

同じペアが何組も集まり揃った所で1組残し後は溶けるように空中に消える。

それは精密なホログラムで描かれた3Dアバターの姿なのだった。

最後の一組に続き、6つの村から追ってきた男たちがよだれを垂らし歩き続けていった。

やっとおぞましい夜が開けたというのに、悪夢は続いていくのだった。

何者かの誘導に従って。




翌日の朝にジュノを起こして、お湯を沸かしてお茶だけ飲んだ。

「いよいよ今日から自給自足になるね」

ヴェスタはしょんぼりと言う。

「大丈夫だよ。わたし狩りも得意だから。ヴェスタを飢えさせたりしないよ」

「ありがとうジュノこころづよいわ」

二人のスーツはちゃんと満充電までされ、バックパックも満タンのチャージになった。

ライフルをずっと撃ち続けられるし、100kmくらいまでローラーダッシュでも移動できる。

この調子ならスーツはフルに使っていけるので、建造も捗るだろうと予想した。

ヴェスタが昨夜した心配もとりあえず解消。

「現地調査の地図だけど‥‥これここに湖か沼があるね」

北側のまだ行ったことがない斜面に、おそらく火山性の火口湖があるようだ。

「みずあびしたい‥‥」

ジュノは切望した。

「うん、そう言うかなと思ってね」

ヴェスタが真面目な顔で言う。

「充電も余裕が出来たし‥‥狩りをしながら行ってみようか?この距離なら半日かからないよきっと」

動物を狩ればマインビームで格納し、携帯食を出力できる。

木の実や野草なども同じ様に採取していけば、出力される食料の栄養価が高くなる。




「あれ‥‥この臭いは‥‥」

「とまってヴェスタ!!」

前を進んでいたジュノが左手を横に上げる。

すっと二人でしゃがんで、待機。

「ヴェスタ周囲警戒」

それだけ言うとするっと立ち上がり前に進ジュノ。

りょうかい、と声をかけて前方以外を戦地警戒するヴェスタ。

しばらくするとジュノの声。

「ヴェスタ!!きてえ!すごいよ!」

ジュノは急な斜面が左右に続く谷間を索敵に行った。

ヴェスタも後方をもう一度警戒してから、早足で向かった。

「わああ!!」

「すごいよね‥‥感動する」

先程から漂っていたのは硫黄の臭い。

視界の先には谷が狭まり、おそらく円になっていて火口のあとに出来た火口湖と思しきエメラルドグリーンの泉がある。

湯気が立ち上っているので、温泉であろう。

ジュノがマインビームで精査している。

「うん!これ弱アルカリ泉だよ‥‥温度も‥‥頑張れば入れる?!40℃無いくらいだな」

「いいわね!火口なのかな?これも」

周囲を高い壁に囲まれたような地形で、なんだかおちつくなと二人で裸になって身体を洗った。

「防護スーツも一応電子機器だし‥‥こわれそうだよね」

「たしかに‥‥すこしお湯がかからないところに置こう。ライフルもだね」

そうして入口から遠い壁寄りに荷物をまとめておいた二人がとっぷり浸かる。

ちゃぷん

「うはぁああぁぁぁん」

「あふぅぅぅ‥‥」

色々と気になったところも洗えてホッとした二人はくつろぐ。

「深さもちょうどいいし‥‥もう毎日来ようよ‥‥」

「ホント‥‥なんだったら拠点を移そう」

「あははっ」

ジュノが楽しそうに笑う。

ヴェスタも嬉しくてにこっと少し笑えた。

ここまでの移動の中で小さいながらも鹿を1頭狩った。

ハーブや木の実もそれなりに採取出来たので、10日程度の食事にはもう困らない。

そういった諸々がジュノのセンサーも鈍らせていた。

ピコっとジュノが反応して立ち上がる。

ジャバ!

「どしたの?」

「しっ!」

黙れのハンドサインもある。

耳をすましたジュノがばしゃしゃとライフルに駆け寄る。

「気配があった!あがってヴェスタ」

「うん!」

素早くシーツを裂いて準備していたタオルで身体を拭いて、リングをつけるジュノ。

保護膜を展開して武装用バックパックを背負う。

ライフルに接続のラインを繋いでポンチョを羽織れば準備完了。

ヴェスタも身体を拭き終えて、リングをつける。

「ここじゃ不利だから上に上がるよ」

ひょいっと身軽に壁にも見える崖を飛び上がるジュノ。

7-8mは飛び上がった。

ヴェスタも装備が終わり飛ぶが、届かずに縁に手をかけよじ登った。

ジュノは膝立でライフルを構えている。

温泉越しに男が入ってくる。

異様な姿にジュノもヴェスタも緊張を高めた。

男に続きぞくぞくと入ってくる者全て同じ姿だ。

「ヴェスタ撃とう」

「了解!」

たん! たん!

二人で交替に撃ち、一撃で仕留めていく。

男たちは全裸で、とある特徴を同じくしていた。

それはジュノにとっては射殺する理由になる姿だったのだ。

たん! たん!

交互に仕留めていると、ジュノがまた反応する。

「まずい下がるよヴェスタ、上がってきている!」

ヴェスタの腕を引いてジュノが山側に移動を始めた。

マガジンを一度変えたので、50人以上は仕留めたとヴェスタは曖昧なカウント。

「マガジン変えといて」

自分でも右腰から予備のマガジンを取り切り替えて、抜いたものは左に固定する。

残りは2本60発と、今の残りが12発だとジュノは正確に把握。

ヴェスタは残り60+13だと相方の分も数えてあった。

どんどんスーツの脚力で登る二人。

大き目の岩を見つけて上にのぼり後方を見る。

ぞろぞろと全裸で身体の一部を強張らせた男たちが上がってくる。

全員同じ色合いなので、不気味さが倍増だ。

一言もなくよだれを垂らしながらひたひた着いてくるのだ。

「うつよヴェスタ」

「うん!」

たん!たん!たん!たん!

左右の端から倒していく二人。ヴェスタの残りが15に成った所でジュノがマガジンチャンジ。

「ヴェスタフォロー」

カシャカシャと数秒のあいだにヴェスタが3人倒した。

(いったい‥‥なんなの‥‥)

不気味さだけを受け取り、冷静に処理を進めるジュノは、周囲も警戒していた。

(そろいもそろって‥‥繁殖期だとでもいうの?)

たん!

「ジュノフォロー」

ジュノはヴェスタの残弾も数えているので慌てない。

たん! たん!たん! たん!

途中で切り替えたので、ジュノの残弾も3だ。

たん! たん!たん!

計算通り撃ち終わった所でヴェスタの射撃が始まる。

たん!

「ヴェスタフォロー」

静かに告げて、先程半分撃ったマガジンと交換する。

(もう180は撃った‥‥)

ヴェスタも腕が上がり一発も外していない。

ジュノが構えたときには動くものは居なくなっていた。

ただ肌色の死体が群れを成し地に満ちているのだった。

赤黒く染まる大地に。


挿絵(By みてみん)




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