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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第2章
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【第18話:2人は元気がなくなる】

「そうゆうわけなの‥心配しないでアイカ。荷物もできるだけ集めるし、ここを調査してまた夜に話すよ。一旦切るね」

「うん‥無理はしないで、荷物なんていらないよ」

「ありがと、じゃね」

7時スタートで8時間置きの定時時間には早かったが、一般通信でアイカに状況を報告した。

事前にジュノとは話し合って、一旦戻ろうと決めていた。

潮の流れなのか、かなりの量の荷物が波打ち際に打ち上げられていて、その中にはばらばらになったボートの破片も多かった。

「高分子木材に金属繊維を織り込んだあの複合材が‥‥あそこまで壊されるなんて」

ヴェスタはジュノの双眼鏡を借りて、眼下5kmほど先の海岸線を見ながら呟く。

「ちらっとしか見てないけど、とんでもない大きさだとおもう‥‥キロ単位だよきっと」

ジュノの答えはあっけらかんとしている。

「戦力差がありすぎて敵にならないよ、あんなの」

つづけたジュノの声には皮肉な笑いがまじる。

双眼鏡を返しながらヴェスタ。

「でも‥‥荷物の中には採掘や戦闘用の装備も多いから、可能なら回収したい。ジュノの推測では地上にはこないんでしょ?」

「あきらかにこちらを追ってきた触手が、綺麗に波打ち際に止まったからね。たぶん陸にはあがらない。上がってくるなら私達とっくに食べられてるよきっと」

ジュノは肩をすくめてにっこり。

「そっか‥‥ここより海が近いよね本船の位置」

ヴェスタは理解して、別の思考に入る。

「一旦私が見てきて、拾えそうなものも拾ってみる。ヴェスタはもうすこし海寄りにキャンプを張ってて」

ジュノの中では戦闘継続中なのか、指示をだしてくれる。

戦闘指揮官はジュノだ。

「うん‥ジュノ‥‥心配だよ」

泣きそうな顔になるヴェスタをそっと抱きしめるジュノ。

「大丈夫、私を捕まえられる速度はなかったよ。地上ではね!」

そういって放すとにっこりと笑った。

ヴェスタはどうしても心細くて自分でもジュノに抱きついてしまう。

「わかった‥‥必ずもどって。荷物よりジュノの方が優先だよ?」

「ありがと、わかってるよ!」

そういうと身軽に走り出すジュノ。

スーツを使わないのに、下り坂をすごい勢いで駆け下りていった。

ジュノが置いていったバックパックのコンテナや、使わないだろう採取用の装置を抱えてとことこあるくヴェスタ。

(いったいどうなっちゃうの?戻れるのかな私達‥‥)

ヴェスタの中ではすでに海は進入禁止エリアになっている。

じたばたするパニックの中、ちらりと見た触手に生理的嫌悪を感じた。

ヴェスタのもっとも嫌いな気配がしたのだった。

すでにうねる丘の向こう側に行って見えなくなったジュノも心配で、ヴェスタは泣きそうになるのをこらえる必要があった。




簡易テントは本当に寝るだけのスペースを作る。

今回は二人だけだし、互いにきにしないとなって一つしか持ってきていない。

こないだ朝まで眠れたあのちいさなベッドと同じ程度のスペースを半円柱型に作る。

ほとんどワンタッチで展開するので、細いザイルとペグで地面に固定するだけだ。

次に周辺にゴロゴロしている岩と石を集めてかまどを作る。

掘った浅い穴の上に小さなコの字型に石を組んで、下で火を燃やす。

コの字のあいてる方が手前になり、そこから薪を足すのだ。

1辺が20cm位の小さなもので、上に金属の細い五徳を乗せ鍋を乗せられる。

高さも20cm程度なので、これもすぐに作り終わった。

周辺から手頃な枝を集め焚き火の準備をしていると、ジュノが駆け戻ってきた。

「はぁ‥はぁ‥はぁ‥はぁ‥」

息切れしているジュノにタオルを渡すヴェスタ。

汗も結構かいていた。

「お疲れ様ジュノ。どうだった?まだ居るのアレ?」

「はぁ‥はぁ‥ありがとちょとまってね」

ほぼ全力で走ってきたのか、まだ息が整わないジュノ。

ヴェスタは組み立ててあった小さな折りたたみ椅子を渡す。

座ったところに金属のコップで水をわたすと、にこっと笑って受け取り飲み干した。

「ぷはっ、ありがとヴェスタ」

コップを受け取りヴェスタも笑顔を返したいなと、がんばってみるが上手く出来たとは思えなかった。

コップを組み立ててあったテーブルに置いて、焚き火に点火する作業にもどるヴェスタ。

背中にジュノの報告の声がかかる。

「水中は解らないってのが本音。見える範囲に気配はなかったよ。荷物もほとんど全滅だね‥‥打ち上がったものは壊れているか、濡れてはいけないものだったよ」

ちらりと見ればジュノの表情も硬い。

ヴェスタと同じ意見なのだろう。

海にはもう入れないなと。

「一応使えそうなものだけ回収してきたよ。衣類はパウチしてあるからいけるでしょ」

ジュノは背中からバックパックを下ろした。

コンテナを下ろして、代わりに背負って行ったのだ。

それなりにふくれている。

小さな屋外用点火装置(フィイヤスターター)で火種を作り、薪に慎重に移すヴェスタ。

四つん這いでおしりを持ち上げた格好になり、低い位置にふーふーと息を吹きかけている。

真後ろから見ていたジュノは、ちょっとその動きが恥ずかしくて頬をそめ視線をそらした。

保護スーツはぴったり肌に吸い付くので、綺麗に形が浮き上がった。

「ボートの破片を見たらね、とんでもない力が加わっていた‥‥たぶん獲物と見たのはボートだったのだと思う」

ヴェスタも火が安定して燃えたので顔をあげる。

「そっか‥私達は小さすぎて獲物に成らなかった?」

ふるふる首をふるジュノ。

「近くに大きいものがなければ、狙われると思う‥‥色んな太さの触手や触腕が見えたから、そうゆう事だと思う」

獲物に合わせて手を変えると言うことだろう。

ヴェスタも納得して眉を下げた。

小鍋にもペットボトルから水を張り、焚き火の五徳に載せる。

湯を沸かしてお茶を淹れたいのだった。

ヴェスタは今の2人にそれが必要だと思ったのだ。

火の具合を見て手前側にも石を積み、火力を絞る。

入り込む空気を調整する事で、燃え加減をある程度絞れる。

「もう少し休んでいてジュノ。少し薪を集めて来る」

うなずくジュノを残し離れるヴェスタ。

(どうしよう‥‥リスクなく帰還するのは難しいわ)

とぼとぼ小枝を拾いながら歩くヴェスタ。

ちらっとジュノを見ると俯いてじっとしている。

(ジュノ‥きっと落ち込んでる。元気にしてあげたい‥‥笑っていてほしいよ‥‥)

ここの所ですっかりジュノが身近に感じるヴェスタ。

場合によってはジュノの気持ちの方が帰還より優先すると、自然に発想する。

どうしたらいいのかなと考えながら体を動かす。

枝は割と沢山落ちていて、抱えきれないくらい拾ってしまうヴェスタ。

抱えた枝ほど沢山、考える時間はもらえなかった。







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