【第23話:同じでいられる】
南側斜面に沿って、東へ移動するジュノとヴェスタ。
高度を変えないように上りも下りもせず左足上がりの状態が続く。
幸い地面は締まっていて、でこぼこも少ないので歩きづらくはない。
スーツの電源を持たせたいので、極力無駄遣いしないよう心がける。
保護膜も最低限度にしていた。
意外に保護膜はエネルギー消費がある。
常時消費なのでちょっとの差が大きいのは、ジュノ78とヴェスタ90のエネルギー残量の差になっている。
腰から下はビキニパンツの状態。
ヴェスタは紐パンになっていておしりは丸出しだ。
上は最低限にとするとビキニトップになり、おなかがでるが三角形に首と胸はつながる。
膜を出すリングが首なので、そこまではつながるのだ。
ヴェスタは背中も紐だ。
ジュノは恥ずかしいといっておしりも半分隠れるビキニと、胸も少し太めの支え。
こうしないと前部の凸部分が重力に負けてしまうのだ。
ヴェスタは何なら全部仕舞ってオフにすると言うが、それも恥ずかしいからダメとジュノがいう。
そのすり合わせの上でこの格好だ。
戦闘に入ると瞬時に手足までの全部を覆う。
プロテクター類もセットすると重力制御で浮かせるので、消費を抑えるため背中のバックパックに仕舞ってある。
ライフルはスタンドアローンでも稼働するが、3点射で撃つと消費が多く弾より先にバッテリーが切れる。
自分でも発電するジェネレーターを内蔵しているので、セミオートで撃ってる分には1マガジン撃ちきれるのだった。
「この尾根の先が採取ポイントだね」
先頭を進むジュノから報告。
チラとヴェスタも右下のマップを確認。
事前調査時の地形データで組まれたマップなので、少し透過表示だが現地を踏破すると更新されて濃い色になる。
自分達の歩いたログにもなるので便利な機能だ。
今は西の海岸から上がり、弧を描いて山の中腹を東に帯が引かれている。
等高線表示の上を進んでいるのだ。
すっとジュノがしゃがんで左手を真横に出す。手のひらが見えるので止まれのサインだ。
ヴェスタは停止して全周警戒に移る。
肩付けしたライフルも一緒に動く戦地全周警戒だ。
「‥‥集落が有る‥‥結構デカイよ」
一周見終わった所でヴェスタもしゃがんで進む。
ジュノが代わりに下がり、警戒に入る。
「‥‥レンガを使っているわ‥‥あっちの島と時代が違うみたい」
10棟ほどあるレンガ作りの小屋が立ち並び、風車と思しき設備が羽を回している。
「一気に中世だわ‥‥これじゃ」
周囲警戒はもういいかと、ジュノも隣に来る。
こちらのほうが標高が高く、視界は良いがあちらからは見えないだろう。
「どうする?採集予想ポイントのすぐ目の前だわ」
戦闘指揮に該当するのでジュノの意見を聞くヴェスタ。
双眼鏡を出して確認していくジュノ。
「騎士見たいのが居る‥‥鉄を使っている‥‥もしかしたら鍛造も、ナイフの刃の輝きが強いな‥‥」
中世程度の技術ならこうとジュノの予想。
ジュノの装備するチタン鋼の短剣でも、鍛造鉄の鎧では突き通すのは難しいだろう。
レールガンなら鋼の弾丸なので、有効射程内なら裸とさして変わらない。
「‥‥全滅させるのが一番間違いないとは思う」
マニュアルに照らせばそうだろう回答を一旦出すジュノ。
ちらとヴェスタを見るとにっこり笑う。
「話し合えないか試してみる?」
ぴくとヴェスタが反応する。
(私が殺すのをためらうと心配しているのだわ‥‥)
ジュノの意図をちゃんと受け取れないヴェスタ。
「必要があれば‥撃てるよ」
すっと少しさみしそうにするジュノ。
「他の見込みポイントに回ろう‥‥どうしてもなら殲滅する」
「了解」
ジュノの判断に従うヴェスタ。
敵の脅威度もヴェスタでは判断できないのだ。
ジュノに従おうとただ思っただけだった。
「‥‥アイカに相談してみよう?」
ジュノの2つ目の意見には、心から賛成できるヴェスタだった。
「そうだね‥‥15時まで移動して確認出来たら話が変わるかもだしね」
採取可能予想ポイントのもう一つは山頂付近だ。
おそらく中世程度の技術では採掘も運搬も困難だろうと予想できた。
山頂の採取ポイントは手つかずで残っていた。
しかもラッキーなことに、直ぐ側でボーキサイトの露出鉱脈を発見する幸運も重なった。
「‥‥これどうなるの?ティアが飛び級しちゃう?!」
ジュノは満面の笑み。
「アイカに聞かないと分からないわ」
ヴェスタは慎重に判断する。
アイカが連絡がない時はスリープしていると聞いて、緊急以外はできるだけ定時にと心掛けていた。
たぶんAIには意味がないのだが、起こすのは忍びないと思ってしまう二人だった。
ふたりとも朝が弱いゆえに。
「ざっとこの火口をひと当りしましょう。他にも希少金属とかあれば儲けものだわ」
時間もあるしとヴェスタの提案。
「良いと思う。左右に別れよう、あっち側で合流だね」
「りょうかい!」
ジュノも賛成してくれて、15時の定時報告までに火口を調べることとなった。
火口に向かって右側に進むジュノ。
ヴェスタは左回りだ。
マインビームを広域照射に切り替え、採取量を減らし照射範囲を広げた。
ぽてぽてと歩く速度で、ちょうどいいのでお散歩気分だ。
時間はまだ4時間ほど定時まであるので、あちら側でご飯でも良いなと呑気に考えるジュノ。
反対側の火口山頂を同じ様に歩いているヴェスタの照射するビームがちらちらと見える。
左右に振って広域を調べているのだろう。
(ふふ、同じことしてるのが何だか嬉しいな)
大きく手を振ってみるジュノ。
ビームを出したままなので、扇形に光って見えるはずと、ヴェスタに気づいてほしくてしてみた。
10m程の緑のビームがあちらでも扇形にふられる。
(あは、ヴェスタも気づいてくれた)
それは時々こちらを見ていてくれていたのだと、嬉しくなるジュノ。
るんるんと作業を進める。
順調なら2時間ほどであちらに付き、一緒にご飯だなとジュノは微笑んだ。
(とても困った事態のはずなのに‥‥ヴェスタとなら楽しい時間になる)
ジュノの心もヴェスタに傾いて開いていく。
きっとヴェスタも心を開いてくれていると、今朝のやり取りで感じた。
(不思議だな‥‥4ヶ月程度の仲なのに‥‥しかも3ヶ月はなんだか他人みたいに過ごしてきたのに)
ほんのこの17日間が、夢のように濃縮された時間だった。
航海中の3ヶ月より比重が重いと感じるジュノ。
(今夜‥‥相談してみようかな‥‥嫌われちゃうかな?まだ早いよね?)
ジュノはヴェスタに話していないことが一つあった。
過去の話をしても上手にそこは伏せていたのだ。
そんなしまい込んだ言葉も伝えてみたいと思うほどに、ジュノはヴェスタに惹かれていた。
全てを伝えたい衝動が心につもるのだった。




