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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第2章
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【第21話:色々と越えていきます】

午後の定時連絡でも互いに異常なしと報告しあい、午後からいよいよ移動を試みる。

重量的に諦めなければ行けなかったのはコンテナにおさめて、ザイルで地面に固定した。

帰りに余力があれば回収しようと思っている。

2人分8本のコンテナに、使わないと判断した布類と食料も少し残した。

あちらに渡ってからは少しさみしい食事になるが、採掘機材や武装の方が優先した。


ヴェスタがコントロールバーの中に収まると、ジュノが背中におぶさるようにハーネスを固定する。

飛んでいる間はジュノがヴェスタを釣るように、縦に重なる配置になる。

ジュノがよろめいてコントロールバーのアップライトを少し押す。

それだけでヴェスタはバランスを崩しよたたとなった。

「ジュノだめえ、そこは触らないで。私の身体なら何処触っても良いけどコントロールバーはダメよ。飛行機の操縦桿といっしょだよ?そこ」

「う、うん!ごめんごめん。身体の方にさわるね‥‥」

真っ赤になってあわてるジュノだった。

大きな荷物は基本二人で背負い、一番大きな船外機はアイカの指示でモーターだけ取り出しバックパックに詰めた。

ジュノは背中側だけ、ヴェスタはお腹側にだけ荷物を固定して、ふたりの身体はぴったりくっつけられた。

ジュノの先端部分がヴェスタの背中に当たるので、そこにいるなとヴェスタは見ないでもわかり安心した。

ジュノは恥ずかしさで真っ赤になっている。

(ヴェスタの背中‥‥白くてすべすべだあ)

自分の肌色もなかなか美味しそうと好きなのだが、ヴェスタのミルク色の肌は特別だった。

日が当たると透けるように白い。

普段自分を保護しているスーツを翼に取られたので、自然の中にそれを晒しとても不安なジュノであった。

(ヴェスタは堂々としててすごいな‥‥やっぱり美人だから見られても平気なのかな?)

ヴェスタは身内ジュノしかいないので、お風呂と同じ感覚で居るのだった。

一方のジュノは世界に身を晒している認識なので羞恥が多めだった。

見るものとて羊しかいないのだが。

アイカのアドバイスどおり、ブーツのローラーを出す。

直径10cmほどのタイヤが前後に一つ付く。

それぞれ90°曲がりながら跳ね上げるので、かかととつま先に丸い飾りのように収まっている。

リムモーターで駆動するこのタイヤには、リニア・エア両立のサスペンション・ダンパーも搭載され安定性も抜群だ。

平滑地なら100km/h程度の速度が出る。

おうとつの多い平原でも40km/h程度まで加速可能だった。

今日は運もよく南風で、アゲインストの風を捉え時速10km/h程度でテイクオフとなった。

「おおおお!!」

「とんだねえ!!」

ジュノの驚きの声にヴェスタは落ち着いて答える。

注意点を守って荷物になっていてくれたら、操縦はヴェスタの得意分野だ。

(逆噴射で垂直着陸するより簡単だわ!こんなの)

折からの向かい風を捉え、十分な高度を取った二人は、風を切って高度を落としていく。

「あそこがやっぱり降りやすそう‥‥」

「海岸線だね?」

目的地の島は中央にそれなり高い火山がある。

休火山で火口には煙もないが、南側斜面はなだらかに海まで斜面だ。

島東の砂浜に狙いを定めた。

砂浜の上を北西からアプローチ。

アゲインストの風を受けふわりと降り立った。

足がついた瞬間に、コントロールバーについたボタンをポンと押すヴェスタ。

しゅるんと保護膜がリングに収納され、カイトの羽が骨組みになる。

「ふぅぅぅ、とうちゃーく」

「ナイスキャプテン!すばらしいランディングです!」

ハーネスを外しながら敬礼してみせるジュノに、身体をひねってヴェスタがハイタッチ。

「いえぇい!」「やぁー!」

パチンとなって、うふふと笑顔になる二人。

ヴェスタの笑顔は日に日に自然になっていくのだった。

骨組みも貴重な資源なので、残さず回収。

ジュノは久しぶりに保護膜に覆われほっとする。

このスーツの白い膜は防具でもあるので、戦闘指揮のジュノとしては二重に安心だ。

(裸もみられないしね!)

ジュノのにっこりにはそういった安心感もあった。

バックパックを背負い直した二人は火山の斜面を目指す。

海岸にあまり長く居たくなかったのだ。

例の触手は二人にはトラウマ級の恐怖を植え付けていた。



緩やかな南斜面の途中に台地になって平地が長細くある。

「なんだか‥‥滑走路みたいな平地ね」

「都合いいのじゃない?」

きょろきょろ見回すヴェスタにジュノは楽観。

「うん‥‥いいんだけど‥‥なんだか不思議」

「ラッキーでいいんじゃない?」

「そっかな?」

「そうだよ!」

硬い表情のままうなずくヴェスタに、にこにこ笑ってみせるジュノ。

二人はとりあえずテントを組み上げ、焚き火の準備をした。

食事前に定時連絡。

「そう‥‥よかった。じゃあ明日からって事で今日はゆっくりしてね」

「了解‥‥うんタスクももらった、読んでおくね」

「おやすみなさいふたりとも」

『おやすみーアイカ』

母船のアイカは、連絡が入るまでは基本スリープ状態にして保持エネルギー節約してくれているらしい。

現在の母船のチャージはジェネレータプールが10%程度、ナノマシンポッドは600NP前後らしい。

これは実はジュノ事件で損失した分を取り戻している。

先日の襲撃の分マイナスが有るので、まだトータルはマイナスだが、アイカの節約のお蔭ともいえた。

「ほんとうアイカには頭あがらないな。ティア4に上がったら義体を準備してあげたいね」

ヴェスタの声には申し訳無さがにじむ。

「そねえ、ちいさいアイカも可愛いけどね!性能だけあげるわけにいかないのかな?」

「ええ?どうかなアイカが嫌なんじゃない?それは」

ジュノの提案をヴェスタはやんわり否定。

「いや‥‥節約になるのでいいというかなぁと」

「??うん‥‥そうだけど」

ヴェスタは不審そう。

「アイカに聞いてからきめればいいよね!」

ジュノも慌てて話しを終えた。


食事をおえた二人はもうすることもなかったので、早起きしようとすぐ寝ることとした。

すんすんと匂いを嗅いだジュノがいう。

「はうぅ‥‥なんていい匂いなの?ヴェスタは嫌なにおいしない?私汗臭くないかな?」

「ぜんぜん、とってもいい匂いだよジュノは」

互いの体臭がストレスにならない相性のいい二人だった。

保護スーツもつけたままなので、色々と臭いを隠してくれているのもあった。

今日は順番ねとヴェスタが腕枕する。

「ねね‥‥嫌じゃなかったら一回保護膜はずしてみて‥‥」

「ん?どうして?」

「んと‥‥ヴェスタの匂いをかぎたい‥‥」

顔をかくしてジュノがいう。

「うーんと。はい、いいよはずした」

ふわっとミルクの香りのような甘い匂いがジュノを包みこんだ。

「あうぅ‥‥」

「んと?変な匂いだった?」

「ううん‥‥とてもいい匂いでうっとりした」

「やん‥‥なんか恥ずかしいわおわりぃ」

しゅるんと保護膜をもどすヴェスタ。

「えぇ‥‥もうちょっと‥‥」

「おしまーい‥‥あ、じゃあジュノもとるならいいよ」

ジュノは恥ずかしがって、いいと言わないとヴェスタは思ったのだ。

俯いたまましゅるんと無言で保護膜をとるジュノ。

二人のスーツは首と腰に5mm程度の銀のリングがあり、そこ以外は保護膜なのだ。

保護膜は防御力はあるが感触はあまり遮らない。

ヴェスタの鼻腔にむわんとジュノの体臭が甘く届く。

(わ‥‥この匂い‥‥すごいここちいい‥‥)

しゅるんとヴェスタも保護膜を取った。

ぴとっと素肌が触れる温度がくる。

ジュノの滑らかな肌触りと、優しい温度がつたわる。

身体を拭くくらいで、2日もシャワーも浴びていない。

自分の体臭もかなり感じられた。

ジュノの匂いに自分の匂いが足されると、なぜか幸せを感じるヴェスタ。

(あぁ‥くらくらしちゃうよ‥‥なんだかとても幸せだわ‥‥)

その甘やかな匂いはヴェスタをすっかり捉えてしまうのだった。

ヴェスタの腰に回っているジュノのうでに少し力が入り、ふたりの身体は隙間を無くしていった。

実は、二人は全く同じ感想を持っていたのだった。

((あぁ‥おぼれそう))

多幸感につつまれて夜を越した二人だった。








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