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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第3章
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【第28話:毎日なんかあるよね?最近】

「先ずは充電設備を目指そう」

ヴェスタの宣言にはしっかりとした意思がこもる。

アイカとは通信がつながらず、あちらからも連絡はなかった。

二人の装備の根幹たる保護スーツも、武装の中心たるレールガンも電力を求める。

電源部はどちらも最新の装備でロスは最低限だし、放電したりはしない。

レールガンとバックパックに最低限の小型ジェネレーターがあるが、燃料が特殊でここでは得られない。

どんな作戦を立ててもこの電力供給の限界が、母船までの距離を遠くする。

「簡単なのは‥‥風力かな?」

ジュノの答えは合理的で、実現可能な範囲だ。

「そうね‥‥幸いアイカの指示でモーターが手元にある。非常用の有線接続ケーブルもスーツ側に内蔵されている‥‥うん、いけるねこれ」

この山間の台地には1日中風が当たるので、強弱はあっても途切れずエネルギーが得られる。

「細かいパーツはマインビームの逆位操作でいけるしね」

マインビームはストレージにしまうだけではなく、材料さえあれば小さいものなら内蔵のナノマシンがパーツを組んでくれる。

「アイカからグライダーの設計図ももらっているし‥‥ジュノなら器用に削り出してくれるでしょ?」

本体や翼は木製のフレームにいつもの保護膜で補強する予定だ。

翼との接続部分など強度が必要な部分を保護膜で強くする予定だ。

予想される各部の応力までアイカは設計段階でつけてくれている。

「‥‥いいね。十分可能だと思う」

ジュノもにっこりとヴェスタに応じた。




何をするにも電力が欲しかった。

山裾で切り出した大木を、短剣でスパスパとジュノがカットする。

どんな技術なのか、数回斬りつけると直径30cmもある幹まで切りたおしてしまう。

刃先がすっと抜けると深い傷がはいるのだ。

細いものなら一撃だった。

達人の技術なのかと、ヴェスタは頼もしくも恐怖を感じた。

切る瞬間のジュノは凛々しくてかっこいいなとは思うヴェスタ。

ヴェスタもストレージのナノマシンが整えてくれた木工ノコギリの歯を、ジュノが払った適度な枝を加工して収め、それで細めの木を何本か切り倒した。

風車をささえる櫓を作るのだった。

白樺ににたその木は7-10m程度まで育っていて、裾野の森にいくらでもあった。

さすがに力仕事はスーツの補助なしでは辛いので、今は全身を保護膜が覆っている。

ひょいひょいと身軽に4本の原木を運ぶヴェスタ。

(なんとか今日中に組みたい‥‥もう残量が70%を下回ったわ)

ジュノのはもっと消耗していたとヴェスタも把握している。

もともと一泊二日の予定できたのだ。


夕方のスコールが上がったあとには、なんとか暗くなる前に風車を作り、モーターで充電する準備が整った。

近くで採取した銅をメインに電気回路も組み、櫓のしたに置いたこれも船外機の充電池に順調にチャージしている。

今は外部端子で充電池からスーツとバックパックに充電している。

二人はシーツを加工したポンチョのような服を着ている。

ライフルは単体でも動作するので、武装は残していた。

「なんとかなったね‥‥残量6%だったよ‥わたしのスーツ」

「危なかった‥‥大分風もあるしこの様子なら一晩かからず充電できるね」

ジュノの削り出した2mほどの三枚羽は元気にぐるぐる回っている。

骨組みにシーツを張り合わせたものだ。

ほっとしてご飯とお茶を済ます二人。

大分余分に持ってきた食料のバーもこれが最後で、明日の朝はお茶だけになる。

はっと立ち上がるジュノ。

「みて!燃えているわ?!」

山頂の向こう側にちらちらとオレンジの炎が見えた。

ヴェスタも立ち上がり様子を見る。

「こちらは風上になるから‥‥大丈夫だけど‥‥あっちにも人が住んでいるのかな?山火事?」

先日見つけた村落とは少し方向が違った。

「気になる‥‥偵察を提案する」

ジュノからヴェスタに許可を求める言葉。

「ジュノを信じてるけど‥‥二人で動こう‥‥もう離れるのはいや」

ジュノは振り向いてとんと抱きついてくる。

「わかった‥‥わたしも不安だよ離れるの」

スーツを充電途中で外し装備した。

「私のは40%だわ」

「こっちは15%だね‥‥まあ基本使わないとは思うけど」

色々反省した二人は普段からこのシーツ製ポンチョを採用しようと話していた。

移動中など必要ない時に保護スーツを切ると全裸になるのは困るよねと決めたのだ。

今も膝までのポンチョ姿でブーツをはき、リングだけになった保護スーツを中につけている。

下着が無いので、色々とその不快さはあるのだが我慢できた。

もうヴェスタも裸でいいとは言わなくなった。

ジュノのお陰で、自分を大切にしたいなと考えるようになったのだ。

すっかり日も落ちて、西側のふち以外は夜空になった宙に、無数の星を従え巨大な白い半月が浮いている。

お陰で夜間でもこの星は足元がちゃんと見える。

火口側に登っていき、先日の山道も越えて上に出た。

「こないだの村から近いね」

小声でジュノが言う。

「そうね‥‥どれくらいの規模かしら?」

ジュノは双眼スコープを使い偵察している。

「火の手はあまり大きくなっていない‥消火しているのだと思う‥‥赤外線で捉えられないから確定じゃないけど、こないだの村と同程度と思う」

まだそれなりに眼下距離があるが、推測を含めたジュノの報告。

「ん‥‥静かに‥‥山道をこちらに移動している集団がいる‥‥4人かな」

近くの山道は先日の村を経由し、燃えている村まで続いているようだ。

じっと双眼鏡で確認したジュノが、ヴェスタにわたす。

「見なくてもいいよ‥‥やってるわ‥‥襲ったのねきっと」

ヴェスタはそれだけで理解を示す。

「野蛮ね‥‥」

先日襲われた相手の装備や言動から文化レベルと性質風俗まである程度モデルを想像できた。

「でも‥‥おかしいよ‥‥あの距離にある村を襲う理由がわからない」

「‥‥‥‥ジュノ‥‥」

すいと近づいたヴェスタがジュノを捕まえる。

「興奮しちゃったのキスしていい?」

そういってちゅっとキスをして頷いた。

これはデバイスダウンのサインだ。

ジュノも頷いてデバイスを切りつつ、ヴェスタの唇を奪う。

「いいよ満足させてあげる‥‥」

ジュノが笑って言うので、ヴェスタも楽しくなってしまいクスクスわらった。

「キスする言い訳いるのかな?!」

含み笑いのジュノ。

「えぇ‥‥いちおうそこまでは記録されるかなと‥‥配慮よ」

ちょっとてれてれのヴェスタ。

デバイスを遮断した二人はまた静かに話し合う。

ヴェスタから気づいた話しを告げた。

「これ‥‥怖いのだけど‥‥外から扇動しているとは考えられない?」

ヴェスタの言葉にジュノはゾッとした。

もしやと自分でも考えたことだったのだ。






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