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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第2章
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【第20話:全てをさらす試験飛行】

その日はもう日も暮れてきたので、カイトで破ったテントをがんばって修復しテントに入り休んだ。

「けっこうあったかいね」

「うん」

ジュノの身体に沢山くっつくのでヴェスタはふわふわして温かい気分。

だんだん暗くなる中、ジュノは気になっていたことを尋ねる。

「ねえ‥‥ヴェスタが嫌だったらもう言わないけど‥‥聞いてくれるかな?」

「うん、ジュノになら何を言われてもいい‥‥大丈夫だよ」

そういってジュノの頬におでこを寄せるヴェスタ。

今日はジュノが腕枕してくれている。

「私はヴェスタの名前大好き‥‥とても似合っているしかっこいいと思うな」

ヴェスタは意外な話におどろく。

「うん?ありがとう。私もジュノの名前大好きよ、とても可愛いと思う」

ジュノはにこりと笑う。

とても嬉しそうに笑うので、ヴェスタも嬉しくてにこっと微笑んだ。

しばらくジュノはそのまま幸せそうな微笑みでいて、ふと続きを話す。

「私は自分の名前も好きだよ‥‥気に入ってる。なにより今ヴェスタが褒めてくれた」

そういってぽっと頬が赤くなるジュノ。

ちらと視線をあわせてくるジュノ。

真っ赤になっている。

「‥‥ヴェスタに自分の名前を好きだと思って欲しい‥‥私がその名前を大好きなのだから‥‥」

ヴェスタもぽっと赤くなる。

ちょっと予想外の展開だったのだ。

「ヴェスタがね‥自分の名前を嫌うのが私はイヤ‥‥我儘言ってごめん」

ジュノが真剣な目で見てくる。

「とても悲しくなるの‥‥それは‥‥」

ジュノが笑顔を消して、眉をさげた。

まるで泣いているかのようにヴェスタには見えた。

いつも楽しそうにして笑ってくれるジュノが、そんな顔をするとヴェスタは胸が苦しくなる。

「わかった‥‥自分の名前も今日から好きになる。ジュノが褒めてくれたから‥‥」

ジュノのマネをしてそう言うとにこっとジュノも笑ってくれた。

そのまま眠くなるまで色々と話しをして、ちょっと笑ったり赤くなったりして二人は眠った。




「めええええぇぇ」

「んん?」

ヴェスタは朝が苦手で、ジュノは寝坊が得意だ。

むくとヴェスタが起き上がると、荷物をごそごそされていた。

「んと‥‥うぅん‥‥」

状況は頭に入ったが、対応策が浮かばないヴェスタ。

がさごそと三匹ほど羊がいて、バックパックの中からいろいろ引っ張り出していた。

「じゅのぉ‥‥おきてえ」

ゆさゆさとジュノをゆすることを選択したヴェスタは、もぞもぞと戻ってもう一度寝ようとする。

「ん‥‥あとごふぅん‥‥」

まったく緊張感のない二人だった。

羊たちも安心して集まってきて、すでに10匹ぐらいで荷物を広げていた。

一晩様子を見て、こいつらは無害だなと判定されたようだ。

そうなると見たことのない赤いバックパックや、そこからみえる白いシーツなどが気になり羊たちの好奇心を駆り立てたようだ。


「こらあ!!まてまてぇ!朝食にしてやる!!おちちをだせww」

ジュノがすごい勢いで羊を追いかけていった。

眠い頭でぼーっと散らばったシーツやロープなどを集めるヴェスタ。

「あさから元気だなジュノは」

羊ミルクでヨーグルトもいいなとのんびり考えるヴェスタが、片付け終わる頃やっとジュノが諦めて帰ってきた。

「くそぉ‥‥あいつら結構足が速い」

さすがに仕返しでスーツのエネルギーは使わなかったようで、自力で追い回していたようだ。

「おかえりぃ‥‥特に無くなったものはなさそうだよ」

「あったらアイツらの毛で補填してやる」

ジュノは羊を可愛がる気はなさそうだなとヴェスタは理解した。




今朝は少し海霧が出ていて、本島側が見えなかった。

「アイカおはよう、変わりない?霧でそっち見えないけど」

「おはようございますヴェスタ。大丈夫です、なにもないですよ真っ白ですけど」

「今日はお昼までに試作機をとばすよ。行けるようなら午後の風で飛ぼうと思う」

毎日夕方のスコール前に、少し風が強くなるのだった。

「了解、スーツの残量は80と92あるし、ローラーダッシュも使うと飛びやすいと思うよ。困ったらいつでも言ってね。がんばれ~!」

「ありがと!じゃまたね」

アイカと朝の定時連絡を終えると、せっせと骨組みを作っていく。

今度は強化木材製のテントの骨組みを使うので、強度は十分だ。

このポールは細いがしなって折れない素材なのだった。

大きな三角形と小さな三角形を作り、直行させる。

大きな方の真ん中に小さいのの頂点をつなげる。

これだけでもハンググライダーらしい形になった。

「おお‥‥でっかいね?」

ジュノが支えて組み立てながら大きさにおどろく。

「そうね、3人分の体重を支える設計よ。機材も積むからね」

ヴェスタは宙に描いた立体の設計組み立て指示に従い、ポールを継いでいく。

これはアイカがこちらに有る素材から作成可能となったものを、本船で設計して送ってくれたものだ。

「よし‥‥ハーネスもこれでいいし、操作系も問題ないわ‥‥あとは膜ね」

「うん‥‥着替えも持ってくれば良かったな」

今回は保護スーツで過ごすつもりで、着替えは持ってこなかった。

二人から供出する保護スーツのリング4つもどこに置くか、全部指示がある。

しゅるしゅるとヴェスタは裸になり、リングを指定の位置に固定して行く。

「ん?ジュノ早くちょうだい?」

「うん‥‥恥ずかしいからあんまり見ないでね?」

「なんで?こないだお風呂も一緒にはいったじゃない?」

「お風呂じゃないもんここ!」

もじもじして中々スーツをよこさないジュノ。

「あっち向いてるから、ちょうだい」

顔をそらして手を伸ばしてくるヴェスタに、しゅるしゅると脱いだジュノもリングを渡す。

さっと両手で胸を隠した。

ヴェスタは気にしないでリングを設置していく。

しゅるるパン!と骨組みに広がった白い保護膜がカイトグライダーの翼になる。

くいくいと動かしてみるヴェスタ。

「おぉ‥‥さすがの軽さだよ?これで強度に問題なければ、すぐにでも飛べるよ」

ザイルでリードをつけてジュノに持たせるヴェスタ。

「ん?はい持って?」

ジュノは手でブラジャーのようにするので両手が塞がっていた。

ゆびにくいとザイルをもたせるヴェスタ。

「んと?大丈夫ジュノ?試験するよ?」

「‥‥うん大丈夫」

片手で両方の胸を隠すジュノが右手にザイルを持った。

するすると引き出して、カイトを持ち下げるヴェスタ。

キールからおろしたハーネスを腰につけた武装ベルトと繋ぐ。

ヴェスタは全裸にブーツと武装ベルトというチグハグな姿になり、ベースバーを握りカイトを背負った。

そのままでも向かい風がぐいぐい押してくるのを、ハーネスとベースバーで角度を調整するとふわっともうそれだけで浮いた。

ととっと下がって着地したヴェスタ。

「うん、大丈夫そう。ジュノ!!しっかり持っててね!」

「はーい!」

ヴェスタが離れるとちゃんと両手でもってくれるジュノ。

「ジュノだっておっぱい大きいのにな?何を気にするのかしら?」

聞こえないように小さく言うヴェスタだった。

ととっと前に走るとふわあと飛び立った。

コントロールバーの中で、左右前後の重心を変えるとコントロールが効く。

「うん、いい応答だ」

思っていたよりしっかり手応えがあり、安心するヴェスタ。

5mのザイルに引かれて、低空で姿勢を整えた。

「よし!これで成功でしょ!」

ジュノには聞こえなかったようだが、手をふるとザイルを引いておろしてくれた。

それなりの衝撃はあったが着地も決まり、ぷるんとさせたヴェスタは無事試験飛行を終えるのだった。












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